岡田健史:銀幕デビューは教師役「ついこの間まで生徒だったのに」 芝居は「続けられるだけ続けたい」 10年後は…

映画「弥生、三月 -君を愛した30年-」に出演する岡田健史さん
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映画「弥生、三月 -君を愛した30年-」に出演する岡田健史さん

 2018年に放送されたドラマ「中学聖日記」(TBS系)で俳優デビューし、有村架純さんが演じる教師をひたむきに愛する生徒を演じて注目された岡田健史さんのスクリーンデビューとなる映画「弥生、三月 -君を愛した30年-」(遊川和彦監督)が、3月20日に公開される。岡田さんは実生活では数年前に高校を卒業したばかりだが、今作では教師を演じている。「ついこの間まで生徒として教壇を見上げていたのに、今回は教壇でみんなに偉そうに話している」ことは、「めちゃくちゃ難しかった」と明かす岡田さんに、映画について、また目標とする俳優像や10年後の未来像などを聞いた。

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 ◇「できることは100%やった」が「悔い」も…

 映画は、運命に翻弄(ほんろう)されながら30年間相手のことを思い続けた、波瑠さん演じる結城弥生と成田凌さん演じる“サンタ”こと山田太郎の半生を描くラブストーリー。現在20歳で、その「20年の中でも前半の記憶は曖昧」という岡田さんは、今作を「30年間、一人の人を思うことだったり、それが時には逸(そ)れたり、違う方向に行ってしまったりしても、最終的に運命とはどういうものかを考えさせられる作品」であり、「老若男女関係なく見ていただけて、しかもそれぞれの世代で感じ方が違うのでは」とアピールする。

 映画初出演となる今作の出演が決まったときは、「やった!」という喜びよりむしろ、「どうしたらいいんだろうという不安のほうが大きかった」という。演じるあゆむは、サンタが弥生とは別の女性と結婚して生まれた子供で、幼いころ、学校の先生をしていた弥生に憧れ、教師を目指したという経緯がある。出演場面こそ限られているが、今作におけるキーパーソンだ。それだけに、短いシーンであゆむの人となりを瞬発力で表現する必要があった。

 「あの教壇に立つこと自体、すごく緊張しました。当時の僕にあの限られたシーンの中で力を出すのは簡単なことではありませんでした。ついこの間まで、生徒として教壇を見上げていたのに、今は教壇で(生徒の)みんなに偉そうに話している。教師とはなんぞやと考えながら、その一方であゆむの思いを伝えることは、めちゃくちゃ難しかったです」と撮影を振り返る。

 ◇演じるあゆむに共感

 映画には、杉咲花さん演じる弥生の親友のサクラも登場する。サクラは病気で命を落とすが、生前、彼女は弥生とサンタに「ずっと変わらないでいて」という言葉を残す。そこで、岡田さんにもずっと変わらないでいたいと思うことはありますかと尋ねると、即座に「あります」と答えた。

 「感謝の気持ちを忘れないこと。初心を忘れないこと。何がしたい、何をしたくないという芯をしっかり持つことは変えたくないです。それは、時によって変える必要がありますし、それが間違っている場合もあります。でも僕は、その部分は曲げたくないと思います」と岡田さんは言い切る。その姿に、正義感が強く、困難にも真っすぐぶつかっていこうとするあゆむの姿が重なる。

 岡田さん自身も、あゆむには共感を覚えたという。「僕にも、わがままというか、自己中心的な部分があります。自分の意見を言っても言わなくても状況は変わらないのに、つい言ってしまうあゆむは、決していいとは言わないですけど、僕は愛せると思いました」と理解を示す。

 ◇10年後は…

 芝居を「続けられる限りは続けたい」と話す岡田さん。目標とする俳優は、「波瑠さんも成田さんも、(サンタの母親役の)黒木(瞳)さんも杉咲さんも、本当にすてきな方々です。でも僕は、そういうふうになりたいと思うより、すてきだなで終わってしまうんです。僕は僕だし、皆さんは皆さんだし。それでも、皆さんみたいに楽しんでお芝居ができたらいいと思います。そこはやっぱり経験がものを言うので、そうなるまでには10年は必要だと思います」と覚悟を口にする。
 10年という言葉が出たので、10年後の自身の未来像を想像してもらった。すると、「英語がぺらぺらになっていたいです」という答えが返ってきた。しかしそれは、あくまで「コミュニケーションの幅を広げる」ためで、「(海外)進出とか、そんな大それたことは考えていません」とのこと。「まずは、お前、目の前のことやれよって思うから(笑い)」と己を律することも忘れない。

 そして、「地球という大きな星があって、その中の日本って、本当に狭い社会じゃないですか。もちろん日本は素晴らしい国ですし、僕も自国愛を持っています。でも、もっと世界は広いんだよ、違うところもあるんだよということを、自分に気づかせることが大事だと思っています。だから今、多少なりとも(英語を)しゃべれるんですけど、つたない英語で、でも外に出て話したり、違う文化を目にしたり、触れたりするだけで肥やしになると思っています。もちろん、それでお仕事の幅が広がれば儲(もう)けものですけど、それよりも僕は、人として英語をしゃべれるようになりたいと思っています」と前向きに語る。

 その上で、「日本語は難しいですし、20年たっても自分の母国語をマスターすらできていません。ましてや英語なんて……。ですから、ゆっくりでいいから着実にやっていきたいです」と真っすぐに将来を見据えていた。
 (取材・文・写真/りんたいこ)

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