同期のサクラ:毎話視聴者「号泣」 視聴率右肩上がりとなった三つの要因

連続ドラマ「同期のサクラ」に出演している(左から)竜星涼さん、橋本愛さん、高畑充希さん、新田真剣佑さん、岡山天音さん
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連続ドラマ「同期のサクラ」に出演している(左から)竜星涼さん、橋本愛さん、高畑充希さん、新田真剣佑さん、岡山天音さん

 初回平均視聴率の8.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)から、右肩上がりに数字が上昇し、4話からは3週連続で2桁キープをしている、女優の高畑充希さん主演の連続ドラマ「同期のサクラ」(日本テレビ系)。SNSでも「毎週、号泣」「いつも、泣いちゃう」「第1話から泣きっぱなし」「最終話まで泣き続けそう…」と話題になり、盛り上がりを見せている。高畑さん扮(ふん)する、そんたく知らずで真っすぐすぎる主人公・サクラの姿を中心に描いたドラマが、お茶の間を沸かせている要因を探ってみた。

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 ◇「わたしには夢があります」&じいちゃんの名言が胸を打つ

 「同期のサクラ」は、高畑さん主演の連ドラ「過保護のカホコ」制作チームが再集結し、「十年愛」「GTO」「過保護のカホコ」「家政婦のミタ」「女王の教室」「ハケン占い師アタル」などで知られる、遊川和彦さんが脚本のオリジナルストーリー。物語は、2009年に花村建設に入社したサクラと同期たちの10年間を、1話ごとに1年ずつストーリーが進むという異色の展開で描かれている。視聴率は初回が8.1%で、2話が9.5%、3話が9.3%、4話が11.5%、5話が11.8%、6話が11.7%と推移している。

 第1話でサクラは、入社式で社長のスピーチに「話が長いと思いました」と、立場をわきまえない発言をして周囲をあぜんとさせたのを機に、その後も、大手ゼネコンにはびこるそんたくに立ち向かい、逆らう人間に対する左遷にもくじけず、悩む同期たちには真っ正面からぶつかり共に成長する姿を見せてきた。

 そんなサクラの姿に、視聴者から「サクラみたいな人が社会で生き抜くのは難しい」という感想も上がったが、「こんな同期がいたら…。勇気をもらえた」「サクラみたいな仲間を見つけたい」といった声も上がるなど、一種の“ヒーロー像”と捉えた視聴者もいたようだ。

 視聴者が心を響かせるシーンとして挙げられるのが、ふるさとの島と本土との橋を架けるという確固たる目標を持つサクラが、毎話、必ず言う「わたしには夢があります。ふるさとの島に橋を架けること」そして「一生信じ合える仲間を作ること」「その仲間とたくさんの人を幸せにする建物を造ること」というせりふ。同期を救い出すべく“見えない何か”と戦うために、自身を奮い立たせるようにこの言葉を言うサクラの姿に、SNSで「毎回、胸を熱くさせられる」「涙を抑えられなくなる」という声があふれる。

 そして毎話登場するのが、離れて暮らす“じいちゃん”こと祖父の北野柊作(津嘉山正種さん)とサクラのファクスのやり取りだ。じいちゃんの達筆な文字で「本気で叱ってくれるのが本当の友だ」「辛(つら)い時こそ、自分の長所を見失うな」など、悩み苦しむ同期たちを救えずにいるサクラの発奮材料となるこれらの言葉に、視聴者は「名言すぎる」「刺さる」「しみる」と、胸を打たれているようだ。

 ◇高畑充希が作り上げた“サクラ像” “ヒジョーに”というキャッチーなワードも

 高畑さんが作り上げたサクラというキャラクター自体の魅力も大きい。会話相手を見ずに話す姿のほか、まばたきをせずに話したり、独特の走り方をしたりする姿が印象的で、動作が“ヒジョーに”ユニークだ。高畑さんは、放送前に開かれた会見で「遊川さんと組むときは、だいたい変な役をやらされる」と語りながら、サクラのそんたくしない生き方が「いいのかは分からないけど、すごくかっこいいし、うそがないからとても信用できる」と魅力を語った。

 同期の月村百合を演じている橋本愛さんも同じ会見で、高畑さん演じるサクラについて「本当に変な人。目をずっと見開いていて、まばたきもしないし、本当に妖怪ぐらいの……。日常ではなかなか出会うことがない」と、奇異なキャラクター性を表現。視聴者も「この役は高畑充希にしかできない」「サクラがくせになる」「高畑充希のサクラにだんだんハマってきた」と、楽しむ声が多い。

 また、劇中で毎朝、建造物の写真を撮るときの「ヒジョーに良い!」、そして、写真撮影に夢中になるあまり、遅刻しないようにダッシュをする際の「ヒジョーにまずい!」というキャッチーなせりふが、SNSを中心に「今週もヒジョーに良かった!」「サクラがヒジョーに良い」などと、盛り上がりつつある。

 ◇視聴者が共感しやすい同期のキャラクター性

 紆余(うよ)曲折はありながらも、サクラと心を通わせていく同期の面々も人気の理由だろう。橋本さん演じる「常に自分の居場所を探している。ラクして楽しく生きたい、いわゆる今どきの若者」の百合、新田真剣佑さん演じる「裕福な家庭に育つが優秀な兄と厳格な父に見下されて、家では居心地が悪い。故に外弁慶」の木島葵、竜星涼さん演じる「ウザがられるほどの熱血タイプ」の清水菊夫、岡山天音さん演じる「実家の中華料理店を継ぎたくない一心で 勉強に励んできた努力型でネガティブ男」の土井蓮太郎と、個性的なキャラクターがそろっている。

 第2話では必死に上司からのパワハラに耐えるも過労で倒れてしまった菊夫、第3話では仕事にモチベーションが上げられず、結婚に逃げようとする百合、第4話では、部内でいじめに遭う蓮太郎、第5話では官僚一家の次男で、家と職場の両方で自身の評価を得られない葵の姿が描かれた。親近感を覚えるキャラクター性と、実際にありそうな話題をストーリーに落とし込むことで、視聴者に共感を得られそうなポイントを押さえているところも要因に考えられる。

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 三つの要因としてはみたものの、実のところもう一つ最大ともいえる要因がある。それは物語の作り自体にある。2019年現在、主人公のサクラが病院のベッドに横たわった昏睡(こんすい)状態のところから始まり、過去のエピソードを重ねて再び現在に近づいていくという展開。それはつまり、サクラに悲劇的な出来事が襲いかかることを暗示している。

 同期の面々に、先輩の火野すみれ(相武紗季さん)と、サクラのおかげで困難を乗り越え、真っすぐすぎる性格を理解してくれるようになった仲間が増える一方で、当のサクラはといえば、ふるさとの島に橋を架けることを夢見ながら、そんたくできない言動が原因で目標の土木部には配属されず、左遷が続く。そんな中で懸命に踏ん張るサクラの姿が視聴者の涙と共感を誘ってきた。しかし6話ではついに、子会社に飛ばされたサクラの信念に揺らぎが出始めて、「負けるな!」と思わず応援したくなった人も多かったのでは。

 回を重ねるごとに、少しずつすり減ってきているように見えるサクラに襲いかかる悲劇とは一体何なのか。そして、“サクラ咲く”結末を期待したいが果たして……。第7話は11月20日午後10時から放送。

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