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池松壮亮:10年後は「結婚して子供がほしい」 石井裕也監督は「冒険的に生きてみたい」

映画
映画「町田くんの世界」を手がけた石井裕也監督(左)とキャストの池松壮亮さん

 安藤ゆきさんの同名マンガを映画化した「町田くんの世界」。メガホンをとったのは、「舟を編む」(2013年)や「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(17年)などの作品で知られる石井裕也監督だ。演技経験がほぼゼロの新人俳優2人を主演に起用し、撮り上げた。2人をバックアップするのは、主演クラスの俳優9人。そのうちの一人、池松壮亮さんと石井監督が、8年前の最初の出会いを振り返りつつ、今作について、さらに10年後について語った。

 ◇石井監督の提案に池松は…

 もともと、「キャスティングというのは縁と意外性しかない」と考える石井監督。今回の池松さんの起用は、「まさに縁あって白羽の矢が立った」という。池松さんが演じる吉高洋平は、出版社に勤務しゴシップ記事を書く、石井監督の言葉を借りれば、「人間の悪意のかたまりしか見ていない男」。人を愛することにかけては右に出る者のいない16歳の高校生、町田くん(細田佳央太=ほそだ・かなた=さん)とは対極にいる人物だ。

 映画には、眼鏡をかけた白い制服姿の町田くんと、やはり眼鏡をかけた黒い服を着た吉高が、バスを降りたあと対峙(たいじ)する場面がある。石井監督は、そこで吉高というキャラクターの「重要性がおのずと分かる」と話す。

 実は、撮影に入る2、3週間前の衣装合わせの直前、石井監督は池松さんに、「今回の吉高は、町田くんと同じ眼鏡キャラで行こうと思う。町田くんが白い世界にいる眼鏡だとしたら、吉高は黒い世界にいる眼鏡ということでどうかな」とメールを送った。すると池松さんから、「1日考えさせてください」という返信が届き、その30分後、「それでいきましょう」と返事が来た。そのとき石井監督は池松さんとの相性の良さを確信したという。

 ◇初対面は早朝の新宿

 そもそも、石井監督と池松さんの“縁”の始まりは9年前だった。石井監督が、池松さんが出演するテレビドラマ「15歳の志願兵」(10年)をたまたま見たことが初めだった。そのとき、「立派な若者がいるなと思った」という石井監督は、画面に映る池松さんに「シンパシーを感じ」、自身の作品「ハラがコレなんで」(11年)のパンフレット用のコメントを頼み、池松さんはそれに応えた。その後、早朝の東京・新宿でばったり会い、あいさつし合ったのが初対面だった。石井監督は、当時20歳だった池松さんの印象を「初々しかった」と振り返る。

 一方、「びっくりした」のは池松さんだ。というのも、子役といわれるころから芸能界に身を置き、大人の良い面も悪い面も目にし、大人たちに軽くあしらわれていると感じることもあった池松さんに、「当時27歳の石井さんが走り寄ってきて、僕が書いたコメントに対して、ものすごく深々と、敬語で、『ありがとうございました』と言った」からだ。

 以来、12年にWOWOWで放送されたドラマ「エンドロール~伝説の父~」を皮切りに、「ぼくたちの家族」(13年)や「バンクーバーの朝日」(14年)といった映画で一緒に仕事をしてきた。石井監督は池松さんについて、「20歳くらいのころから自分というものを持っていて、嫌なものは嫌だと言い、ちゃんと怒っていたし、いわゆる世間一般でいう『可愛い坊や』ではなかった。年齢と経験を重ねて、物の見方とかまなざしの深さは当然変わっていると思いますけど、基本的なものは変わっていないように思います」と評し、池松さんのぶれない姿勢をたたえる。

 池松さんも「学生時代から石井さんの自主映画をずっと追っていて、会ったことがないにもかかわらず、そのとき(「ハラがコレなんで」のパンフレットに)出したコメントが、『石井裕也の美意識が日本を平和にする日が来るかもしれない』でした。その感覚がずっと今も続いているということは、石井さんに対しての僕のイメージが、多分変わっていないからでしょうね」としみじみ。

 ◇10年後は…

 そんな2人にそれぞれの10年後の将来像を聞いてみると、90年生まれの池松さんは、「漠然とはあります」としながら答えが続かない。大学では4年間、映画監督の勉強をしていたことから、「映画を撮るつもりは?」と水を向けると、「10年後は39歳なんです。たぶん、(監督は)まだですね。30代の10年でやりたいことが結構多いんです。僕は無言実行タイプなのでここでは言わないですけど(笑い)、それは全部やりたいです」と答えた。そこで、一つでいいから教えてもらえないかと食い下がると、「結婚していたいですね。子供がほしいですから」と明かした。

 「ぼんやりとは見えますけど、死んでいるかもしれませんし、ちょっと分からないですね」と答えたのは石井監督。なんでも石井監督は18歳ぐらいまでは、歴代の偉人たち、例えば、夏目漱石が作家デビューした年齢(38歳)や亡くなった年齢(49歳)と、自身の人生を照らし合わせ、「自分はこのときにこうありたいと戦略的に考えていた」のだそう。しかし、「川の底からこんにちは」(10年)が第53回ブルーリボン賞監督賞を史上最年少の28歳で受賞、「舟を編む」は第37回日本アカデミー賞最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞するなどし、その計画を上回る速さで達成してしまった。

 「そこから指針をなくし、自由に生きていいんだと思うようになった」そうだが、それでも「あそこまではいかなきゃいけない、というところは、なんとなくあります。でも、そこに到達すると多分人生は面白くないので、もう少し冒険的に生きてみたいと思っています」と前向きに語った。

 映画は、勉強も運動も苦手で要領も悪く、しかし、分け隔てなく人を愛することができる心優しい高校生、町田くんが、人嫌いのクラスメートの猪原さんに出会い、初めて知る恋愛感情と向き合う中で、悩み、迷い、成長していく姿を描く。町田くんを新人の細田さん、猪原さんを新人の関水さんが演じ、2人を岩田剛典さん、高畑充希さん、前田敦子さん、太賀さん、池松壮亮さん、戸田恵梨香さん、佐藤浩市さん、北村有起哉さん、松嶋菜々子さんという主演クラスの俳優9人が支え、心温まるストーリーが展開していく。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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