放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
舞台「刀剣乱舞」などで知られる俳優の鈴木拡樹さん主演の連続ドラマ「カフカの東京絶望日記」(MBS)のえりすぐりのエピソードに新規カットを加えた劇場特別版が、2月28日から2週間限定で公開される。鈴木さんが演じるのは、現代の日本人として生きる小説家フランツ・カフカ。“絶望中毒”のキャラクターを演じる鈴木さんは、自身の“絶望体験”を振り返りながら「その時は絶望しましたが、その絶望は必要なことだったと思います。考え方を変えてくれました」と語る。作品やカフカへの思いを聞いた。
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「カフカの東京絶望日記」は、鈴木さんの地上波ドラマ初主演作。2019年4月にYouTubeで第1話の前・後編が無料配信され、同年9月からMBSの「ドラマ特区」枠で連続ドラマが放送された。平松昭子さんマンガ、頭木弘樹さん監修の「マンガで読む絶望名人カフカの人生論」(飛鳥新社)が原案で、「変身」「審判」などで知られる小説家フランツ・カフカが、なぜか2019年の東京のアパートで暮らし、あらゆる事象に絶望することになる。
カフカは、20世紀を代表する小説家として知られる一方で、何かにつけ絶望せずにはいられない“絶望中毒”だったという。ドラマは、現代を生きるカフカがSNSや婚活などに絶望する姿をコミカルに描き、そのシュールさや、鈴木さん演じるカフカの絶望ぶりが話題となった。鈴木さんはカフカを演じる上で、人物像を調べたといい、「調べれば調べるほど、興味が尽きなかった」と振り返る。
「カフカさんってきっと、その時代よりも今の時代のほうが共感者が多いのかなと思いました。現代は、お笑い芸人で自虐ネタをやってらっしゃる方もいますが、当時、自虐を人に伝えるのは、最先端だったんじゃないかなと。現代の日本の方が、カフカさんは受け入れられやすいのかなと思います」
実際、ドラマでもカフカがSNSを始め、バズる様子が描かれたほか、絶望したカフカがその場で卒倒する“倒れ芸”も話題となった。倒れるシーンは、カフカの名言の一つである「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」が基になっているという。鈴木さんは、倒れ方もこだわったそうだ。
「最初に原案のマンガを見て、その表紙のカフカさんが素晴らしい倒れっぷりだったので、できる限りこれを再現したいなと。ドラマの1、2話を撮影している時は、その形で倒れる道筋を考えていました。どの時点から足が曲がり始めて、どうすれば前に手をついて倒れられるかと……。僕は、舞台作品でも吹っ飛んだり倒れたりすることが多かったので、そこはちょっと生かされたのかなと思います」
ドラマでは、まさに「バタン」と音がするような倒れぶりだが、マットを引くようなこともせず撮影していたという。鈴木さんは「慣れてきたんですかね、体に傷がつくこともなかったです。倒れることに関しても、カフカさんに負けないようにやっていました」と笑顔で振り返った。
鈴木さんは、自身が演じたカフカと「似ている」部分もあるという。
「いろいろな物事に対してマイナスから入るのは、僕と非常に似ているのかなと思いますね。ただ、僕はマイナスに感じてしまう部分があるから、プラスに変えようと動くので、そこは逆なのかなと思います。カフカさんは、マイナスのまま楽しむ人ですもんね。その美学は面白いなと思いました」
では、鈴木さんは、これまで絶望をしたことはあるのだろうか。
「それはありますね。大きい絶望から小さい絶望まで。小さい絶望だと、静電気が起きただけで、あー……となりますし、大きい絶望も、人生の中にはあるといえばありますね」
鈴木さんが大きい絶望として語ったのは、デビュー当時に出演した舞台作品で感じたものだった。
「僕自身も始めた当初で作品を守る、引っ張るということを今ほど考えられていたわけでもなくて、いろいろな後悔が残った作品だったんです。でも、『やりたい』という言葉を発信し続けたおかげで、そこから5年たって次の作品を上演できたんです」
舞台は、その後も上演され、今では人気シリーズとしてファンに愛されている。
「元々の目標をさらに超えて、進むことができている。その時は絶望しましたが、その絶望は必要なことだったなと思います。考え方を変えてくれました。絶望したとしても、何かアクションを起こさなければいけない、何か学んで次に生かさなければいけないと、すごく考えるようになりましたね」
今回劇場上映される「カフカの東京絶望日記」について、絶望するカフカを描きながらも「よく考えてみると、自分の人生を照らしてくれる言葉も登場するので、希望に感じてくれる人もいるのかもしれません。不思議な魅力をもった作品」と鈴木さん。
鈴木さん演じるカフカが見せる絶望の奥深さをスクリーンで楽しみたい。
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