UFC266:ヴォルカノフスキーVSオルテガ戦は「分からない」 “世界のTK”高阪剛が見どころ語る

アレクサンダー・ヴォルカノフスキー選手(左)とブライアン・オルテガ選手 Getty Images
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アレクサンダー・ヴォルカノフスキー選手(左)とブライアン・オルテガ選手 Getty Images

 世界最高峰の総合格闘技イベント「UFC266」が、9月26日(日本時間)、米ラスベガスのT-モバイルアリーナで開催される。メインイベントは王者のアレクサンダー・ヴォルカノフスキー選手が、ブライアン・オルテガ選手を迎え撃つフェザー級タイトルマッチ。さらに、「絶対王者」と呼ばれるヴァレンティーナ・シェフチェンコ選手がローレン・マーフィー選手と戦う女子フライ級タイトルマッチも行われる。試合の見どころを、WOWOWの「UFC -究極格闘技-」解説者で、“世界のTK”こと高阪剛さんが語った。

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 ◇ヴォルカノフスキー選手の防衛戦は「蓋を開けてみないと」

 --ヴォルカノフスキー選手がオルテガ選手を迎え撃つ防衛戦をどのように見ていますか?

 この試合は、タイプ的に対照的な2人の戦いですよね。王者ヴォルカノフスキーは、どちらかというと、いわゆる“ゴリゴリやる”タイプ。フィジカルが強くて、自分からどんどんプレッシャーをかけていき、たとえ打たれてもどんどん前に出てきたりする。

 --UFC屈指のタフガイですよね。

 一方のオルテガは、自分からバンバン前に出ていくタイプではないんですけど、カウンターの打撃でしっかりとダメージを与えることができる。また、小技を使って相手を前に出させないような技術を駆使して、タイミングとチャンスを見計らって、倒しにくる。そういうクレバーなタイプの選手ですね。

 --今回は、闘牛とマタドール(闘牛士)のような戦いになりそうですね。

 まさにそういうイメージですね。ただ、オルテガに関しては、ちょっと懸念材料もあります。カウンターを当てるのがすごくうまいんですが、これまでの試合を見ると、カウンターさえも取らせないくらいのプレッシャーを受けると、ちょっとモロさが出ていたんです。(2018年12月の)マックス・ホロウェイ戦なんかは、まさにそういう試合でした。

 --壮絶な一戦でしたが、最終的にはオルテガ選手がドクターストップ負けしました。

 だからヴォルカノフスキーはどれだけプレッシャーがかけられるか、オルテガはそれをいなしながら、ポイント、ポイントでしっかり打撃を当てられるかでしょうね。ただ、もしオルテガが勝つとしても、KO勝ちはちょっと難しいと思うんですよ。

 --ホロウェイ選手の強打を浴びても前に出てきたヴォルカノフスキー選手がKOされる姿は、想像しにくいです。

 前回、ヴォルカノフスキーはホロウェイとの再戦で2度ダウンしているんですよね。1ラウンドに右ハイキック、2ラウンドはアッパー。どちらもフラッシュダウンしてるんですけど、ヴォルカノフスキーはダウンしながらも、パニックになることがないんです。これは相当屈強なメンタルの持ち主なんじゃないかと思いますね。

 --試合後半に強いホロウェイ選手が、逆転負けを喫したくらいですからね。

 だからオルテガのKO勝ちというのは、よっぽどいいタイミングで打撃を当てるか、ヴォルカノフスキーがミスしないかぎり、なかなか難しいと思います。それはオルテガ陣営も当然分かっているだろうから、しっかりポイントを取って、判定勝ちを狙ってくるんじゃないかな。それも、なんとかテークダウンして、グラウンドでコントロールすることで各ラウンドのポイントを取りにくるんじゃないかと思うんですよ。

