ABCのドラマ枠「ドラマ＋（プラス）」（日曜午後11時55分）で放送中の連続ドラマ「ムショぼけ」で、連ドラ初主演を果たした北村有起哉さん。妻で女優の高野志穂さんと夫婦役で共演する「Amazonプライム」のCMも好評を博するなど、47歳にしてブレークしている。「これを一つの通過点にしないと」と言いつつ「僕自身はあまり変わっていない」と語る北村さんに、ドラマの見どころや、転機となった作品などを聞いた。

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　◇実は関西弁に苦手意識

　「ムショぼけ」は、北村さん扮（ふん）する、刑務所を出た元ヤクザが14年ぶりのシャバで奮闘する日々を描く。原作は沖田臥竜さんの同名小説（小学館文庫）で、映画「ヤクザと家族 The Family」チームの手掛ける任侠（にんきょう）コメディー。「ヤクザと家族 The Family」や映画「新聞記者」などの藤井道人監督がプロデュースする。

　北村さんはドラマ初主演を務めることについて「非常にうれしかったですし、兜（かぶと）の緒を締めるという心持ちです」といい、「主演がゴールではないので、喜ぶ気持ちを抑え、これを一つの通過点にしないと」と気を引き締める。

　「今回は、ほぼドラマに出っぱなしで休む時間がなかったんです」と笑顔を見せ、「ドラマだと、主役が登場しないシーンもよくあるんですけど、今回はほとんどないんです。僕が演じる陣内の子ども時代の回想シーンもあるんですが、回想シーンも僕が出てくるんですよ（笑い）」と振り返る。

　ドラマは兵庫・尼崎が舞台で、北村さんは全編で関西弁を披露している。2017年の朝ドラ「わろてんか」（NHK）でも関西弁を話す役を演じており、関西弁は堂に入った様子もあるが、実は苦手意識があるという。「テレビ、ラジオなどで関西弁に耳慣れしている方が多いので、ごまかしきれないんですよ。エセ関西弁はすぐにばれちゃう」と苦笑いを浮かべつつ、「でもそれを気にしていたら縮こまっちゃうので、開き直って演じました」と明かす。

　ドラマは尼崎を中心にオール関西ロケで撮影した。これまで尼崎を訪れる機会はほとんどなかったといい、「関東でいえば、川崎に近いイメージですね。工場があって、全国から労働者が集まって、パチンコ屋があって（笑い）」と印象を語る。「これは東京にはないなという雰囲気の商店街や、おいしいキムチを売っているお店などもあり、限られた時間で散策しました。僕は田舎よりも街が好きで、尼崎の街も初めてだったので楽しかったです」と語っていた。

　◇転機となった「わろてんか」「ちかえもん」

　近年、ドラマや映画などで一段と露出が増えている北村さんだが、ブレークの実感は「あまりないですね」という。「世間がそう思っていても、本人が同じ気持ちになれるかというと、同じ気持ちになる必要はないかな。通過点として言われるのはうれしいですけど、ブレークするために役者をやっているわけではないし、自分のペースで見据えていくことが大切ですよね。僕自身はあまり変わっていないかな」と持論を展開。

　謙虚な姿勢を崩さない北村さんだが、転機となった作品を聞くと「個人の問題として、苦労して大変だったなという作品がいくつかあります」といい、「わろてんか」「ちかえもん」（ともにNHK）の2作を挙げた。

　「わろてんか」では上方の落語家、「ちかえもん」では江戸時代の浄瑠璃語りで知られる竹本義太夫という、ともに伝統芸能に関わる役柄を演じた。「そういうのをきっと誰かが見ていてくれていたと、僕はずっと信じています。そういうのが積み重なっているのが、大きいのかな」

　「連ドラ主演は通過点」だという北村さんに、47歳にして次なる目標を聞くと「50歳まであと3年。何かできないかなと考え始めまして、ギター弾けるようになって、ライブやったり、筋トレしてマッチョになるとか、落語を始めるとか（笑い）。いよいよ人生折り返しなので、自分でプロデュースして芝居をするとかもいいですね」と笑顔を見せる。

　◇見どころは社会復帰にもがく姿

　ドラマでは元ヤクザという一見怖そうな役どころだが、コミカルな北村さんの演技でSNSでは視聴者の笑いが絶えない。「お母さんのすねをかじりながら、何とか社会復帰をしようともがいています。離婚した家族とやり直したいという思いや、時代が変わって弟分がYouTuberになっていて巻き込まれたり、陣内らしく体当たりで乗り越えていきます。見飽きない感じに仕上がっています」とアピールしていた。

　「ムショぼけ」はABCで日曜午後11時55分、テレビ神奈川で火曜午後11時放送。ABCでの放送後、「TVer（ティーバー）」「GYAO！（ギャオ）」で見逃し配信される。