TENET テネット:宣伝プロデューサーも理解できなかった 難解さ逆手にとった戦略が奏功

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映画「TENET テネット」の一場面(C) 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 クリストファー・ノーラン監督の最新作「TENET テネット」が、累計の動員で124万人、興行収入で20億円を突破する大ヒットとなっている。SNS上では「訳が分からないけど、超面白」「難解過ぎて理解することを諦めたがすごかった」「1割も分からなかったけど面白かった」など、異例の口コミが広がっている。難解な映画がなぜヒットしたのか。同作の宣伝プロデューサーを務めるワーナー・ブラザースの小宮脩さんに話を聞くと、難解さを逆手に取った戦略が奏功したことが分かった。

 ◇「とんでもないものを見ている」という体験

 映画は、“時間の逆行”と呼ばれる装置が開発され、未来から敵がやってきた世界が舞台。名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントンさん)は、第三次世界大戦から人類を救うというミッションを命じられ、ニール(ロバート・パティンソンさん)と共に任務を遂行する……というストーリー。劇中では「順行」する世界の中に、時間が「逆行」する絵が同時に描かれ、画面上で起きている出来事を把握しづらい。しかも、なじみのない科学用語が次々と飛び出すことも、この映画を一層難解にしている。

 小宮さんに初鑑賞した際の感想を聞くと、「今まで見たことがない映画を見たというのが率直な感想です。現在の状況と同じく、試写室前でみんなで答え合わせや、名もなき男とニールのラストについてずっと話していました。それは本当に楽しい時間でした」という。日本語字幕がついていない状態だったこともあり「聞き取りにくいセリフも多く、理解することは一度ではできなかった」が、「実際に字幕があっても理解できなかったです」と笑う。

 しかし、「全容は、時間の順行と逆行の複雑な仕掛けを追いかけるのに必死で把握はできなかったのですが、その半面、圧倒的な映像体験や、緊張感を高める音楽に没入させられたので、とにかく興奮しましたね」とも振り返る。映画の難解さよりも「とんでもないものを見ている」という体験が勝ったようだ。

 ◇宣伝で「難解さを隠さず」

 では、この難しい映画をどのように売り込んだのか。宣伝チームでは、「難しいというのは、映画の本質的な部分ですので、まずは作品の入り口を魅力的に見せることから開始し、時間が逆行する未知なる映像体験という部分」を押し出そうと考えた。

 マスコミ試写が始まったタイミングで、難解さを逆手にとった作戦も立案。「一度では分からなかったけど、ハマるという言葉と共に、謎解きの面白さ、何度見ても発見があるというメッセージを打ち出し、難解さを隠さずに事前に理解してもらった上で、劇場に足を運んでもらうようにしました。その上で、こちらから考察記事や考察動画もたくさん用意しました」という。

 また、ノーラン監督は秘密主義者としても知られており、「他作品と大きく異なるのは、作品の情報が全くなかったので、そもそもこのメッセージやイントロダクションは映画の内容から逸脱していないかとても気を使いました」といい、「どこか宣伝も答え合わせをしながら進めていくところがありましたね。また、使用できる素材が少ないので、制約がある中でどう組み立てるかが一番難しかったです」と振り返る。

 ◇洋画大作への飢餓感も後押し

 こうした宣伝活動の奏功もあり、映画は興行収入20億円を超える大ヒットとなった。小宮さんによると、ヒットした要因は2点あったという。「先ほどの話にもつながりますが、謎解きを楽しむことにフォーカスが定まったことが良かったと思います。難しいというのはネガティブな面ですが、一方、先の読めないストーリーやどんでん返し物は、訴求力があります。今作は、見たことがない映像世界やストーリーが、強みになりました」と、映画の世界観に魅力があったと分析する。

 実際に「公開してから、想像を超える、考察記事や映画評が多く上がり、『分からないけど、面白い』とか、極端に言うと『何も分からない』というワードはフックになり、知らない人も気になります。そこから、主体的に情報を受け取り、またリピートし確かめにいくという現象」が起きた。「当然、難解さを上回る作品としての面白さがあり、公開初日にTENETがトレンド入りしましたが、ノーラン監督のファンの熱量も大きいと思います」と、SNSなどによる口コミの広がりがあったという。

 また外的な要因として「残念なことに洋画大作の多くが公開延期になり『TENET テネット』のようなブロックバスター映画(長編大作映画)を待ち望んでいた人たちが多かったことが挙げられます。実際に、SNS上でも、コロナ以降で映画館に来たのは初! という声は多く見受けられました」と語っていた。

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