緊急取調室 (2025)
第7話 赤い殺意
12月4日(木)放送分
「乃木坂46」の生田絵梨花さん主演のリモートミュージカルドラマ「とどけ!愛のうた」(Paravi)が好評だ。コロナ禍で生まれた“リモートミュージカルドラマ”だが、リモート作品ならではの演出が、ミュージカルという半非日常の世界観にマッチしているのだ。ミュージカルをテレビ放送する上での新たな提案にもなったリモートミュージカルドラマの魅力を探った。
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「とどけ!愛のうた」は、新型コロナ感染拡大のために自粛生活を送る現在の日本が舞台。生田さん演じる主人公の吉澤希奈梨をはじめ、リモート飲み会に集った、小さな印鑑屋「真壁印章」の男女5人の人生や恋模様が描かれる。柿澤勇人さんが、希奈梨がひそかに思いを寄せる先輩、太田悠人を演じているほか、斉藤慎二さん、橋本じゅんさん、シルビア・グラブさんも出演。楽曲は、数々のヒット曲を送り出してきた森雪之丞さんが作詞、「HERO」(フジテレビ)、「半沢直樹」(TBS)などの音楽を手がけた服部隆之さんが作曲・編曲・音楽監督を務めている。動画配信サービスのParaviで配信されている。
ポイントとなるのが、画面を分割してキャストたちのアップを同時に見せるという、リモートドラマならではの演出だ。他の作品でもたびたび見られる手法だが、ミュージカルというジャンルと非常にマッチしている。ミュージカルではおなじみの歌唱シーンで、同時に相手役も映っているので相手役の表情を見ることができるのだ。さらに、「とどけ!愛のうた」では、マンガのコマ割りのような演出やアニメーションも交えて独特の映像に仕上がっている。
これは、従来のミュージカルのテレビ放送ではあまり見られなかった手法だ。これまでのミュージカル放送は、主に舞台全体か、歌い手のアップをスイッチングするというライブやコンサートの手法で制作されているものが多かった。これは劇場ならではの臨場感が画面から伝わる一方で、正直間延びしている印象もあった。ザッピングでミュージカル放送が映っても、広い舞台をキャストが動いているだけで、そのままチャンネルを変えてしまったという経験がある人も多いのではないか。
しかし、画面を分割するリモートドラマの手法は、必ずしも歌い手だけが映っているわけではなく、歌を聴いている別のキャストの表情も確認することができるので、より作品を理解することができる。アニメのカットインにも近い手法で、普通のドラマでは違和感を覚えるかもしれないが、キャストが歌い出すミュージカルという、一歩非日常に進んだジャンルなので、違和感が少ないのだ。
「とどけ!愛のうた」を手がけた服部英司プロデューサーは、リモートドラマを何本か見て、映像的な制限から逃れられず、演出意図をなかなか伝えられないリモートドラマの限界を感じていたという。「ミュージカルならば、音楽シーンでは、少々大げさでファンタジックになっても許され、視覚的な単調さも、ある程度消してくれるだろう」と考えた。視聴者を飽きさせないために、曲ごとにCGやアニメーションなどを織り交ぜるなど、さらに工夫を加えたという。
リモートドラマの手法の一つとしてミュージカルを採用した「とどけ!愛のうた」だが、結果的にミュージカルのテレビ放送に新たな手法を提案することになった。かつてドラマにCG演出が入ると違和感を覚えていたものだったが、最近では珍しくなくなっている。同じように、リモートドラマで見られた画面分割の手法も、新しい日常とともに通常のミュージカル放送に“逆輸入”される時が来るのかもしれない。
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