オモウマい店:DNAは「名古屋のおもてなし文化」 会議より現場 プロデューサーが語る好調の理由

バラエティー番組「ヒューマングルメンタリー オモウマい店」のビジュアル=中京テレビ提供
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バラエティー番組「ヒューマングルメンタリー オモウマい店」のビジュアル=中京テレビ提供

 昨年4月に放送スタートし、想像をはるかに超える“びっくりなお店”を紹介するバラエティー番組「ヒューマングルメンタリー オモウマい店」(中京テレビ・日本テレビ系、火曜午後7時)。平均視聴率(世帯)は10%以上を連発し、昨年10月19日の放送回では14.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録するなど絶好調だ。名古屋発の同番組がなぜ注目を集めているか、笠井知己プロデューサーに話を聞いた。

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 ◇原点はローカル番組

 「オモウマい店」は、過去2回特番として放送された「ウマい!安い!おもしろい!全日本びっくり仰店グランプリ」をリニューアルし、レギュラー化。まだ見ぬ「オモウマい店(オモてなしすぎ オモシロくて ウマい店)」を紹介するヒューマングルメドキュメンタリー。中京テレビが制作するゴールデンタイムのレギュラー番組は、2004~2007年に放送されていた「サルヂエ」以来14年ぶりだ。

 実は「オモウマい店」には、原点となった番組が存在する。2015年にスタートし、現在も放送されている「PS純金(ゴールド)」(金曜午後7時)だ。東海3県で親しまれているグルメ情報バラエティーで、東海地方の安くてうまいグルメを取り上げる機会が多いのが特徴。同番組に演出、プロデューサーとして5年近く関わってきた笠井さんは「お客様のために安くしすぎる、サービスしすぎる店主さんを突き詰めていくと、そこに人間ドラマの面白さがあることに気が付きました」と話す。

 「『PS純金』という番組は『PS』というシリーズで、20年以上名古屋で続いています。グルメに対する見せ方や派生する人間ドラマを『PS』シリーズで培ってきたので、『オモウマい店』の番組構成は、中京テレビで脈々と受け継がれてきたもの」だという。

 また飲食店の驚くようなサービスや、他人への気配りにスポットを当てる、型破りな番組が誕生した背景には、名古屋という地域性も関係ありそうだ。

 笠井さんは「名古屋には喫茶店のモーニングという文化があり、コーヒーを頼むとトーストと卵、お好み焼き、うどん、ドーナツなどがサービスで付いてきます。こうした東海エリア特有のサービス精神が、番組のDNAになっています」と分析。「名古屋のテレビ局がオリジナル番組を全国に発信することができ、この地域に住んでいらっしゃる方に勇気を与えられたらいいなと思っています」と語った。

 ◇ネタ切れの心配は?

 番組の一番の魅力はもちろん、ボリュームたっぷりにもかかわらず安価な料理だ。番組作りのこだわりとして、笠井さんも「まずは料理がおいしそうか、食べに行きたいか、という部分を大事にしています」と語る。

 このような店舗は、主にクチコミから探しているといい、「ネットで『あそこの料理がすごい』『皿からこぼれている』といった情報を見たり、キーワードで『皿 あふれる』『ラーメン 盛りすぎ』『ソフトクリーム 長い』などリサーチしています。最近は視聴者の方から情報を募っていますので、その情報を元にお店に行くこともあります」という。

 さらに「目的のお店に行く間に、外観に雰囲気がある別のお店を見つけ飛び込みで行ってみたりすることもあります。そういうリサーチをやり続けているうちに、スタッフが『2階が自宅のお店は安いところが多い?』『店前の自販機が安い店は料理も安い?』といった法則を発見し、その企画を行ったこともあります。会議で企画を決めるというより、現場で感じて着想したことをやっているのがいいのかもしれないですね」と語る。

 ネタ切れは心配ないのか聞くと、「良く言われます(笑い)。でも『PS純金』を6年間、愛知、岐阜、三重でやっていてまだネタが尽きていないので、47都道府県に広がるので、まだまだいけると思っています」と話していた。

 ◇店主の頑張る姿届けたい

 一方、個性的な料理を提供する個性的な店主たちにも注目が集まっており、ある店主は番組に複数回出演し、ちょっとした番組の名物キャラクターにもなっている。店主にスポットを当てるのも「『PS純金』で、お客様のために安くしすぎたり、サービスしすぎる店主は、どこか人間的に面白い部分や、優しい部分などがある」と気が付いたことがきっかけだ。

 笠井さんに印象深かった店主を聞くと、これまで3回放送した静岡県沼津市のスパゲティー店「夢の中へ」を挙げ、「真夏にお店のエアコンが壊れ、新しいエアコンが届くまで10日間ぐらい店主が頑張っていた様子を9月に放送しました。熱い中頑張っている姿を真摯(しんし)に伝えたつもりですが、その店主がポジティブな方だったので、多少の笑いを交えており、視聴者の反応はどうだろうと思いましたが、全国から頑張っている店主の方に感動しましたという手紙が届いたそうです」と振り返る。

 「番組出演でお客さんが殺到してご迷惑をおかけすることもありますが、『番組に出て良かった』と言っていただけます。この番組に出演される店主は年配の方が多く、『今が一番輝いている』とうれしい言葉をいただくこともあり、何歳になっても人生を頑張ろうとする姿を届けることができ、私もうれしいです」と声を弾ませていた。

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