中村蒼:周囲の人の“喜び”が原動力 「出会い」の20代から「生き残りをかけた」30代へ

「ドラマスペシャル『神様のカルテ』」で進藤辰也役を演じる中村蒼さん (C)テレビ東京
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「ドラマスペシャル『神様のカルテ』」で進藤辰也役を演じる中村蒼さん (C)テレビ東京

 福士蒼汰さん主演で2月15日から4週連続で放送中の「ドラマスペシャル『神様のカルテ』」(テレビ東京系、月曜午後8時)に出演する中村蒼さん。中村さんが演じるのは、福士さん演じる主人公・栗原一止の同期で、大学時代からの友人でもある優秀な血液内科医・進藤辰也。医師としての悩みを抱え、一止と同じ病院に赴任してくるという役どころで、第二夜、第三夜に登場する。昨年放送されたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「エール」では、主人公の幼なじみを演じるなど順調にキャリアを積み上げている中村さんは、3月には30代に突入する。俳優として充実の日々を送る中村さんに、今作への思いや30代に向けての心境などを聞いた。

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 ◇“斜め上”のものを提出する

 「神様のカルテ」は、夏川草介さんのベストセラー小説「神様のカルテ」(小学館)シリーズが原作。2011年と2014年には櫻井翔さん主演の映画が公開された。ドラマは長野県・松本が舞台。「24時間、365日対応」の地方病院で働く風変わりな医師が、患者や恩師との別れ、地方医療の現実を経験し「良い医者とは何か?」を模索する軌跡を描く。中村さんは2月22日放送の第二夜から登場する。
 
 辰也は、学生時代は「医学部の良心」とも呼ばれ、医学部を首席で卒業するほど優秀な男。一止のいる本庄病院へ赴任してくるが、実は「患者を救うために、家族を犠牲にしてもいいのか?」と自問自答している……という人物だ。悩みを抱える辰也は、患者にそっけなく、周囲との間に溝を作ってしまう。だが、そんな辰也を演じるうえで、中村さんが決めていたのは「嫌な人物」には見えないようにすることだったという。「揺れる辰也を演じられたら、と思っていました。医学部時代とは変わってしまった嫌な医師、とは見えないようにしたいなと。そこのバランスを考えながら演じていました」と振り返る。

 抱えている問題を周囲に漏らさず一人で解決しようとする辰也の姿は、自身にも重なるところがあると中村さんは言う。

 「共感できると思いました。僕も『誰かに頼っても、解決しないといけないのは自分だし』という気持ちになりがちなので」と中村さん。俳優としても「どういうふうにすべきか迷っていても、人に聞いて解決策を見いだすというよりは、自分で考えてやってみて、違っていたらまた違うことをやってみて……という感じです。いわゆるディスカッションみたいなことはあまりしない。そうするべきとは思うんですけど、なかなかできないです(笑い)。性格的なこともあるし、自分で考えたことを出した方がいいのかな、とも思っています。それで、相手が思っている以上のものを出せたら、それはそれで楽しいですし」と語る。
 
 相手の想像を上回るものを提出する、という考えは、普段から俳優として大事にしている思いでもあるという。「たとえば監督が思っている“斜め上”のものを提出する、とか。それができないから悩んでいるんですけど(笑い)、一つの作品で一瞬ぐらいは、監督が『あっ、こういうことするんだ』と思ってもらえるようなものを提出できたらなと思っています」と力を込める。

 ドラマでは、主人公の一止役の福士さんと多くのシーンを演じる。福士さんと共演した印象を聞くと、「コツコツと続けることが得意で、とても努力家な方だなと思いました」と感嘆。「一止という役はすごく難しい。どうしたらよりよいものになるのか悩みながら、自分なりの正解を探していたと思いますが、その悩みながら奮闘する姿が一止みたいで。まさに福士くんと一止が重なっている感じがしました」と振り返る。

 ◇もうすぐ30代突入「めちゃくちゃ不安」と本音も 

 今作が朝ドラ「エール」の終了後、初のドラマ出演となった中村さん。「エール」では主人公・古山裕一(窪田正孝さん)の幼なじみ・村野鉄男という重要なキャラクターを演じた。長丁場の朝ドラは、これからの仕事の糧にもなったという。

 「朝ドラの監督から、『いろいろなことがあった過酷な1年間を無事終え、みんながいたからこそすごくいいものを多くの人に届けることができた。自信を持ってください』と言っていただいて。自分は、どうしても性格的に後ろ向きになりがちなんですが、長い間にわたって作品を届けることができたということに自信を持って、これから進んでいっていいんだ、と思いました。それをこれからの仕事の糧にしていきたいなと思っています」とほほ笑む。

 現在29歳。数々の作品で活躍する中村さんだが、これまでの20代を振り返ると、意外にも「正直に言って『まだ続けられているんだ』という気持ちが大きいです」という。

 「もちろん『これからもこの仕事でやっていくんだ』というつもりでやってきたけど、でも、いつどうなるか分からない、そういう不安な職業なので。30歳まで続けてこれたんだ、ということに、うれしい気持ちはあります。20代はいろいろな作品に出演させてもらって、たくさんの人に会うことができた。『まさかこんな人生を僕が歩むとは思わなかった』と思えるぐらい、多くのすてきな人たちに出会えたから、うれしい気持ちでいっぱいですね」と明かす。

 多くの出会いと実績を積んだ20代を終え、3月には30代に突入する。中村さんは「正直、めちゃくちゃ不安というか……あまり期待に胸を膨らませている感じではないです」と本音をちらり。「なんとか30歳までは続けられたけど、40歳まではできるのかなとか、そういう不安があるので。(30代は)淘汰(とうた)されていく、というじゃないですか。生き残りをかけた戦いが始まっていく(笑い)。より自分の存在価値が求められるというか……『この人じゃないといけない』という場面が、今後はより増えていくと思うので」と率直な思いを話す。

 ただ、過去を振り返ると、どの作品も「やれてよかったな、と心から思える作品ばかりだったんですよね」と笑顔も見せる中村さん。また、作品に出演することで喜んでくれる周囲の人たちの存在も大きいという。「周りの人のため、と思う方が頑張れる。たとえば、『この作品に出たら楽しんで見てくれる人がいる』とか『僕にこも役をお願いしてよかった、と思ってくれる人がいる』とか……そういう人たちがいてくれることを考えると、頑張れます」と力強く、俳優としての原動力を語ってくれた。

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