モンスター
#10 信じた者たちへ
12月16日(月)放送分
特撮ドラマ「仮面ライダー」シリーズで、平成期に数多くの仮面ライダーのスーツアクターを務め、“ミスター平成仮面ライダー”とも呼ばれる高岩成二さんの主演ドラマ「グッドモーニング、眠れる獅子」が、映像配信サービス「ひかりTV」で配信された。今作には、高岩さんがスーツアクターとして共にライダーを演じてきた「仮面ライダー剣(ブレイド)」の剣崎一真役の椿隆之さん、「仮面ライダーディケイド」の門矢士役の井上正大さん、「仮面ライダーゴースト」の天空寺タケル役の西銘駿さん、「仮面ライダー鎧武/ガイム」の葛葉紘汰役の佐野岳さんも出演。“”ライダー俳優”4人に高岩さんへの思いや共演エピソードを聞いた。
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ドラマは、50歳を過ぎて入社してきた新人の芸能マネジャー・九條和真が、ヒロインの売れないアイドル・綿貫玲実を狙う謎の集団・グリムリーパーズと戦いを繰り広げる姿を描く。高岩さんが玲実に煙たがられ、邪険にされている九條、アイドルグループ「日向坂46」の渡邉美穂さんが玲実を演じているほか、椿さんが木岡マサル役、井上さんが平賀ユウ役、西銘さんが羽山直斗役、佐野さんが羽山遼介役で出演している。
井上さん 当時は僕らが変身したら高岩さんに交代し、自分たちはロケバスで待機だったので、実は高岩さんと直接共演はおろかバトルもやったことがありません。今回は高岩さんとアクションができて、高岩さんを殴れるということで、オファーを受けさせていただいた次第でございます(笑い)。本人は面がないと恥ずかしいとか言っていたけど、表情も完璧な芝居をされていました。
西銘さん 高岩さんが本当にカッコよくて渋くて、重みのある芝居をされているのを見て、(アクションも素面での芝居も)『全部できるのすごいな』って思いました。
佐野さん 高岩さんの初“仮面オフ”主演作に出演できることが決まった際は、幸せだなと思いました。かねてから坂本監督とも「アクションをやりたいね」というお話もさせていただいていた中、こういうかたちで実現できたのは良かったです。
椿さん (スーツアクターとして)いろんな仮面ライダーを演じていらっしゃった高岩さんという、すごいカメレオン俳優を相手に芝居をするのは緊張しましたけど、楽しくやらせていただきました。
井上さん 不思議な気持ちでした。また仮面ライダーという正義の味方役をやられていた方が、芸能マネジャー役を演じているのを現場で見て、こういう感じなのか、こういうキャラクターなのかというのを相手からもらいながら芝居ができたのは面白かったですね。
佐野さん 不思議な感覚ですね。作品で一つのキャラクターをお互い作り上げていった関係性だったので、対峙した時に“もう一人の自分”のような感覚が頭の中にあり、普通の共演というレベルじゃないのかなというのは今回、改めて感じました。
西銘さん (自分の)アイドルストーカー役も含め、良い意味で仮面ライダー(のイメージ)を払拭(ふっしょく)できるような作品で、頑張るぞという思いで現場に向かいましたが、いざ高岩さんと対面したら、敵側の気持ちが分かったというか。(高岩さんに)にらまれているのがちょっとショックな感じは少しありました。
井上さん そうだよね。向こうが正義の味方でこっちは悪だからショッカーみたいな感じ。こっちは成敗される側だしね。
西銘さん 「そっちにいたのに……」という違和感だったのかな?
