全領域異常解決室
第7話 すべてお話します 物語はここから始まった
11月20日(水)放送分
シンガー・ソングライターのUruさんが歌う、TBS系「日曜劇場」枠の連続ドラマ「マイファミリー」(日曜午後9時)の主題歌「それを愛と呼ぶなら」。自ら作詞・作曲をし、ドラマのために書き下ろしたバラードで、佳境を迎えたドラマの展開と共に話題を呼んでいる。2021年には、7月期ドラマ「推しの王子様」(フジテレビ系)の主題歌「Love Song」を手がけるなど、最近は“ドラマ主題歌の常連”としても注目されているUruさんに、楽曲制作の裏側やドラマとの親和性などについて聞いた。
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Uruさんが日曜劇場の主題歌を担当するのは、2020年1月期に竹内涼真さん主演で放送された「テセウスの船」の主題歌「あなたがいることで」以来2度目。「歴史あるこの日曜劇場というドラマの主題歌を2回も歌わせていただけて、本当に光栄なことだと思いましたし、うれしかったです」と喜びを語る。
「マイファミリー」は、鳴沢温人(二宮和也さん)、未知留(多部未華子さん)夫妻の娘・友果(大島美優さん)が誘拐される事件をきっかけに、家族にまつわる人間模様が描かれるファミリーエンターテインメント。Uruさんは、誘拐事件が連続して起こるといった「細かいストーリー展開までは知らなかった」そうだが、「先に物語全体のプロットを読ませていただいて、ストーリーを体に染み込ませつつ」曲を作り始めたという。
「ドラマチームの方々から、『前向きになれる曲』『背中を押す曲』『広い意味での愛の歌』というリクエストがあったので、そういったことを曲調にも歌詞にも反映できるように意識して、バラードはバラードでも、唇を結んで必死に立ち向かっていく姿を想起できる曲、聴き終わった後に『よし』と一呼吸置いて頑張れそうな曲をイメージしました」と制作する際の心情を明かす。
特に歌詞については、壊れかけた家族の絆を再認識するというドラマのテーマに沿った形で、「再生、再起の曲」として作ったという。「仕事一筋の人間だった主人公が、事件をきっかけに家族との時間やその大切さに気づき、いろいろな出来事にもまれながらも、家族や、これまでないがしろにしてきた周りとの絆を深めていく……という心の流れをどうやって曲にしようかな、と考えました。大切なものを失ってしまう前に、本当に自分にとって必要なものに気づけたという気持ちと、それを守りたい、救いたい、一緒にいたいんだという強い気持ちを歌詞にしたいと思いました」と語る。
編曲は、4人組バンド「Mr.Children」のプロデュースなどでも知られる小林武史さんが担当した。「とてもすてきなアレンジにしていただいて、とてもうれしかったです。オケ(伴奏)にも、目立たないけれど、『その音がないと何か足りない』と気づくような細かな動きがあるんです。細かい隠し味のような音がちりばめられていて、『こういうアレンジってどうやって思いつくんだろう』と何度も聴いてしまいます」と敬服しつつ、音作りのポイントを明かした。
ドラマでは毎話、「それを愛と呼ぶなら」がクライマックスシーンを彩っている。かかるタイミングや効果について、Uruさんは「ドラマでは、とてもハラハラドキドキするシーンが続きますが、時折、家族の愛や友情など、温かく、じんわりとするシーンもあって。そんなときにこの曲が流れてくると、シーンと相まって、『少しの間ホッとできる』というコメントを、ドラマを見ている方からいただけることもあります。ドラマに寄り添うことができる曲になってくれていたらうれしいなと思っています」と語る。
特に曲がかかって印象的だったシーンを尋ねると、Uruさんは「第1話」を挙げた。娘の友果が誘拐され、警察を排除するように犯人から要求されていた鳴沢夫妻が、ネットのライブニュース番組でそれを公表し、温人が「娘を愛しています。娘を返してください」と目を潤ませながら訴える場面だ。そこには、机の下でしっかりと手をつなぐ夫婦の姿があった。
「緊張しながら聴いていたこともあって、初回オンエアはとても強く印象に残っています。娘を救い出したい父親の顔と、家族の絆がもう一度結ばれた瞬間というか……。とてもすてきなシーンで楽曲を流していただきました」と喜びをにじませる。
Uruさんは、ドラマ主題歌への書き下ろしを何度か経験する中で、「歌詞を書くことが毎回とても難しいです。ドラマを制作している皆さんの“こんな作品にしたい”という思いを共有できていないと主題歌も浮いてしまうと思っているので、何度も台本を読んだり、やりとりをさせていただいて、自分の中に染み込ませていく作業をします。今回も歌詞は何度も書き直しました」と明かす。
ドラマタイアップがない楽曲との違いは、「自由に作る楽曲は、歌詞が先だったり、雰囲気をある程度決めてから制作に入りますが、主題歌として楽曲を制作する際は、作品に合ったメロディーを先に作ることが多いです。『それを愛と呼ぶなら』は、“前向きな曲”というリクエストをいただいていたので、曲調からもそれを感じられるようにとメロディーを作り、『ここにはこの言葉を使いたい』という単語を決めていくところから、制作を進めていきました」と振り返る。
毎週、ドラマの放送をチェックしているというUruさん。ストーリー自体にも引き込まれているようで、「“ノンストップ”と銘打っている通り、毎話あっという間に過ぎていきます。ずっとドキドキしながら見ているので、CMに入るとやっと落ち着いて呼吸ができるような感覚で(笑い)。次から次へと展開していく物語がとても面白いですし、主人公の鳴沢温人が自分の身を振り返り、今までないがしろにしてきたものを取り戻していく姿に心を打たれたり。無意識のうちに応援しながら見ています」という。
特に共感を覚える人物を尋ねると、「奥さんの未知留ですかね……。娘の友果を誘拐から救い出せた後も、夫の様子がおかしかったら絶対に心配になるだろうし、警察に任せて、夫には事件に関わらないでほしいと思う気持ち、でも自分たちが困ったときにはみんなに助けてもらったんだから……と思う気持ちも『そうだよなあ』と思います」と感情移入しているという。さらに「最後はみんながホッとできたらいいなと思いながら見ています。特に、身重の未知留があの環境にいることがとても心配なので、早く解放されてほしいなと思います」と語る。
ドラマはますます緊迫感を増し、盛り上がるを見せる中、Uruさんは「今後もノンストップな展開が続いていきますので、目を離さず、犯人の考察をしながら、主題歌も合わせて楽しんでいただけたらと思います」と視聴者へメッセージを送る。
Uruさんは、デビュー5周年を迎えた2021年に自身初のコンサートツアーを開催、今年7月からは、全11公演の全国ホールツアーの実施を予定している。「昨年11月に、デビュー前からの目標だった東京国際フォーラム・ホールA(東京都千代田区)のステージに立つことができたので、今は新しい目標を探しているところです。まずは、7月から始まる、自分にとって最大規模の全国ツアーを無事完走できるように頑張ります」と意気込みを語った。
(取材・文/水白京)