ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
劇場版アニメ「トイ・ストーリー」シリーズなどのディズニー&ピクサーの最新作「私ときどきレッサーパンダ」が、3月11日からディズニーの公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信される。同作を手がけるのが、デビュー作の短編アニメーション「Bao」で、第91回アカデミー賞の短編アニメーション賞に選ばれたドミー・シー監督だ。タイトルの通り、同作の主人公は、時々レッサーパンダになってしまう思春期の女の子。そもそも、なぜレッサーパンダだったのか? なぜ変身してしまうのか? シー監督、「トイ・ストーリー」シリーズなどピクサーの初期作品にも携わってきたリンジー・コリンズプロデューサーに製作の裏側を聞いた。
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シー監督 自分自身の経験から来ているんですよね。私自身、10代のころ、母親にとってはパーフェクトな娘だったし、自分の人生をしっかりコントロールできていると思っていたら、ある日突然、思春期がやって来た。体つきが変わってきて、毛も濃くなって、おなかがいつも減っていて、感情的になって、母親と毎日けんかするようになった。あの変化が一体どういうことなのか掘り下げたいと思ったんです。恐らく皆さん同じように経験していることだから、そこに普遍性もあると感じました。
シー監督 元々レッサーパンダが大好きということもあるのですが、思春期のメタファーにレッサーパンダがぴったりだと思ったんです。毛がもふもふしていて、ちょっと動きがぎこちなくて、体の色が赤い。私にとって「赤」は思春期を象徴する色なんです。初潮をイメージさせる色でもありますし、私たちは恥ずかしかったりとか、怒ったり、学校の廊下で好意を持っている人と会ったりすると赤くなりますよね。自分をコントロールできない状況の女の子が変身する動物として、赤いレッサーパンダがぴったりだと思ったんです。
コリンズさん 私は、ピクサー内でプレゼンする前の企画開発の段階からこの作品に関わっていました。最初の構想の種の段階から、ある程度プレゼンできるようになるまでの過程を見てきたのですが、何より印象的だったのは、ドミーがキャラクターからこの物語を作り上げていったことです。主人公のキャラクター性はもちろん、ほかのキャラクターとの関係性も含めて、それがどんなふうに進化していくのかを監督がはっきり分かっている。それを彼女がプレゼンテーションしていたことに感心しました。
コリンズさん ケースバイケースではありますが、「オモチャが生きていたら?」というアイデアから始まった「トイ・ストーリー」のように設定から入っていくことも多いです。それに対して、主人公のキャラクターから始めていくのはまた違ったやり方で、どちらがいいということではありません。ただ、ストーリーを開発していく中で「主人公が誰なのか」を見極めることが実は一番大変だったりするんです。だから、ドミーのようにキャラクターありきで、誰が何をやるのかが分かっているということは、すでにかなりの作業ができてしまっているということになるんです。
シー監督 作品全体から日本のアニメの影響を受けていることを感じてもらえるのではないかと思います。例えば、顔の表情ですね。メイがショックを受けたり、好意を持っている男の子を目にした時に「美少女戦士セーラームーン」のように目にお星様が浮かんだりする。
シー監督 また、変身するということ自体、その表現の方法も日本のアニメの影響が大きいです。例えば「らんま1/2」「フルーツバスケット」も人間が動物に変身する。変身した状態と人間の状態が行ったり来たりする感じもそうです。今作では、変身する瞬間を隠すためにアニメーターたちが遊び心を持って煙のエフェクトを作っていましたが、そうした演出も日本のアニメの表現ですよね。あとは、終盤でメイが月をバックにジャンプするシーンがあるのですが、それは細田守監督の「時をかける少女」のオマージュでもあります。
シー監督 日本のアニメの若い女の子たちは、すごくエネルギーがある。強い少女が主人公の作品がたくさんあって、私はそうした作品を子供のころに見て育っているので、大きなインスピレーションになっています。
シー監督 初めての長編映画だったので、全てが大きな挑戦でした。スケール、製作にかかる時間、スタッフの数なども短編とは違う。ストーリーも複雑で、母と娘の関係性をどんなふうに落としていくのか。みんながハッピーになってしまうと、現実的じゃない。どうやって見る人が満足のいくような終わり方にするのか、ということが一つの大きな挑戦でした。
コリンズさん ピクサーとしては、パンデミック中に制作したことが一番の挑戦でしたね。ただ、ピクサーの初期のころを思い出すような感覚もあったんです。みんながどんなふうにやっていけばいいか分からなくて手探りでやっているような感覚です。ドミーの初めての作品で、みんなが現場にいて一緒に作っていくピクサーのやり方ができなかったことは残念だったけど、逆に何が起きるか分からない状況だったからこそ得られるエネルギーもあった。世の中がパンデミックで揺れている中、リモートでスクリーン越しにみんなの顔を見ながら笑い合ったりして、一緒に物作りができた。あの感覚、精神みたいなものはピクサーの初期のころに通じるし、懐かしいなと改めて思いました。
シー監督 自身の内なるごちゃごちゃした野生動物を、人生のごちゃごちゃを受け入れて、「完璧でなくてもいいんだ。それで大丈夫なんだ」と思えるようなきっかけにこの作品がなればと思っています。
2024年11月22日 13:00時点
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