井上尚弥選手:「相手に何もさせずに勝つだけ」 マイケル・ダスマリナス選手との防衛戦に高いモチベーション

井上尚弥選手=WOWOW提供
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井上尚弥選手=WOWOW提供

 プロボクシングバンダム級のWBAスーパー王座とIBF王座を持つ井上尚弥選手が、米ラスベガスのヴァージン・ホテルで6月20日(日本時間)、IBF1位のマイケル・ダスマリナス選手との防衛戦に挑む。試合を前に、井上選手がダスマリナス選手の印象や、意気込みを語った。

ウナギノボリ

 ◇バンタム級で5戦「イメージしていた以上に充実」

 ーー今回の防衛戦はジェイソン・マロニー(オーストラリア)戦から8カ月後の試合となりますが、この間隔は気になりますか。

 ケガで試合ができなかったオマール・ナルバエス(アルゼンチン ※2014年12月、井上選手が2回KO勝ちでWBO世界スーパー・フライ級王座を獲得)戦後の1年は長く感じたけれど、今回はずっとトレーニングはできているので割と早いなという感じですね。

 ーーこの間、WBO王者のジョンリエル・カシメロ選手(フィリピン)が盛んに井上選手を挑発していますが、気になりますか。

 気にはなるけれどダスマリナスとの試合が決まっているので、いまはカシメロのことは考えていません。僕は4団体の王座を統一したいのであって、カシメロに興味があるわけではないので。でも、タイミングが合えば決着をつけるときがくると思うので、そのときはパンチを当てさせずにフィニッシュに持っていきたいと思っています。

 ーー今回はマロニー戦と同じラスベガスでの試合ですが、前回は無観客、今度は観客を入れての試合になりそうです。

 そこがイメージできないんですよね。日本とラスベガスでどんな盛り上がりの違いがあるんだろうって。お客さんの熱によって自分のテンションの上がり方が変わってくるので、そのあたりが未知といえば未知です。

 ーー初めて世界王座を獲得してから7年がたちましたね。

 あっという間といえばあっという間だけれど、じゃあこの7年間で何ができたのかと考えると物足りなさが残りますね。特にスーパー・フライ級時代には7回防衛したけれど、納得できるような感じがないんです。

 ーーバンタム級ではイメージ通りですか。

 いや、イメージしていた以上です。バンタム級での初戦がジェイミー・マクドネル(イギリス=井上選手が1回TKO勝ちでWBA王座獲得)で、次がWBSS(階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」)の初戦でファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国=井上選手が1回KO勝ち)。エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ=井上選手が2回KO勝ちでIBF王座獲得)、ノニト・ドネア(フィリピン=井上が選手12回判定勝ちでWBSS優勝)、そしてマロニー。スーパー・フライ級時代と比べると、すごく充実しています。

 ーーいまはバンタム級が一番フィットしますか。

 そうですね、一番フィットしていると思います。でも少しずつ体重がきつくなってきているのも事実なので、今年、来年と様子を見ながら遠からずスーパー・バンタム級に上げる日がくるかも。ただ、無理して階級を上げようとは思いません。(体重が)適正じゃないと意味がないと思っているので。

 ーーこの7年で成長したと感じる部分はどのあたりですか。

 精神的にもそうですが、自分が試合でやらなくちゃいけない技術であったりメンタルの持って行き方であったり、そういう点が少しずつ成長してきて、それが今の階級で生きてきているのかなと思います。

 ◇内容が問われる試合「相手に何もさせずに勝つ」

 ーー今回のダスマリナス戦ですが、王座を返上して別の相手と対戦することは考えなかったのでしょうか。

 4団体の王座を統一してバンタム級で一番強いということを証明したいので、この試合をクリアして統一戦に臨みます。

 ーーダスマリナスの印象を教えてください。

 ひょろひょろと背が高くてリーチがあり、右フックを大きく振ってくる選手ですね。もっと攻撃的でゴリゴリと前に出てくるのかと勝手に思っていたけれど、弟(井上拓真)とのスパーリングや木村(隼人)選手との試合の映像を見る限り、意外と足を使ったりして動く選手だなという印象です。

 ーー捕まえにくいタイプなのでは。

 来るときは来るので、そういうときにはカウンターが生きると思います。マロニーと比べると穴があるので、(どんな選手か)感覚としてはとらえています。

 ーーIBFでは1位にランクされています。

 ポイントはそこではなく、今回は次の統一戦に向けたステップの試合という位置づけですね。これをクリアすれば統一戦が組まれると思うので、かなりモチベーションは高いですよ。

 ーー今回の試合、注意する点は?

