女優の浜辺美波さんが主演を務める映画「約束のネバーランド」(平川雄一朗監督、公開中)に出演している城桧吏さん。映画は小さな孤児院で幸せに暮らしていた子供たちが隠された衝撃の事実を知り、脱出を試みる姿を描いた“脱獄ファンタジー”で、城さんはクールで冷静沈着な天才少年、レイを演じる。小学生のころに出演した映画「万引き家族」(2018年)から数年がたち、今は「面白い役から怖い役まで、いろいろな役を演じたい」と俳優業への意欲を語る城さんに、レイの役作りや浜辺さんらとの共演秘話、今後の俳優業への思いなどを聞いた。
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「約束のネバーランド」は「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された白井カイウさん原作、出水ぽすかさん作画のマンガが原作。小さな孤児院、グレイス=フィールドハウスで幸せに暮らすエマ、レイ、ノーマンがある日、「孤児院で幸せに育てられていた子供たちは、実は食用児として鬼に献上されるために飼育されている」という衝撃の真実を知り、生きるため“脱獄”を決意する……というストーリー。浜辺さんが主人公の少女エマを演じ、城さんが少年レイ役、特撮ドラマ「仮面ライダージオウ」のウール役などで知られる板垣李光人さんが少年ノーマン役で出演する。
城さん演じるレイは、テストではフルスコアを記録する天才で、クールで常に冷静沈着、どこか大人っぽさを漂わせているキャラクター。原作を読んでいたときからレイが一番好きだったという城さんは、そんなレイを自分が演じると聞いたときは、喜びつつも驚いたという。城さん自身は「明るくて、みんなと一緒に遊んだり、騒いだりしているタイプ」で、レイとは異なる部分もあった。そのため、当初は「自分にできるのかな」と不安も感じていたようで「どう演じたらいいのか、いろいろ考えました」と語る。
そんなレイを演じるために、クランクイン前は「監督とみっちり練習しました」と城さん。ときには浜辺さんやノーマン役の板垣さんらも交え、大声を出すなど感情づくりの練習や、滑舌や抑揚などせりふの練習に励んだという。自宅では、平川監督からの勧めで映画「スタンド・バイ・ミー」を見るなどしてレイをイメージした。「(『スタンド・バイ・ミー』は)キャラクター全員が子供だけど大人な感じも持ち合わせているので、その雰囲気はレイに生かせるのかなと思いました」と振り返る。
城さんは現在14歳で、撮影時は12~13歳。そのため15歳のレイ役を演じるうえでは、落ち着いた感じを出すことを大事にした。たとえばせりふも、平川監督から「レイは“余裕”でいろ」と言われていたため、早くしゃべりがちだったが、ゆっくりとしたテンポでしゃべることや「できるだけ声を低く」することを意識したという。ただ、今回は撮影後に城さん自身が声変わりしたため改めてアフレコですべて録(と)り直したといい、「特に声を抑えなくてもよくなりました」と笑う。
顔の表現は原作やアニメを見て勉強した。「顔の表現の仕方は練習しました。怒っているときの眉毛の動かし方とか……。たとえば、レイは『はあ?』というせりふが多いんですが、そのときに片方の眉毛だけ上げて片方は下げる、とか。そういうことも、練習していたらできるようになりました」と役作りを明かす。
平川監督からは、ときに厳しい指導が入ることもあったという。城さんは「リハーサルでも(だめ出しを)言われていたので、怖いし、悔しいし、いろんな感情がありました」と当時を振り返る。ただ、コミュニケーションを重ねるうちに慣れてきたといい、「だんだんそれが普通に感じるようになり(笑い)。怖くはなくなって、逆に『優しい』と思えるようになりました」とたくましい一面ものぞかせる。
主人公エマを演じる浜辺さんとは初共演。はじめは緊張もあったが、撮影を重ねるうちに距離を縮め、撮影の合間に作品の話はもちろん、学校のことなどプライベートの話もしていたという。「お菓子をもらったり、自分の体のことを気にかけてくれたり……。優しくて居心地がよかったです」と笑顔をみせる城さん。俳優としても「いろんなことが勉強になった」といい、「(実年齢より)年下の役を演じてもぴったりはまっていて、すごいなと思いました」と共演の感想を明かす。板垣さんとも2人だけのシーンが多く、「気軽に話しかけられる関係になりました」と楽しげに語る。
「第71回カンヌ国際映画祭」でパルムドールを受賞した映画「万引き家族」では重要な役どころの祥太を演じ、注目を集めた。当時と比べ、今作ではどのような考えがあったのか。「顔の表現もそうですし、見ている方の心をどうやって動かすか(を考えた)。一言のせりふだけでもいろんな感情が詰まっているので、せりふの言い方や抑揚も学ばせていただきました」と城さんは手ごたえを語る。
注目作への出演が続き、俳優として、これからますますの活躍が期待される城さん。今後は「面白い役から怖めな役まで」と、いろいろな役に挑戦してみたいと意気込む。特に挑戦したいのはアクション。「体を動かすことが大好きなので、アクション系の、かっこいい役をやってみたいですね。(普段は)スポーツはしていないですけど、基本的に動いているというか……アクティブなんです(笑い)」と日常の様子もちらり。目標としているのは窪田正孝さん。「面白い役やシリアスな役など、いろいろ演じられているので。そういうところを見ていて、『自分もそうなれたら』と思います」と前を見据える。
そんな城さんに、最後に今作の“脱獄”という内容にちなんで「今、脱したいもの」を聞いてみると、しばらく考えたのち、苦笑いで「ゲーム」を挙げた。「ゲームのし過ぎなので(笑い)。たとえば映画を鑑賞したり、その時間をほかのことに使えるのかな、と思います」と笑いながら、14歳の顔ものぞかせていた。
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