人気ドラマ「ドラゴン桜」(TBS)や「ゆるキャン△」シリーズ(テレビ東京)など話題作への出演が続き注目を集める女優の志田彩良さん。10月15日に公開された映画「かそけきサンカヨウ」(今泉力哉監督)では、家庭環境のせいで早く大人にならざるを得なかった高校生・国木田陽役で主演。今作が今泉映画作品3度目の参加となった志田さんは、「今泉組での撮影が終わるたびに、お芝居って本当に楽しいなと実感できます。役者を続けていくうえで、今泉組はすごく大切な場所」と思いを語る。もともと信念を内に秘めるタイプだが、最近は「“負けず嫌い”ということが、少しずつあふれ出ている」という志田さんに、今作への思いや、「ドラゴン桜」でも共演した鈴鹿央士さんなど同世代俳優への思いを聞いた。
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映画は、人気作家・窪美澄さんの同名短編小説(角川文庫)が原作。高校生の陽(志田さん)の葛藤と成長が、同級生・陸(鈴鹿さん)との恋まではたどり着かないような淡い恋愛感情を交えて描かれる。陽は、幼いころに母・佐千代(石田ひかりさん)が家を出ていき、父・直(井浦新さん)とふたり暮らしだったが、父が再婚し、再婚相手の美子(菊池亜希子さん)やその連れ子のひなたとの暮らしが始まる。佐千代への思いを募らせていた陽は、同級生の陸と絵描きである佐千代の個展に行くが……というストーリー。
志田さんが演じる陽は、父とふたり暮らしという家庭環境ゆえ、早くに大人にならざるを得なかったしっかり者の高校生。演じるうえで大事にしていたのは、「うそをつかないこと」だったという。「今泉監督が『もうワンテークやりましょう』と言うときは、自分の中でも演技に迷いがあったときです。自分がそのときに感じた気持ちをしっかり表に出すようにしていました」と語る。
陽は毎日家事をしている女の子なので、普段から家事に慣れていないとうそがばれてしまう。そのため、役作りで毎日家事をするようにしていたという。「なるべくうそをつかないように演じたかったので、毎日家事をしていました。洗濯したり、献立を考えて作ったり。ちょうどそのとき、従兄妹に赤ちゃんが生まれて、私の家に里帰りしていました。なので、ひなたちゃんの代わりではないですが、その子のお世話をしながら、ご飯を作って家事をして……と約1カ月間、陽みたいな生活を送っていました」と笑顔で明かす。
今作の陽、そして6月に放送終了した「ドラゴン桜」での小杉麻里役と、しっかり者の役が続く。だが、自身は周囲に「あまりしっかりしている印象は抱かれていないんじゃないかなと思います」と苦笑する。「最近、仕事で見せる顔と、家族や友人の前で見せる顔は少し違うのかな、と気づき始めて……。お仕事はまじめに取り組まなければいけませんが、末っ子ということもあって、プライベートでは家族や友人など周りの人に甘えてしまうので、家族や友人は私に『しっかりしている』という印象を抱いていないと思います(笑い)」と打ち明ける。
陽は物静かだが、いざというときには相手に自分の言葉で思いを伝えることができる、芯の強さも持つ。そんな陽に、志田さんは「ちゃんと自分の言葉で相手に思っていることを伝えたりするのは、すごく勇気がいることだなと感じます」と共感。志田さん自身は、以前は思いを口に出すことが苦手だったといい、「何か思ったことがあっても言わないようにしていて、自分の中に閉じ込めておくことが多かったのですが、今は思ったことは積極的に伝えたほうがいいのだなと気づきました」と意識に変化があったという。
そうした変化の背景には、今泉組での経験があった。「今泉さんと初めてお会いしたときは、陽と同じぐらいの高校生でした。大人は、子供の意見を否定するイメージがあったのですが、今泉監督が覆してくださって。否定するのではなく『そういう意見もあるな、自由に動いてみようか』と私に任せてくださいました。それで『自分の意見をしっかり言葉にして、お芝居に生かすって楽しいな』と気づいて……。それからは、現場でも思ったことはしっかり口に出した方がいいんだなと思いました」と振り返る。
今作が今泉映画3作目となった志田さん。今作でも、改めて演じることの楽しさを実感できたと声を弾ませる。「毎回、今泉組の撮影をする度に『お芝居って本当に楽しいな』と実感します。役者を続けていくうえで、今泉組というのは私にとってすごく大切な場所。今回も、お芝居の楽しさを再確認させていただきました。さまざまな役を演じると、いろんなことを学ばせていただくと同時に、いらないくせがつくこともあるのですが、今泉組は、真っさらな状態に戻してくれる。これからいろんなことを演じていくうえでも大切な場所だなと思います」と今泉組への思いを語る。
志田さんといえば、これまでに「ゆるキャン△」シリーズや「ドラゴン桜」など話題のドラマに出演。「ゆるキャン△」ではふんわりとした雰囲気の斉藤恵那、「ドラゴン桜」ではしっかり者で勝ち気な優等生の小杉麻里を演じ、注目を集めた。そんな志田さんは、「どの現場も『私にとって宝物』と思えるぐらい、いろんなことを吸収させていただきました」と作品ごとに得るものがあったという。
「『ゆるキャン△』では、『作品に対する愛ってすごく大事なんだな』と感じました。スタッフさんもキャストの皆さんも原作に愛をもっていて。もし愛がなかったら、原作ファンの方々から厳しい声があったと思いますが、愛をもって大切に演じれば、見ている方に伝わるんだなと実感しました」と志田さん。一方、「ドラゴン桜」では、今作でも共演する鈴鹿さんら同世代との共演が刺激になった。「すごく大きな経験をさせていただきました。『ドラゴン桜』の現場に参加する前と後では、お芝居に対する考え方も変化があって……同世代の共演者が多く、そこで感じた悔しさなどが今の自分のバネにもなって、今も『みんなに負けないように頑張ろう!』と思っています。同世代の方たちから受けた刺激は本当に大きかったなと思います」としみじみと語る。
もともと同世代に対して、内心では悔しさやライバル心を抱くことはあっても、外に向けて出すタイプではなかったという。ただ、最近はそうした感情に変化も。「負けず嫌いということが、ちょっとずつあふれ出ているのかな、と。『ドラゴン桜』の現場でも、みんなに『本当に負けず嫌いだよね』と言われていたので(笑い)。いい刺激をたくさんもらいました」と志田さん。
特に、今作でも幼なじみ役で共演する鈴鹿さんとは、「ドラゴン桜」のときは熱く意見をぶつけ合うこともあり、刺激し合える“戦友”だったようだ。「『ドラゴン桜』のときは、初めてお互いの熱い部分を出して話し合えて……。1回だけ、意見がぶつかって、けんかしたこともあったのですが(笑い)。それぐらい自分の意見をぶつけられる共演者に出会えたことは、本当に貴重な経験だと思いますし、これからもいい戦友として、お互い刺激し合える仲になれたらいいなと思います」とほほ笑む。
今後もドラマに映画にと、さらなる活躍が期待される志田さん。最後に理想とする役者像を聞くと、「『この人といえばこういう役』というよりは、『この人だったらこういう役もできそうだし、こっちの役もできるよね』と、いろんな顔を持った、いい意味で色のない女優」と理想を明かす。演じてみたい役は、今までのようなまじめなキャラクターもだが、「まじめなイメージをガラッと覆せるような狂気的な役。人生で一度も髪の毛を染めたことがないので、思いっきり違う色に変えて、見た目からイメージが変わる役にも挑戦してみたいです」と新たな挑戦への意欲も語ってくれた。
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