ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
趣向を凝らした雪像の数々が、毎年札幌の冬の風物詩となっている雪と氷の祭典「さっぽろ雪まつり」。ここ最近はアニメやゲームのキャラクターの雪像も増えて話題を集めている。しかし、地方のイベントとアニメがコラボするケースでは、アニメが浮いてしまうこともままあるが、「さっぽろ雪まつり」ではそこまでの違和感なく受け入れられているようだ。アニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。
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2月4日から11日まで、北海道は札幌市で「さっぽろ雪まつり」が開催されます(※つどーむ会場は1月31日から開催中)。全国的にも有名なこのイベントですが、実は近年アニメ系タイトル(当記事ではゲームやメディアミックス作品もここに含めます)の参加が盛んになってきているのをご存知でしょうか。毎年お馴染みの「雪ミク(初音ミク)」のほか、今年は「ゴールデンカムイ」や「Re:ゼロから始める異世界生活」、「ヒプノシスマイク」や「僕のヒーローアカデミア」、「あんさんぶるスターズ!」や「サザエさん」、「ポケットモンスター」など、タイトルをみるだけでもかなり幅広く、多彩な作品の展示が予定されています。
個人的には、こうした有名なイベントに好きな作品が参加することを知った時、いちファンとしては驚きつつも、一体どんな展示になるのか純粋に楽しみに思います。しかし同時に、つい気になってしまうのが、作品ファン以外も多い中、それらの展示が変に悪目立ちしたり、浮いてしまわないかということです。アニメと関係のない一般のお祭りにアニメ系の作品が参加することで、元々のお祭り参加者に違和感を抱かれてしまったり、お祭り本来の雰囲気を壊してしまうとしたら、よその界隈(かいわい)からお邪魔させていただく身としては、とても申し訳なく感じてしまいます。また、なによりそれで作品に悪い印象を持たれてしまったとしたら、作品好きとしてはいたたまれないと、ついつい考えてしまうのです。
ところが実際に訪れてみると、感想には個人差があるにせよ、少なくとも自分は、こと雪まつりに関しては、そんな杞憂を忘れさせるくらい、アニメ系の出し物が違和感なく溶け込んでいるように感じて驚きました。一体、雪まつりの何がそう感じさせたのでしょうか。
理由としてまず考えられるのは、雪まつりがどちらかというと“外に向けられたお祭り”であることです。
住民中心の土着的なお祭りに、あまり関連性のないアニメが参加した場合、基本的には強い違和感を持たれてしまうことが多いと思います。しかし雪まつりは、祭りと名前はついていますが、どちらかというと外からの観光客に向けたイベント色が強く、札幌在住者にも「寒いし混んでいるなかでわざわざ行かないかな」という意見の人も多いのです。
そのため参加者も観光客がほとんどとなり、珍しい展示ほど「こんなものがなぜ?」と違和感を持たれるのではなく、「こんなものまであるのか」と、前向きに楽しまれる傾向があるのでしょう。アニメ系の展示が変に悪目立ちすることなく溶け込めるのは、そうした雪まつりの“外に向けたお祭り”という性質が関係しているのだと思います。
次に考えられるのは、アニメ系の展示には、プロジェクションマッピングやグッズ販売、声優トークショーなどが付随することがほとんどですが、それでもあくまでメインは他と同様“雪像”であることです。
真っ白な雪でできた雪像は、それがたとえアニメのキャラクターであっても、白一色ということもあって、周りの雪景色や他の展示に違和感なく溶け込み、それだけが変に目立ちすぎることはありません。そのため、恐らく作品を知らない人にとっては、それがアニメ系の展示であるか以前に、周りの展示同様にその雪像の造形を楽しむことがメインになるのでしょう。アニメ系の展示が他の展示から浮いてしまうことなく溶け込めるのは、そうした雪まつりならではの展示形態も関係しているのだと思います。こうした特徴によって、雪まつりでは、これだけ多くのアニメ系作品が違和感なく溶け込むことができるのでしょう。
また、だからといってアニメ系の展示が完全に埋没しているわけでもなく、作品を知る人にとってはちゃんとそこでしか味わえない特別なアクティビティーがあるのも、この雪まつりの特徴です。天然の雪でできたキャラクターたちは、イメージが近いものだと「NARUTO -ナルト-」の“火影岩”のような、どこか厳かな独特の雰囲気を帯びてみえます。雪が降る氷点下の屋外、それも札幌の町のど真ん中で凍えながらそれらの展示をながめていると、登頂後に初日の出をみるような、えも言われぬ達成感とちょっとした非日常感が味わえるのです。
例年増え続けるアニメ系作品の展示は、今後の雪まつりでも必ず見かけることができると思います。機会がありましたら、アニメイベントではないにも関わらずアニメ系展示が自然に溶け込む独特な雰囲気と、アニメ系イベントでは味わえない非日常的な景色を、実際に味わってみてはいかがでしょうか。
こあらい・りょう 埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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