SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第1話 再出発!集う麦わらの一味!
11月3日(日)放送分
紀伊カンナさんの人気マンガが原作の劇場版アニメ「海辺のエトランゼ」(大橋明代監督)が、9月11日に公開された。小説家の卵の橋本駿と少年・知花実央の恋愛を描くストーリーで、声優の村田太志さんが駿、松岡禎丞さんが実央を演じる。収録では、駿と実央の感情のゆらぎなど繊細な表現を求められたといい、二人は「延々と針に糸を通すような作業だった」と振り返る。作品の魅力、お互いの印象を聞いた。
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「海辺のエトランゼ」は沖縄の離島を舞台に、小説家の卵の橋本駿と若くして両親を失った知花実央の初々しい恋愛を描く。本作は、フジテレビのBLに特化したアニメレーベル「BLUE LYNX」の「囀(さえず)る鳥は羽ばたかない」「映画 ギヴン」に続く第3弾として製作。原作者の紀伊さんが監修とキャラクターデザインを担当し、「ダンガンロンパ The Animation」の演出を担当した大橋さんが監督を務め、「モンスターストライク」などのスタジオ雲雀が製作する。
――村田さん、松岡さんは原作コミックスのドラマCDからの続投です。劇場版アニメ化が決まった時の気持ちは?
村田さん また駿と実央の出会いのシーンから演じさせていただけるのは、本当にありがたい限りでした。
松岡さん ドラマCDの時も「これは映像化するべきです」「映像で見たい」とずっと言っていたんです。言ってみるものだなと思いました(笑い)。
――原作の魅力は?
村田さん 紀伊先生の絵の丁寧さやキャラクターのキャッチーでコミカルな表情はもちろん、人の琴線に触れるような、心をわしづかみするような恋愛模様を描いてらっしゃる。優しい世界観がすごく伝わってきて、ストーリー的にも全く無理がないというか、駿と実央が自然に段階を踏んでいったなと感じさせてくれる。
松岡さん 個人的な感覚ですが、「その世界に行ってみたい」と思えるんです。マンガを読んでその世界に入ることはできるのですが、それでも動いているこの子たちを見たい、動いている海を見たいと。この空気感を映像化しないのはもったいないと思ったんですよね。あとは、読んだ後にものすごく懐かしい感覚になるんです。
村田さん そうですね。僕は10代の多感な頃に見たマンガやアニメとどこか似たような懐かしさを感じました。その頃に戻れた感覚と言いましょうか。描かれているような青春を味わっていなくても、「こういう恋愛をしたんだろうな」「こういう楽しいことがあったんだろうな」と、追体験させてくれる魅力があります。
――「海辺のエトランゼ」では、駿と実央の日常が丁寧に描かれています。演じる上で大切にしたことは?
松岡さん 一番はこの世界観をどう表現するのか。この作品は、やりすぎても、やらなさすぎてもだめなんです。すごくナチュラルで、実写のドラマを見ているような自然さであったり、感情の動きを描いている。家で作ってきたものよりも現場で求められたものは高かったです。収録では、本当にもう頭がねじきれるかと思いました(笑い)。朝から収録が始まって、延々と針に糸を通すような作業でした。
村田さん そのニュアンスが出るまで帰れない、というような。
松岡さん 妥協はしないと。例えば、「あいうえお」という文字の羅列があって、「い」はこうする、「え」はこうする、「お」はこういう風に演じてみてくださいというディレクションがあります。感情の流れが一個でもぶれてしまうとだめなんです。「うわーっ!」と叫び出したくなりました(笑い)。
村田さん 音響監督の藤田亜紀子さんの中で筋道が明確に出来上がっていたので、プレーするほうも神経をとがらせなくてはいけない。
松岡さん ちなみに、藤田さんがOKの時に「うん、素晴らしい」と言ってくださるんですが、僕は褒められるとできなくなる人間なので……。
村田さん まだなじられたほうがいい?
松岡さん いや、なじられるのも苦手です(笑い)。
――村田さんが演じる駿は、実央に思いを告げられ、同じ思いであるのに煮え切らない態度を取る場面があります。さまざまな葛藤を抱えるキャラクターを演じる上で意識したことは?
