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連続ドラマW 絶叫:原作者・葉真中顕さんに聞く(下) 女性心理を書くコツは?

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WOWOWのドラマ「連続ドラマW 絶叫」の原作を手がけた葉真中顕さん

 2013年に、自身の体験から書いた「ロスト・ケア」が第16回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝き、作家デビューした葉真中顕(はまなか・あき)さん。24日からWOWOWでスタートする「連続ドラマW 絶叫」は、その葉真中さんの2作目の同名小説が原作だ。小説は、ごく一般的な家庭に生まれた普通の女性が、自分の居場所を作るために、やがて保険金殺人に手を染めていく姿を描いたサスペンス作だ。葉真中さんに、「絶叫」を執筆する上で配慮したこと。また、「社会派」と呼ばれることをどう受け止めているのか。さらに、影響を受けた作品や人物について聞いた。

 ◇陽子のキャラクターを描くにあたって実行した三つのこと

 小説「絶叫」を読んで驚かされるのは、男性の葉真中さんが、物語の主人公、鈴木陽子という女性の心理を見事に描写していることだ。葉真中さん自身、執筆にあたっては三つのことを実行したという。一つ目は、「他人を書くという意味では、キャラクターが男だろうが女だろうが実は一緒。異性を描くから難しいというふうには思わないようにしよう」ということ。

 二つ目は、「絶叫」は「世代小説でもあり、主人公はロストジェネレーションと呼ばれている、バブル崩壊後の就職氷河期にぶち当たった人。それは、ほぼほぼ私と同世代で、男女関係なく同じ景色を見ている。ですから、鈴木陽子という人格の8、9割までは、時代感覚として普遍的に書ける部分があると思ったのです」と説明する。

 そして三つ目は、「一口に女性といっても千差万別。自分とは身体性も心の機微も違うキャラクターを自分の頭だけで作るのはやはり無理があるので、なるべく多くの人の声を聞く」こと。その際、重宝したのはインターネットだ。葉真中さんは普段の取材でも、当事者に話を聞きに行く以外に、ツィッターなどのコメントを「意識的に拾っている」という。「裏が取れるものと取れないものがありますけど、中には業界の裏話みたいな形で小説のネタになったりします。くしくも、“街の声”というものが今は可視化される時代なので、そういう情報はITを利用させてもらっています」と話す。

 ◇「社会問題を探しているという意識はない」

 葉真中さんの作品は、「社会派」と呼ばれることが多い。それについて、「いわゆる社会派と分類されない小説も結構、書いているんですよ(笑い)」とした上で、「(処女作の)『ロスト・ケア』における介護問題も、この『絶叫』における貧困問題も、ネタを探して見つけたという感じではないんです。もともと問題意識の中にあったものを書いたまでで、特に目を皿にして社会問題を探しているという意識はないのです」と言い切る。

 そして、「現代ミステリーでクライムサスペンスを書くとなると、クローズド・サークル(外界との往来が遮断された、いわゆる密室もの)の物語だったらまた話は別ですけど、どうしても社会との関わりを描くことになるだろうと思っています。その中で、自分の中で問題意識というか、これを作品にしたいというテーマがいくつかあるわけで、それが(社会が抱える問題と)合致したときに、世間の人が、『社会派小説』と呼びたくなるような作品になるのかなと思います」と分析した。

 ◇小説家になるきっかけは

 幼いころは映画やマンガ、小説が「三種の神器」だったという葉真中さん。影響を受けた作品を聞くと、「難しいですよね。好きと影響を受けた作品は、またちょっと違いますから」とした上で、挙げたのは「三毛猫ホームズ」シリーズなどで知られる作家の赤川次郎さんの名前だ。赤川さんの小説を子供のころに読んで「すごく面白いと思った」そうで、当時は「赤川さんのファン向けのフォトブックを読んで憧れていました」という。そして、「今、私が書いているものは赤川次郎さんが書いているものとはまたちょっと違いますが、そういう意味での影響関係をいえば、赤川次郎さんの存在は大きいと思います」と話す。

 ちなみに、好きなマンガは「山ほどある(笑い)」そうで、「今は(岩明均さんによる歴史マンガ)『ヒストリエ』が一番楽しみですね。あとは、『ドラゴンボール』とか『スラムダンク』とか、いわゆる『少年ジャンプ』の黄金期の漫画。物心つくころに『キン肉マン』を読んでいますから。今も新しい『キン肉マン』はウェブで読んでいます」とのこと。

 そんな葉真中さんの小説「絶叫」は、女性の遺体がアパートの一室で見つかったことから物語は動き出す。遺体は鈴木陽子、36歳のものと分かるが、現場に立ち会った刑事の奥貫綾乃は、部屋の状況に違和感を覚え、陽子の生い立ちを探り始める。すると、父の失踪に始まり、借金、風俗嬢、保険金殺人と、壮絶な道のりが浮かび上がってくるというストーリー。

 今回のドラマ化では、鈴木陽子に女優の尾野真千子さんが扮(ふん)するほか、陽子と深く関わることになる、生活保護費を奪う悪徳ビジネスを行う神代武を俳優の安田顕さん、綾乃を小西真奈美さんが演じる。他に酒井若菜さん、要潤さん、麻生祐未さんらが出演する。3月24日からWOWOWプライムで毎週日曜午後10時に放送。全4話で、第1話は無料放送。

 <プロフィル>

 はまなか・あき 1976年3月1日生まれ、東京都出身。2013年「ロスト・ケア」で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。第2作「絶叫」は第36回吉川英治文学新人賞、第68回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)の候補となり話題を呼ぶ。19年「凍てつく太陽」で第21回大藪春彦賞受賞。ほかに「ブラック・ドッグ」「コクーン」「政治的に正しい警察小説」「W県警の悲劇」などがある。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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