海に眠るダイヤモンド
第2話 スクエアダンス
11月3日(日)放送分
俳優の長谷川博己さん主演のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」(総合、日曜午後8時ほか)。2020年1月19日にスタートしたドラマは、2月7日にいよいよ最終回を迎える。同作はネットとの相性も良く、日曜の夜はツイッターのトレンドで「#麒麟がくる」が何度も1位を獲得。盛り上がりに合わせて、数々の愛称や流行語が生まれた。ここでは、そんなSNS発の「パワーワード」と共に名シーンを振り返ってみたいと思う。
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ドラマは「桶狭間の戦い」が描かれた放送休止前の第21回「決戦!桶狭間」(2020年6月7日放送)までを前半、再開後の第22回「京よりの使者」(2020年8月30日放送)以降を後半と大きく分けることができる。前半のMVPとして、ファンから真っ先に名前が上がりそうなのが、本木雅弘さんが演じた斎藤道三だ。人気のピーク(?)は早くも第2回「道三の罠(わな)」(2020年1月26日放送)にやってきた。そのときに生まれたのが「伊右衛門毒殺でおくりびと」だ。
同回の終盤、道三は美濃の守護で、娘婿(むすめむこ)の土岐頼純(矢野聖人さん)と対面する。敵の織田側と裏で通じていた証拠を突きつけ、頼純の動揺を誘う道三。そして頼純は、道三に差し出された茶に口をつけると、苦しみだし……と展開した。
“美濃のマムシと恐れられた男”がその毒牙を見せた瞬間で、頼純が毒にもがき苦しみ、絶命する瞬間まで、表情一つ変えず朗々と歌を歌い上げる道三の姿に「こ、怖い」「目がヤベエ」「本木道三の迫力がハンパない」などと視聴者は恐怖した。
また、本木さんがサントリーの緑茶飲料「伊右衛門」のCMキャラクターを長年、務めていることや、主演映画「おくりびと」になぞらえ、パワーワード「伊右衛門毒殺でおくりびと」が誕生。後日「伊右衛門」の公式ツイッターも反応し、「昨晩は、主人が熱演のあまり、皆様をお騒がせしましたようで、すみません。まずは心を落ち着け、茶などお召し上がりくださりませ。妻より」と、CMで妻を演じる宮沢りえさんの画像付きで粋なツイート。盛り上がりに花を添えた。
そんな道三は、第12回「十兵衛の嫁」(2020年4月5日放送)で逆に暗殺されそうに。襲ったのは土岐頼芸(尾美としのりさん)からの頂き物とされる自慢の「鷹(たか)」。爪に塗られていた毒により、身をていして道三をかばった近習(きんじゅ)は命を落とした。このときは「鷹」の字の入った緑茶飲料「綾鷹」(日本コカ・コーラ)を引き合いに、毒殺合戦を「伊右衛門VS綾鷹」と表現する視聴者が次々と出現したことも付け加えておこう。
道三に負けず劣らず人気を博したのが、川口春奈さん演じる帰蝶だ。今やすっかり定着した「帰蝶P」という愛称だが、大きなきっかけとなったのが、第13回「帰蝶のはかりごと」(2020年4月12日放送)での出来事。
この日は、帰蝶のもとに父・道三から、信秀(高橋克典さん)の家督を継いだ信長(染谷将太さん)と「会見したい」という内容の文が届く。自分をおびき出して、殺す気ではないかと道三を疑い、会見を拒否する信長。そこで帰蝶は、父の思い通りになるまいと、信秀が生前、ひいきにしていた旅芸人の伊呂波太夫(尾野真千子さん)のもとを訪ね、見事な交渉術で傭兵(ようへい)集めを引き受けさせる。さらに帰蝶は、信長が道三との会見に着ていく服まで細かく指定。迎えた会見の日、道三が目にしたのは、おびただしい数の鉄砲隊を引き連れて現れた信長だった……。
してやったりとばかりに笑顔を浮かべる帰蝶の姿に、SNSでは「帰蝶、やるう~!!」「策士 帰蝶!」「さすがマムシの娘」「ドヤ顔な帰蝶ちゃんカッコいい!」「帰蝶様の勝つ気満々の勝ち戦」「最後のしてやったり顔たまらん」「ご覧ください、ラスボスのほほ笑み」「帰蝶様の敏腕ぶりに震えている」などといった声が次々と上がった。