椿さん 対面したとき、それこそ“一心同体”でやっていたからこそ、やっつけに行かなきゃいけないというのに何か申し訳ない気持ちになりました。
西銘さん 昼休憩のとき、高岩さんが休憩後にアクションシーンがあるからと弁当を二つ持ってきて、「たくさん食べて頑張る」と言いつつ、3口食べて爆睡していました(笑い)。
井上さん せりふ量も主役なので尋常じゃないですし、アクションもその場その場ですごい手数を覚えなければということで、相当過酷だったのでは。
佐野さん 年齢を感じさせないというか。高岩さんと「(鎧武から)10年近くたっているのに変わらないですね」という話をしましたけど、むしろキレが増しているのではというくらい今回のアクションもキレがすごいです。
井上さん アクションも、普通のアクションじゃないものにトライされていて。いわゆるヒーローアクションをやればいいのにと思ったし、こういうオマージュだったら許されるのかもしれないのに、今まで積み上げてきたものをやらず新しいアクションに挑戦する。カッコいいですね。
西銘さん ちょっとくやしいのが僕だけ8割玲実たん(渡邉さん)という感じで、まだ恩返ししきれていないというか……。
井上さん この芝居中、高岩さんのことではなく玲実たんのことばかり考えていた、と。
西銘さん 役柄としてそうなので、僕だけちょっと高岩さんへの思いは燃え尽きていない状態かも。玲実たんに対しては命、燃やしていましたけど(笑い)。
西銘さん 1日目は、椿さんはナイフを研(と)いでいるし、井上君はメークで血のりを付けているはずなのに、そのときめちゃくちゃ怖くて本当に血が出ているのではと思うぐらい怖かった。
佐野さん 優しいお兄ちゃんいたでしょう(笑い)。
西銘さん 岳さんだけは優しいと思っていました。
井上さん (佐野さんは)現場でコミュニケーションを積極的にとっていてすばらしいなと思いました。(西銘さんは)最初ずっと「玲実たん」とか言っているから、そういう子なのかなって(笑い)。
西銘さん 違います!
井上さん 黙ってナイフを研いでいる椿君は何を考えているのだろうって。画力が個々にあってキャラクターも全然違うので、そういうところも見どころなんじゃないですかね。
佐野さん 4人が対峙するところはカッコいいシーンだと思いました。
井上さん 特に岳君のキャラクターとバチバチやっていたときは仮面ライダーを忘れて役に取り組めて良かった。ちょっと気を抜くと仮面ライダーだと思っちゃうからね。春映画かなって(笑い)。
佐野さん そうですよね。高岩さんもいるしアクションも多いし、知っているスタッフさんもいらっしゃるという環境は。ただ別作品だからこそ見られるようなシーンが盛りだくさんで、高岩さんが素面でアクションするところもそうですし、今まであったヒーローのイメージなしで楽しめる作品になっているのではと思います。
椿さん 同じシリーズの作品で出ていたというところで、背負ってきたものが“一緒”だと思っています。現場入りしたときから妙な安心感はありました。
井上さん:控室がおしゃれなバーでホストクラブのような雰囲気だったのですけど、椿君がパッと入ってきたらホストにしか見えなくて(笑い)。変なヤツしかいないですからね、この4人は。正義の味方をやっていた人が悪役をやる。それぞれの味は出ているのではないでしょうか。
椿さん 「ドラゴンボール」の孫悟空のように、どんなピンチになっても必ず地球を救ってくれる。そういう存在です。
佐野さん シンボルというか象徴な気がします。高岩さんという存在があるから僕らも(仮面ライダーとして)成り立っていたわけだし、高岩さんにそれぞれのシリーズのイメージもあるだろうし、一つの象徴になっている存在なのかなと思います。
西銘さん “お父さん”みたいな感じですね。僕がまだ「どうやったらいいのだろう」「どういう動きをしたらいいのだろう」というときに、高岩さんが先陣を切って天空寺タケルというキャラクターを体現し初めて形として見せてくださいました。いろいろサポートしていただきつつ1年半演じて、プラス仮面ライダーを離れてもまた戻ってきてという感覚は、俳優としてのお父さんだなって。
井上さん 高岩さんがいなかったら、作品ごとに違うスーツアクターの方だったとしたら多分、スーツアクターという言葉を知らない人がたくさんいたのではと。高岩さんが平成仮面ライダーに入り続け、主役ライダーの演じ分けをしている。スーツアクターの可能性を広げてくれたのが高岩さんなのではと思います。そしてまた違う道でもプロフェッショナルな高岩さんを見ると夢がありますよね。人は何歳になっても挑戦できるという思いにさせてくれるのが今の高岩さんだと思うので、今回は勉強させていただきました。(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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