村田さん 駿は、原作ファンの方も知ってらっしゃる通り、へたれダメ男なのですが(笑い)、そうはいっても、彼はずっと苦しんできたがゆえにあれこれ可能性を考えてしまう。相手を傷つけたら嫌だし、自分も傷つけられたくない、迷惑もかけたくない。自分で自分の首を絞めて、可能性をどんどん狭めてきた。そこは、自分の中ですごく大事にしました。
松岡さん 駿を演じるのは、大変だと思います。実央は自分の気持ちを真っすぐ伝えて、感情の振れ幅も大きいキャラクターなのですが、振れ幅が大きいと、演技のニュアンスも調整可能なんですよね。プラスの方向に出したり、マイナスの方向に出したり微調整して、ちょうどいい真ん中に近付けていける。でも、駿は幅がない分、定めるのが難しい。
村田さん 収録では、何回も試していただきました。「それもちがう」「これもちがう」というのを繰り返すのは久しぶりの感覚で、妥協できない、負けちゃいけないという思いでした。
――松岡さんは実央をどんなキャラクターと捉えましたか?
松岡さん 本当に純粋な男の子だなとすごく感じました。こういうふうに物事をはっきり言えたら、人生変わったんだろうなと思います。
村田さん うらやましさもありますよね。印象的なシーンで、実央が駿に「男が好きでも大丈夫だよ」と話す場面があるんです。別段気遣うでもなく、優しさも込めつつ、もちろんいやみも無く言ってくれたことは、駿にとってラクになれた感じはありました。
松岡さん 実央は感情の振り幅は大きいのですが、抑揚を付けられないんです。
村田さん 小細工はしないですよね。
松岡さん どのせりふも「当たり前じゃん」というような言い方で。すごくいい子だなと思いました。
――お互いの声優としての印象は?
村田さん 松岡さんは普段から芝居っぽく生きている人ではなくて、普段はリアルな松岡さん。それがゆえの、マイクの前に立った時の降ろし方というか、ひょう変ぶりを何度も見てきました。そこを全面的に信頼してやれば全く問題はないと思って、今回はやらせていただきました。
松岡さん 僕、職業はいたこですから(笑い)。
村田さん 憑依(ひょうい)型声優(笑い)。普段はこんなぼくとつとした人なのに、お芝居になると何でもできる。声優として、普段とのギャップがある人ほど魅力的だなと思うので、そこは壊したくないと思って、今回は収録前に打ち合わせをしたりすることはなかったですね。
――松岡さんから見た村田さんの演技の魅力は?
松岡さん ものすごく無理のない自然なお芝居をされるんですよね。僕の中でも技術として持ちたいなと思うんですけれども、僕は役がそうさせるのか、パワー系のお芝居が多いので。見ていてすっと入ってくるというのは、やっぱり(村田)太志さんの演技の賜物(たまもの)だなと思います。
村田さん いやいや……。
松岡さん それに、今回もスタートダッシュで差を付けられました。「もう太志さん、(役に)入っている! うそでしょ!?」というような。
村田さん その善しあしは音響監督が判断しますよ。修正もされましたから(笑い)。
――最後に劇場版アニメ「海辺のエトランゼ」の見どころを教えてください。
松岡さん やはり皆さん、自分の中の理想があるので、その想像や期待を上回ることはなかなかできないことだと思います。でも、今回の「海辺のエトランゼ」は想像を超えていけるのではないかなと思っております。見ていただくと、いろいろな感情が湧くと思いますし、「じんわり心にしみた」と思っていただけたらうれしいです。我々も全力で、熱量を持って演じさせていただいたので、楽しんでいただけたらなと思います。
村田さん 必ず納得して帰っていただけると思います。人が人を大事に思うのは大切なことで、当たり前なことだと思うんですけど、いかにその当たり前のことが難しいのかということをはっと気付かされる作品です。そうはいっても、あまり力んで見るのもよくないので、沖縄にいるような気分で、自分の家にいるような気分で見ていただければ幸いです。
駿と実央の繊細な恋模様や日常を丁寧に、美しく描いた「海辺のエトランゼ」。村田さん、松岡さんの細やかな表現に注目したい。
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