 --オルテガ選手は、もともとグレイシー柔術家ですからね。

 オルテガは柔術家らしく、グラウンドで餌まいて最終的にきめにいく。それがダメなら、すぐに自分の安全なポジションに戻るという寝技をしますからね。だから、そうやってオルテガがグラウンドで常にいい状態を保つことができれば、チャンスは広がっていきますけど、ヴォルカノフスキーのフィジカルは、それをも潰していくんじゃないか、という気がするんです。

 --ヴォルカノフスキー選手にも懸念材料があります。同タイトル戦はヴォルカノフスキー選手が新型コロナウイルスに感染したため、延期されていました。症状がひどかったそうです。

 じゃあ、いつものヴォルカノフスキーと同じような仕上がりかどうかは、蓋(ふた)を開けてみないと分からないかも。でも変な話、それによってこのタイトルマッチは、より面白くなりましたね。両者がこれまでどおり万全なら、正直、ヴォルカノフスキー有利だと思っていましたけど、ちょっとこれで分からなくなりましたから。

 --オルテガ選手に勝機が傾いてきましたか?

 ヴォルカノフスキーのプレッシャーが少しでも弱まるなら、オルテガはだいぶ有利になります。オルテガは、腕をたたんだ状態からジャブなどで手を出して、距離で相手を惑わすことができる。だからアッパーとかが入りやすいんですよね。ジャブという自分の距離を保つ打撃があるからこそ、距離を詰めてきた相手にカウンターのアッパーもいれることができる。ジョン・チャンソンとの試合でもアッパーを何度か出していましたが、得意技なんでしょうね。

 --死角から入れる打撃がうまいですよね。アッパーやバックエルボーにしても。

 体の入れ替えだったり、相手に対して微妙に外側にポジションを取ったりするのもすごくうまいんですよ。そういうことも含めて技術力が高いので、ヴォルカノフスキーがフィジカルで勝ちきれないような試合になったら、また面白くなる気がします。

 ◇マーフィー選手が「絶対王者」のプレッシャーをどういなすか


 --シェフチェンコ選手に、5連勝中のマーフィー選手が挑戦します。この一戦はどう見ていますか?

 マーフィーは、フェイントや細かい動きを多用して、相手をだんだん疲れさせて自分の攻撃につなげていく。またグラウンドのトップキープが強いので、寝かせて、そこからさらに削るということを頭に入れて試合をしている選手だと思いますね。

 --フライ級転向後は、テークダウンからの寝技で試合を優位に進めることが多いです。

 やはりバンタム級から階級を落として、フィジカル負けしなくなったことで、テークダウンが容易になったことも、マーフィーが連勝を続けている秘訣(ひけつ)の一つでしょうね。

 --しかし今回は、相手が王者シェフチェンコ選手です。

 そうなんですよ。タイトル戦に出てくるような選手は、それぞれトップランカーたちを倒してきた強みを持っているんですが、それが果たしてシェフチェンコに対して通用するのかどうか。正直、女子フライ級タイトルマッチというのは、すべてそうなってますよね。

 --立ってよし寝てよし、全局面で強さを発揮する選手ですから。

 シェフチェンコはもともとキックボクシングの世界王者なので、そもそも打撃が強いんです。相手がその強い打撃を嫌ってへたに組みつきにいこうものなら、簡単にテークダウンを奪うんですよ。

 --柔道やサンボの経験があるので、払い腰などで投げたりしますよね。

 相手は自分の形でテークダウンを奪いにいくのではなく、打撃のプレッシャーを嫌がって組みにいってるから、それがシェフチェンコにとっては、すごくやりやすいんだと思います。だからこの試合も、マーフィーがいかにシェフチェンコのプレッシャーを細かい技術でいなして、自分の形でテークダウンを奪うことができるか。活路を見いだすとしたらそこかなと思いますね。

 ◇

 試合の模様は、「生中継!UFC-究極格闘技- UFC266 in ラスベガス Wタイトルマッチ&ニック・ディアスvsロビー・ローラー」と題し、9月26日午前11時からWOWOWライブで生中継、9月27日深夜0時15分からWOWOWライブでリピート放送。両日とも、WOWOWオンデマンドで同時配信される。

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