俳優の伊藤健太郎さんが映画「十二単衣を着た悪魔」で主演を務めることが、自身の23歳の誕生日である6月30日に発表された。原作は「源氏物語」を題材に描いた内館牧子さんの長編小説「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」(幻冬舎文庫)で、伊藤さんが映画で時代劇に挑戦するのは初めて。ひょんなことから「源氏物語」の世界にトリップする就職試験59連敗中の実家暮らしのフリーター・伊藤雷を演じる。女優の黒木瞳さんが監督を務め、「ちょっと今から仕事辞めてくる」などの多和田久美さんが脚本を担当する。11月6日公開。
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映画は、就職試験に落ち続け、京大に合格した弟に対して劣等感を持つ雷が、アルバイトからの帰宅途中、激しい雷雨に見舞われ気を失う。目が覚めると、1000年以上も昔に紫式部によって書かれた「源氏物語」の世界にタイムスリップしていた。雷は、あることをきっかけに弘徽殿女御に仕えることに。息子を帝にしようと野心に燃える弘徽殿女御に翻弄(ほんろう)されながらも、雷は次第に未来を当てる比類なき陰陽師として認められ、成長していく……という物語。
雷が仕えることとなる弘徽殿女御を三吉彩花さん、雷と絵巻物の世界で出会い妻となる倫子を伊藤沙莉さん、右大臣でもある弘徽殿女御の父をラサール石井さん、雷の母・伊藤明子を戸田菜穂さん、弘徽殿女御の夫・桐壺帝を伊勢谷友介さんが演じる。
また、弘徽殿女御に仕える家臣役を山村紅葉さん、笹野高史さんが務め、弘徽殿女御の息子役を田中偉登(たけと)さん、雷の弟・伊藤水役を細田佳央太(かなた)さん、光源氏役を沖門和玖(おきと・わく)さんが演じる。
この映画は取りえもない、自分に自信がない現代の男の子がそれまで行ったことのない世界で成長していく物語です。タイムスリップするお話は初めてではないのですが、映画で時代劇は初めてになります。人が成長する部分にフォーカスした話が個人的に好きで、変わっていく様を演じるのもすごく好き。だから今回このお話をいただいたときはとてもうれしかったですし、監督も黒木瞳さんということでどんな面白い作品になるのだろうとワクワクしながら、自分なりに成長感をどう出そうかと考えながら撮影に臨みました。このような情報解禁の発表タイミングが自身の誕生日と重なるのが初めてなのでうれしいです。ぜひ劇場でご覧ください。
弘徽殿女御役を演じさせていただきました三吉彩花です。本作に出演が決まった時はうれしかったです。それと同時に緊張感もありましたが、黒木監督にぶつかっていきたい気持ちが強かったです。この作品はインプットとアウトプットをものすごいスピード感で行い、今まで自分自身でも知らなかったスイッチを押していただきました。何より監督を信じて毎日撮影現場に行けたことがうれしかったです。女性が強く自分の信念を持って生きる、優しさの中にもたくましさがある作品だと思います。ぜひ楽しみにしていただけたらうれしいです。
自分の居場所を見つけられず、人と比べられて自信をなくす人は多いかと思います。この物語は、そんなネガティブ男子が、源氏物語の中でキラキラと生きている人たちと出会って、自分の存在価値を見つめ直していくという“希望のお話”です。ネガティブな大学生を演じるのは、伊藤健太郎さんです。撮影は、ほぼ順番通りに行いました。すると、健太郎さんの顔が日に日に変わっていくのです。ダメンズだった(もちろんお芝居ですが)彼が、ラストシーンでは見事なまでのすがすがしい顔へと変化していきました。彼の演技の賜物(たまもの)ですが、さらに彼を突き動かしたのは、「十二単衣を着た悪魔」が持つ小説の魅力だと、私は再確認した次第です。
源氏物語にはそう詳しくない私でもこの小説に魅了されたのは、内館さんが学生のころから気になっていたという弘徽殿女御を、別の視点から描いているところです。実に潔いトップレディーの生き様、時代を冷静に見つめることのできる才能、ジタバタしない生き方は品性のある女性であり、そして母親として息子への無償の愛が見え隠れするところに、女としての哀愁が漂います。この難しい弘徽殿女御を演じてくださったのは、三吉彩花さんです。十二単衣が似合う女優はこの方の右に出る人はいないでしょう。そして、この美しい彼女からは想像できないような、センセーショナルなセリフの数々。“悪魔”とは、人の英知を超え凡人には太刀打ちできない心の強さを持った人なのだと、彼女の演技を見ていて感じたものです。
そして、伊藤沙莉さん、笹野高史さん、山村紅葉さん、伊勢谷友介さんほか、この作品の中で、すてきに自在に演じてくださった出演者の方々、さらに未熟な私を支えてくださったスタッフの方々に心から感謝しております。皆様の心に届けられる作品になったかどうか、ぜひ、劇場でお確かめいただければ幸いに存じます。
幻冬舎から「十二単衣を着た悪魔」が出て、すぐのことです。黒木瞳さんが、監督としてぜひ撮りたいとおっしゃったのです。本当にすぐのことでした。原作の「源氏物語」ではヒステリックで悪役の弘徽殿女御に、いち早く魅力を感じてくださった。黒木監督しかないと思いました。劣等感のかたまりのような伊藤雷を伊藤健太郎さんが、弘徽殿女御を三吉彩花さんが演じ、一癖も二癖もある脇を、一癖も二癖もある実力派が固めてくださる本作です。千年後の今、自信を持って弘徽殿女御にささげます。
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