その後も時折、女軍師的な活躍を見せ、ファンを喜ばせてきた帰蝶。彼女の“敏腕プロデューサーぶり”を言い表した「帰蝶P」も、「麒麟がくる」を代表するSNS発のパワーワードと言えるだろう。
「麒麟がくる」ではたびたび武将の壮絶死が描かれてきたが、向井理さん演じる室町幕府第13代将軍・足利義輝の“最期”から生まれたのが「アバン死」だ。放送回は第24回「将軍の器」(2020年9月20日放送)。その壮絶な最期が、ドラマ開始からわずか2分、オープニングのタイトルバックが流れる前、アバン(アバンタイトル=プロローグシーン)での出来事だったため、視聴者に衝撃を与えた。
三好長慶(山路和弘さん)と松永久秀(吉田鋼太郎さん)の子らによるクーデターが勃発。二条御所へと攻め込んできた軍勢に対し、義輝は最初は刀を手に、途中からなぎなたを振るい応戦するも、最後は三方から障子で抑えられてしまう。動きと視界を封じられた義輝が、障子越しにブスブスブスと刺されて命を落とす……とシーンは展開。
SNSでは「将軍さまアバン死……」「アバン死という新しい概念」「ナレ死ならぬアバン死とは」「アバンでクライマックス」「アバンでここまでやるのか。。。」などとファンが反応。また「いやいやいやああ~いきなり??」「え、まだオープニング前なんですけど」「本気で先週見逃したと思った」「早いー早いよー義輝様~」と義輝の退場を惜しんでいたが、「『将軍の器』という回のアバンで消されるの、もう器ではないよという宣言だよね」という冷静な意見もあった。
そのほかドラマでは当初から、主人公・光秀(長谷川さん)が、そのときそのときの主(あるじ)から“おつかい”を頼まれることが非常に多く、「光秀クエスト(発動)」といったワードもよくつぶやかれたきた。また。「帰蝶P」のような愛称で言うと「信長=ノッブ」「松永久秀=ボンバーマン」などもあった。さらに、道三と光秀、信長と光秀のコンビによる、「帰れ!」「帰ります!」……「呼び戻せ!」のやりとりを「ショートコント『主君と家臣』」と名付けたファンもいた。
そして、最終回が近づくに連れ、はやり始めたのが「本能寺ゲージ」だ。信長の蛮行に対して、後に「本能寺の変」へと向かう光秀の心の内を言い表したもので、そんな「本能寺ゲージ」が“マックス”になったとされる第43回「闇に光る樹(き)」(1月31日放送)でも、新たなパワーワードが生まれた。それが「光秀チョップ」だ。
有名な「宴」のエピソードが描かれた同回。武田を攻め滅ぼしたことを祝い、信長が安土城に家康(風間俊介さん)を招いての宴が開かれる。家康の希望で、光秀は饗応役(きょうおうやく)を任されるが、祝宴の席で信長が急に「膳が違うぞ」「品数が足りん」と言いだし、光秀は理不尽な叱責を受ける。
これでは面目が立たないという信長の元から慌てて膳を下げようとする光秀だったが、椀(わん)の中身をぶちまけてしまい、信長の怒りは頂点に。光秀の首に扇子をあて、「十兵衛、下がれ!」と足蹴(あしげ)にする信長。蘭丸(板垣瑞生さん)の「上様に粗相をなさったな。無礼であろう」との一言が火に油を注ぐが、ここで光秀は蘭丸の体を払い、般若のような形相で信長をにらみつける……。
同シーンは、光秀を悩ませる「月にまで届く巨大な大木を切る不思議な夢」とオーバーラップする形で描かれ、光秀の手がまるで“平手チョップ”のような動きを見せると、「光秀のあの手は何? 手刀?」「あの手の形だけを見たら、地獄突き~」「光秀チョップ!」などと視聴者の注目を浴びた。
泣いても笑ってもドラマは残り1回。最終回では、また別の新たなパワーワードが生まれそうな名シーンが用意されているのか。最後まで見逃せない。
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