海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
女優の有村架純さん主演の連続ドラマ「姉ちゃんの恋人」(カンテレ・フジテレビ系、火曜午後9時)で、“ある秘密”を抱える吉岡真人を丁寧に演じている俳優の林遣都さん。目に涙をためて悔しがる表情から、有村さん演じる桃子からのメールに表情を一変させ笑顔になるという第3話での迫真の演技に、SNSで「引き込まれる演技…」「林遣都劇場!」といった絶賛の声が上がった。ナイーブな青年から不良キャラ、はたまた“なにわの商人(あきんど)”に一人三役まで、さまざまな役を演じてきた林さん。どんな役にも林さんならではの要素が込められており、いわゆる“カメレオン俳優”といった言葉とも一線を画した魅力の背景を探った。
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林さんは、2007年に公開された野球を題材とした映画「バッテリー」で、自身の才能に絶対的な自信を持つピッチャーの原田巧役で主演デビュー。「日本アカデミー賞」「キネマ旬報ベスト・テン」の新人賞を受賞し、俳優人生の輝かしい幕開けを飾った。
ドラマ「美丘-君がいた日々-」(日本テレビ)の橋本太一、「荒川アンダー ザ ブリッジ」(MBS)の主人公・市ノ宮行(リク)といった、ナイーブさをたたえた優等生的な役どころから、「HiGH&LOW」シリーズ(日本テレビ)では、武闘派の不良チーム「達磨一家」を束ねる日向紀久役、NHKの時代劇「銀二貫」では、武士の息子ながらなにわ商人として身を立てていく主人公の松吉役と、時代、ジャンルを問わず、さまざまな役柄を演じてきた。
また、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)でも、「べっぴんさん」ではヒロインの娘が心ひかれるバンドマンの河合二郎役、「スカーレット」では、ヒロインの同級生で気が弱く引っ込み思案な性格の大野信作役とさまざまな役を好演。さらに、大ヒットドラマ「おっさんずラブ」(2018年)では、主人公の男性に恋心を抱く牧凌太を好演し、その年の「日刊スポーツ ドラマグランプリ」の助演男優賞も受賞している。
どのような役でも目を見張る輝きを放ってきた林さん。コロナ禍の今年は、中江功監督がプロデュースした特別ドラマ「世界は3で出来ている」に主演。「ソーシャルディスタンス・ドラマ」で、なおかつ一人三役という難しい設定だったが、3人の登場人物をメガネやひげを付けずに多彩な演技で演じ分け、視聴者からは「圧巻!」「満足感でしばらく放心した」「演技力がむき出しだった」といった絶賛の声が並んだ。
そんな林さんが出演している「姉ちゃんの恋人」は、有村さんがヒロインを務めたNHK連続テレビ小説「ひよっこ」などの岡田惠和(よしかず)さんが脚本を担当するオリジナル作品。女手一つで弟3人を養う主人公・桃子が、職場で出会った真人との恋によって日常が大きく変わる……という恋と家族愛を描いたラブ&ホームコメディー。
林さんは、2009年に放送された岡田さん脚本の連続ドラマ「小公女セイラ」に出演しており、今回の「姉ちゃんの恋人」で演じる真人は、岡田さんが林さんをイメージして“当て書き”。真人は仕事に実直、常に低姿勢で笑顔を絶やさない好青年だが、実は過去の「ある出来事」によって心に傷を負い、自分が幸せになるのを諦めているというキャラクターだ。
“当て書き”された林さんは、以前、「こんなに幸せなことはありません」「僕の俳優人生において、この上ない役」と喜びを伝えていた。傷を負った真人について「当て書きということでスッと入ってくる部分もありますし、話し方や人との距離感など近いものを感じます。『当て書き=その役を生きろ』という岡田さんからのメッセージだと思うので、しっかり心にとどめて、大事に生きていければと思います」と語り、「(役に)説得力があるようにしたい」と目標を掲げていた。
「ひよっこ」のほか、朝ドラ「ちゅらさん」「おひさま」、連続ドラマ「最後から二番目の恋」(フジテレビ系)といった、何気ない日常を丁寧に描き、ふと心に残るせりふ回しで人気の“岡田作品”。いわゆる“怪演”に代表される思わず目を引くような演出があまりない作風の中で、自然と“役を生きる”には、演技に“味付け”ができない分、役者自身の技量が問われる。そこにあえて“当て書き”をしたのは、林さんの高い演技力を評価し、見てみたいという願いが込められているといえるだろう。
「姉ちゃんの恋人」の岡光寛子プロデューサーは、林さんにについて「真面目で真摯(しんし)、いろいろな人の気持ちを理解しようとする林さんの人間力が魅力的」と語り、演技には「全幅の信頼」を置いているとコメント。また、林さんと今作が初共演となった有村さんも、林さんについて「人の心にすっとなじむ。声色というか表現が心地よい。とても稀有(けう)な役者さんだと思っています。すーっと入ってくるけど、内に秘める熱量があって、熱い男性なのかなと思っています。魂のこもった役者さん」と語っていた。
主人公、脇役問わず、多彩な役どころを丁寧に演じてきた林さん。いずれの役にも林さん自身が秘めた熱量が感じられ、そこには“カメレオン俳優”という安易な言葉では表現しきれないものがうかがえる。人の気持ちを理解することが上手で、役と真摯に向き合い、説得力を持たせる演技を追求する“俳優・林遣都”だからこそ、今回“当て書き”された難しいキャラクターを、魂を込めた演技で体現することができるのだろう。そして、画面から伝わった熱量が、視聴者の視線をくぎ付けにし、心を揺さぶるのだ。
17日放送の第4話では、桃子が真人に告白するという展開。いまだ、真人が抱える秘密の全貌は明かされていないが、今後、秘密が明らかになることで、二人がどのような道を選択するのか……。まだまだ波乱が起きそうな中で、真人を演じる林さんの「遣都劇場」から目が離せなくなりそうだ。
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