 ダスマリナスはパンチと一緒に頭を前に出してくるので、そこは注意しないと。パンチでは右フックですかね。角度が大きく、外から来るので。

 ーー井上選手はサウスポーとはナルバエス、パヤノと2度対戦して早い回で倒しています。戦いやすいのでしょうか。

 やりにくくはないですね。アマチュア時代から苦手ではないです。ただ、ナルバエスやパヤノと違って今回の相手は長身のサウスポー。その点が初めてなので戦うのが楽しみですね。

 ーー井上選手にとって右構えの相手とサウスポーの相手との戦い方はどう違うのでしょうか。

 サウスポーとの試合で気をつけなくちゃいけないのは相手の左ストレートなんです。特に上下に散らされると見えない角度でくることがあるので。でも、サウスポーとの戦いは、前に出ている互いの手と足が当たるので駆け引きがしやすいんです。右構え同士の場合は左ジャブの差し合いがせわしないけれど、サウスポーとの戦いは左手で相手の右を押さえてしまえばいいので自分にとっては楽ですね。

 ーーこれまでプロで20戦(全勝17KO)しているなかでフィリピンの選手とは4度戦っています(4勝3KO)。何か共通する特徴は感じていますか。

 4人ですか? デビュー戦と東洋太平洋タイトルを獲得した試合、それにワルリト・パレナス、ドネア……本当だ。でも、4人には同じような特徴は感じませんね。スパーリング・パートナーとして来てもらっていたフィリピンの選手は、いかにもフィリピンの選手独特という特徴があったけれど、そういう選手と試合はしたことがなかったんです。そういう意味ではダスマリナスはフィリピンのボクサー特有の選手かも。パンチの出し方、角度など独特ですから。初めて戦うタイプなので対戦が楽しみですね。KO率も高い(約61パーセント)ですよね。

 ーーどんな展開をイメージしていますか。

 僕が追いかける展開になると思います。

 ーー早い決着もありそうですね。

 いや、早くないです(笑い)。長丁場も考えています。ともかくアグレッシブな試合をして、自分が納得できる試合をしたいですね。

 ーー今回、自分に課しているノルマはありますか。

 判定まで行っちゃダメだなと。でも、そうすると自分でハードルを上げることになっちゃう(笑い)。今回は内容が問われる試合だから一方的な内容じゃないと次につながらないので、タイミングが合えば倒したいですね。

 ーーその先、1年後の自分をイメージできますか。

 タイトルを統一していたい……ですね。12月には3団体、そしてタイミングが合えば来年の4月あたりに4団体統一。それがちょうど1年後ですね。

 ーー最後に、改めて意気込みを。

 次の統一戦に向けて今回はしっかり結果を出さないといけないと思っています。いまは右でも左でもパンチが当たれば倒せる感覚があるので、相手に何もさせずに勝つだけです。

 *……WOWOWでは、6月20日午前10時半から「生中継!エキサイトマッチスペシャル 『井上尚弥』ラスベガス防衛戦! WBA・IBF 世界バンダム級タイトルマッチ 井上尚弥 vs マイケル・ダスマリナス」をWOWOWプライムで生中継。6月27日午前11時からは、中谷正義選手が前3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ選手に挑む「生中継!エキサイトマッチスペシャル 『中谷正義 vs ワシル・ロマチェンコ』 ライト級12回戦 中谷正義 vs ワシル・ロマチェンコ」もWOWOWプライムで生中継する。

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