米マーベル・スタジオの最新作「キャプテン・マーベル」(アンナ・ボーデン監督、ライアン・フレック監督)で、若き日の国際平和組織「S.H.I.E.L.D.(シールド)」のエージェント、ニック・フューリーを演じたサミュエル・L・ジャクソンさん。映画は、1995年の米カリフォルニア州のビデオショップに空から降ってきた謎の女性キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソンさん)と、やがて「アベンジャーズ」を結成することになるニック・フューリーがタッグを組み、キャプテン・マーベルの失った記憶の謎に迫り、その秘密を手に入れようとするさまざまな勢力との攻防がサスペンスフルに展開する。ニック・フューリーがアイパッチをするきっかけが明かされるなど見どころの多い今作について、ジャクソンさんに聞いた。
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――もしもコミックファンだけがマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の映画を楽しんでいたのだとしたら、ここまでヒットしなかったでしょうね。
この神話全体に夢中になった人たちは数多くいるよ。特にMCUに関してはね。コミックファンの人たちから見れば、今でもまだ、表面を引っかいた程度さ。そこには私たちが現在探究しているよりもはるかに大きなユニバースが広がっているからね。だけど、そのファンたちはまた、この神話のことをとてもよく知っている。だから、彼らが予測していたこととは違う出来事が起こると、それはどうだ、あれは何を意味するのかと、ソーシャルメディアの世界で論争が巻き上がるという流れが出来上がっているね。
マーベルはとても独創的な方法で、シリアスなシチュエーションの中にキャラクターたちを取り入れる方法を見いだした。それは、とてもエキサイティングでデンジャラスであると同時にユーモアの要素も付加している。そうすることによって、観客たちは、危険な状況にいるスーパーヒーローになる楽しさを体験できる。単に悲惨さや内的なものなどに終始することなくね。それがあるから、観客は、楽しい笑いが織り込まれた危険を見て、アドレナリンを一気に高めることができ、だからこそ映画を見ながら少しの間リラックスすることができるんだ。
――ニック・フューリーについてはどう感じていますか。
ニック・フューリーは人を巧みに操る名人だよ。それが彼の特殊能力なんだ。どうすれば複数の人々を結束させられるのか、どうすれば彼らに大義のためやるべきことをやらせることができるのか、そういう方法をよく知っているんだ。
――これほど紆余(うよ)曲折をはらんだキャラクターを演じることについては?
この映画「キャプテン・マーベル」のチャレンジの一つは、私に目が二つあることだね。それと、30年前の出来事だということ。つまり私はこれまで演じてきたその他の映画におけるニック・フューリーの人物像を忘れる必要があったんだ。なぜなら、このときの彼はまだ特定の考えが出来上がっていなかった。彼は基本的に官僚主義者、または、政府のアルファベットで表記される機関の一つで働く、たちの悪いやつなんだ。
今作でもたちの悪いやつであることに変わりはないけど、彼は他人の命令で動いている。上司の言うことを聞いているんだ。彼は、上司たちに電話をして何が起こっているか伝えたいと考えるし、自分の中だけにとどめておこうとせずに、どういう方向へ進むのか見極めて自分の道を探ろうとしている。それに、彼は実際に出会うまでは地球外生命体の存在を信じていない人物の一人だった。
この物語を通して、彼は私たちがよく知るニック・フューリーのシニカルさや威厳を身につけていくんだ。この映画で演じるにあたって、彼はまだそこに到達していないんだということを、私は心にとどめておかなければならなかった。ニック・フューリーにはまだその他の映画では見ることのできない軽い面があった。風変わりでおかしな一般的なユーモアセンスを持っているんだ。
――この映画はどんなタイプの映画だと思いますか。
「キャプテン・マーベル」には、ニック・フューリーとヴァースがバディーの刑事のようになる要素がある。お互いがお互いについて理解できるようになる。そこには相手の人物が持つ信念に対する一定レベルの信頼があって、相手が何かを見いだすことを手助けしているんだ。彼女はフューリーが彼自身について何かを発見することを手助けし、フューリーはヴァースが彼女自身を発見することを手助けしている
フューリーは、ヴァースのお陰で、それまで理解していなかったこの世界について理解できるようになる。並外れた能力を持つ人々は脅威ではなく、役立たせることが可能な方法があることをね。その後、アベンジャーズの活動を生み出すためにも、フューリーにはそのことを理解する必要があるんだ。
――MCUの出演者に対しての思いは?
コール・シート(出演する俳優やスタッフ、撮影場所などを記載した予定表)はすごい顔ぶれだね。マイケル・ダグラスもいれば、ローレンス・フィッシュバーンもいたりと、これをやった全員のことを考えるだけでクレイジーだ。だけど、実のところ、その多くが演劇でのキャリアや映画でのキャリア、実にさまざまなことをやってきた役者たちであり、そういったすべての経験をこれらの映画で演じるために掛け合わせていることが分かるんだ。マーベルは、キャラクターを喜んで受け入れる役者たちを見つけてくる。例えばベネディクト・カンバーバッチも、このユニバースにやってきたけど、彼は、ここでどうやってせりふを言うべきか心得ているね。
シリアスになり過ぎないようにしながらも、これらのキャラクターたちが本物だという感覚を人々に提供することが、このジャンルそのものにとって、とても大切なことだと思う。キャラクターたちの存在の仕方はリアルだよ。だけど、観客のためにそれを機能させるためには、観客がある意味尊敬している役者たちを使う必要がある。または、全く違うタイプの映画にお金を払ってでもその役者を見たいと思ったことがあるような役者たちだね。そういう役者たちは、特別な何かを吹き込んでくれる。
――主演のブリー・ラーソンさんがこの映画で伝えたことはどういうことだと思いますか。
ブリーがこの映画に吹き込んでいるのは、観客からの高いレベルの尊敬の念だ。彼女はとてもシリアスな映画に出演して賞を受賞している。彼女はまた、みんなが大好きで大笑いした、とても面白い映画(2015年の「エイミー,エイミー,エイミー!こじらせシングルライフの抜け出し方」)でエイミー・シューマーと共演もしている。しかも彼女は、たまたま私も共演したアドベンチャー映画(17年の「キングコング 髑髏島の巨神」)にも出演していて、私たちは大きな毛むくじゃらのモンスターから逃げ回っているよ。
だけど、彼女はまた、実生活の中で、若い女性や一般の女性のためにとても純粋な活動をしている。彼女は女性の人権運動の闘士なんだ。彼女は生きとし生ける者たちは公平に扱われるべきだという信念を持っている。人々は彼女のそういうところを尊敬している。彼女がスーパーパワーを持った人物になるのが素晴らしいことなのは、小さな少女から大人の女性まで女性全員の心に響くことになるから。なぜなら、女性たちはブリーのことをよく知っていて、女性たちはブリーのことやブリーのやっていることを尊敬しているんだ。
だから、ブリーにとっても女性たちにとっても、ものすごく大きな成功が待っているんだ。ブリーはその重責にとても真面目に向き合っているよ。私はブリーと一緒に仕事をすることが大好きなんだ。仕事場にやってきて、ブリーと会話をすることが大好き。一緒に笑い話もするけど、いったんグラウンドに出れば、そこからは真面目にゲームに取り組む。そんな場所でブリーに会えるなんて最高だよ。
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