カムカムエヴリバディ:さだまさしの声「元の台本から3倍増」 声だけの出演、演出が苦労を明かす

NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で平川唯一を演じるさだまさしさん (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で平川唯一を演じるさだまさしさん (C)NHK

 上白石萌音さん、深津絵里さん、川栄李奈さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「カムカムエヴリバディ」(総合、月~土曜午前8時ほか)。第5週では、祖母の安子(上白石さん)、母のるい(深津さん)、娘のひなた(川栄さん)の三代にわたって大きな影響をもたらすNHKラジオ英語講座「英語会話」、通称「カムカム英語」が登場した。その人気講師・平川唯一を演じているのは、朝ドラ初出演のさだまさしさんだ。「通常、撮影する際には台本通りで、大きく変えることはありませんが、実は今回は台本に大幅に内容を加えて、さださんの声や歌の部分を元の3倍ほど長く使っています」と語る、第5週の演出を担当した橋爪紳一朗さんに、声だけの出演となったさださんについて聞いた。

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 ◇さだまさしの登場は「ターニングポイント」

 さださんが演じる平川唯一は、終戦後まもなく放送されたNHKラジオ英語講座「英語会話」(1946~51年)、通称「カムカム英語」の人気講師で「カムカムおじさん」と呼ばれた。戦後の日本を明るくしたいという願いが込められた「カムカム英語」は、「証城寺の狸囃子(たぬきばやし)」のメロディーにのせたオープニングで人気を獲得。ブームの火付け役ともなった英語遊び(家族の情景を描いた英語ラジオドラマ)で、人々は英語を楽しく学んだ。全国でファンクラブが設立され、日本中に英語ブームを巻き起こした。

 第5週では、再婚を勧められ、娘のるいと引き離されそうになった安子(上白石さん)は、岡山を飛び出して大阪でるいと二人暮らしを始める。戦後の状況は厳しく、身も心も限界に近づいていく。そんな中、ラジオから証城寺の狸囃子(たぬきばやし)のメロディーにのって「カムカムエヴリバディ♪」が聞こえてくる。講師の平川唯一の優しい語り口に元気をもらった安子は、再び英語を学び始め、英語講座を心の支えにして戦後を生き抜いていく……という展開だった。

 平川のラジオ英語講座について、橋爪さんは「大阪に来て苦労している安子に、光明が差すきっかけとなるターニングポイント」だという。しかし、さださんは役柄上「姿をドラマで映さない、映せないという理由もあり、音だけでどれだけ演じることができるかという挑戦がありました」と語る。

 さださんの声を映像に落とし込み、編集すると、尺が少し足りないという話になり、「実は台本よりも、声や歌の部分を3倍ほど長く使っています。当時の音源は少ししか残っていないのですが、平川さんは自分が話す内容を事前に全部紙に書いておいてそれを読み上げるというスタイルで講座を続けていたので、それを元に原稿を作り、さださんにたくさん読んでいただきました。これによって、安子が聴いていた平川唯一の声を流し続け、(姿が見えない)さださんを印象付けたかったという狙いでした。実際、彼女の大阪での生活が軌道に乗り、少しの光が見えてくるきっかけの一つとして、さださんの声を生かせたと思います」と自信を深めた。

 ◇さだまさしの姿、なぜ出てこない?

 ここまでさださん演じる平川は、ドラマに姿を見せていない。そのことについて、橋爪さんは「ドラマは安子の物語であり、当然、安子はラジオから聞こえてくる平川の声しか知らないので」と説明しつつ、「最初は、『マイクに向かって話しているさださんの背中だけでも、印象的に映すという選択肢もないですか?』と(脚本の)藤本有紀さんと相談しました」と明かす。

 しかし、安子の救いのきっかけとなる英語会話は、テレビではなくラジオなので、最終的には「あえて」姿を見せない演出にしたという橋爪さん。

 「ラジオを聞いている安子しか映像は撮れないので、絵としては難しかったです。さださんの声のバリエーションや強弱を付けながら、いろいろな選択肢をひねり出しました」といい、「初めて台本を読んだとき、『これはどうすればいいのか?』というのが、正直な感想でした。さださん自身は、全く英語ができないとおっしゃっていましたが、何度も英語指導の方ともレッスンを重ね、優しい声色が聞こえてきました。同じ頃にセットも出来上がってきたことで、イメージすることができました」と語っていた。

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