わたしの宝物
第6話 生まれ変わったら本当の親子になれるかな・・・
11月21日(木)放送分
新型コロナウイルスの影響で4月から放送予定だった新ドラマが延期になり、過去の名作ドラマが次々と再放送された。そんな中、今回特別編として再放送されてきた人気グループ「KAT-TUN」の亀梨和也さんと俳優の山下智久さん出演の「野ブタ。をプロデュース」(日本テレビ系、土曜午後10時)が今夜、ついに最終回を迎える。本放送から15年以上たっているにもかかわらず、ツイッターでは関連ワードがトレンド入りを果たし、SNSでは「やっぱりすてきなドラマ」「心に刺さる」「繰り返し何度も見たい」といった声が続出するなど“伝説のドラマ”であることを証明した本作。これほどまでに人気を集めた理由とは一体何なのだろうか。
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2005年10月期に放送された「野ブタ。をプロデュース」は、亀梨さんと山下さん演じる高校2年生の桐谷修二と草野彰が、ひょんなことから堀北真希さん演じるいじめられっ子の転校生・小谷信子、通称「野ブタ」を、クラスの人気者にプロデュースしていく青春シンデレラストーリー。その過程で修二、彰、信子が互いに影響を与え合い、信子だけでなく、3人それぞれが成長していく様を、10代ならではの悩みや葛藤とともに描いた作品だ。
野ブタをプロデュースするために、修二と彰はあらゆる作戦を考え、実行していく。例えば、信子の制服が落書きされてしまったことを逆手に取って、学校に私服で登校する許可をもらい、信子におしゃれな私服で登校させたり、信子のことが気になるというクラスメートとダブルデートに出かけたり、文化祭実行委員となった信子のために文化祭を成功させようと協力したり……。
信子が唯一の友達である蒼井かすみ(柊瑠美さん)に裏切られ、学校を休むようになってしまったときには、修二がクラスメートたちに「皆の声が届けば、また学校に出てくると思う」「だから、皆の声をカメラに映して小谷に届けたい」と頭を下げて頼み込み、信子へのビデオレターを作成。それを受け取った信子は、再び勇気を振り絞って学校へ行くことを決心した。
作戦は成功ばかりではなく、時に失敗に終わることもあった。また、彰の信子への恋心ゆえに互いにすれ違いが生じてしまうこともあった。しかし、いつでも修二と彰は信子のために、信子は自分を変えるために一生懸命であり続けた。その不器用ながらもけなげな姿に心を動かされた人も多いのではないだろうか。
また本作の何よりの魅力となっているのが、修二、彰、信子の強い絆である。クラスで人気者の修二は当初、クラスメートたちを相手にうまく立ち回ることで、学校での“良いポジション”を維持しようとしていた。しかし、8話ではその状況が一転。口のうまさが災いしてささいなうそがばれてしまったことに始まり、町中で見て見ぬふりをしたけんかの被害者が実はクラスメートだと判明し、修二は友人を見殺しにした冷たい人間として周囲から避けられ孤立してしまう……。
“嫌われ者”になってしまった修二は、自分を気にかけてくれる彰と信子に、「お前らも俺と同じと思われたら困る」と言い、今後自分には話しかけないように伝える。そんな修二に追い打ちをかけるように、信子への嫌がらせの真犯人・蒼井が“わな”を仕掛け、修二はクラスメートからの信頼を一気に失う展開に。しかし、そんな状況でも彰は「何があっても信じる」「俺たちずっと親友」と告げ、信子は「信じればどんなことも解決できる」と見捨てることなく修二に寄り添った。
彰と信子が嫌われないように距離を置こうとした修二、修二の立場が変わったとしても今までと同じように接し続けた彰と信子。それ以外にも、3人の仲を引き裂こうとする蒼井に彰が「俺の中では修二と野ブタが1番なの。俺自身は2番なの」「人は試すものじゃないよ。育てるものだよ、愛を持って」と言い放つ場面もあった。彼らの互いを思い合う友情の形を通して、人とのつながりや人を信じる大切さを改めて教えてもらったように思う。
そして、今回の再放送に対する反響の中で多く見受けられたのが「今見ると心に刺さる」といった声だ。15年前の本放送時、学生だった人たちが今では社会人になっているなど、自身の年齢や環境が大きく変わったことで「感情移入する人物が変化した」という声もあった。確かに、大人になったからこそ“あのころ”の尊さに気がついたり、いろいろな経験をしたからこそ“あのとき”の周囲の言葉を理解できるようになったりするもので、そういった意味では再放送を通して、当時と共感できる部分の違いを実感した人も多いのではないだろうか。
さらに、本作では大人たちのさりげない言葉もまた魅力の一つである。例えば、修二の父(宇梶剛士さん)から修二への「俺のかっこいいとことか、情けないとことか、くだらないとことか、全部知ってくれてる人がさ、世の中のどこかにいると思うだけで俺はいいの。それで十分なの」という言葉や、彰の父(升毅さん)から彰に向けた自分らしさを大切にするべきだという「お前は道に落ちてる10円玉のまんまでいろ」とのメッセージ、「本当だから信じるんじゃなくて、信じるから本当になる」「本当のことなんて誰も分かんないの。だったら信じたい方を選ぶしかないでしょ?」という、教頭先生(夏木マリさん)が信子に語りかけたせりふ。どのせりふも15年たった今も輝きを失わず、強く心に焼き付いている。ひょっとすると、15年たったからこそ、その輝きに気づけたのかもしれない。
物事の核心には触れず、それでいて修二や彰、信子たちに気づきを与えてくれるような言葉たちは、私たちが忙しい日々の中で、どこか忘れそうになっていた大切なことをそっと思い出させてくれた。随所にちりばめられた優しくて温かいメッセージの数々こそが、視聴者の心をつかんだ大きな理由だといえるだろう。
今回の再放送で改めて素晴らしいメッセージを届けてくれた本作。「野ブタ。をプロデュース」という名作は、これからも人々の心の中に色濃く残り続けていくはずだ。
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