佐藤元:アニメ「よふかしのうた」 毎話挑戦 “夜守コウらしさ”追求 「中学生なのに人間ぽくない」

「よふかしのうた」で主人公・夜守コウを演じる佐藤元さん
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「よふかしのうた」で主人公・夜守コウを演じる佐藤元さん

 「だがしかし」などのコトヤマさんの人気マンガが原作のテレビアニメ「よふかしのうた」が、7月7日からフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送される。同作で中学2年生、14歳の主人公・夜守コウを演じるのが、今年発表された「第16回 声優アワード」の新人男優賞に選ばれた佐藤元さんだ。佐藤さんはコウを「中学生なのに人間ぽくない」と感じているといい、“コウらしさ”を表現すべく、毎話挑むような気持ちで収録に臨んでいるという。演技のこだわり、収録の裏側を聞いた。

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 ◇「よふかしのうた」に共感と憧れ

 「よふかしのうた」は、2019年8月から「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中のマンガ。不眠が続く中学2年生の夜守コウと美しい吸血鬼・七草ナズナを巡る“よふかし”ラブストーリーが描かれている。夜に眠れない日々を送るコウは、初めて誰にも言わずに夜に出かけた日、吸血鬼のナズナに出会う。コウは、夜の楽しさを教えてくれるナズナに魅了されていく。アニメは、「<物語>シリーズ」などに参加してきた板村智幸さんが監督を務め、「東京リベンジャーズ」などのライデンフィルムが制作する。

 原作のタイトルの由来は、ヒップホップユニット「Creepy Nuts」の楽曲「よふかしのうた」で、同楽曲がアニメのエンディングテーマとなることも話題になっている。以前からCreepy Nutsの大ファンだったという佐藤さんは、アニメの出演が決まり、「声優を頑張ってきてよかった」と喜んだという。

 「僕は『よふかしのうた』でCreepy Nutsさんの曲を知ったのですが、同じタイトルのマンガがあることを知って、実際に読んだらすごく面白くて。もし、アニメ化されたら『やりたい』と思っていたので、出演が決まった時は一人でガッツポーズをしてしまうぐらいうれしかったです」

 原作を読んだ佐藤さんは、コトヤマさんが描く“よふかし”の世界に共感したという。

 「第1話はコウが夜中に一人で家を出るところから始まるのですが、家のドアをゆっくり閉めて、カチャン!と音が鳴った時に『ヤバい! ばれるかもしれない!』という感じとか、外に出た瞬間に世界中が自分だけのものになったようなあの感覚はその時にしか味わえないもので、『あるある、分かるな』と思いました」

 吸血鬼のナズナに出会ったコウは、「人間は吸血鬼に恋をすると、吸血鬼になれる」ということを知り、夜を自由に楽しむ吸血鬼になりたいと願うようになる。

 「いいな、俺も人間辞めたいって(笑い)、共感から憧れになりました。吸血鬼、いいな!って。人間、生きていると、息苦しいところってあるじゃないですか。吸血鬼になれた時に、そういうものから全部解き放たれる感覚、ただ夜を楽しむために生きる。この感覚になれたらどれだけ自由だろうと憧れました」

 ◇コウは難しくて繊細 思春期らしい語尾にこだわり

 コウは、勉強も学校生活もそこそこにこなせる普通の中学生のように見えて、吸血鬼のナズナに会っても怖がることなく受け入れる“普通ではない”部分もある。佐藤さんはコウを「中学生なのに人間ぽくないな」と感じたという。

 「コウくんは、僕がこれまで演じさせていただいたキャラクターの中でも、ものすごく難しくて繊細な子。自分の中でコウというキャラクターがなかなか定まらない。思春期だからこその反応もするのですが、人間ぽくないところもある。この絶妙なあんばいを、監督とも打ち合わせをしながら毎回収録をしてるので、とても難しいです。一つのせりふでも、いろいろなパターンを録(と)って、音響監督の木村(絵理子)さんが丁寧に丁寧に綱渡りをするかのようなディレクションをしてくださって、収録できています。毎話毎話、精神がすごくすり減りました」

 中学2年生というコウの年齢感を表現することも大事にしている。

 「そこが一番繊細で難しかったです。ちょっと声を高くしたら幼くなりすぎちゃうし、ちょっと低くしたら高校生っぽくなっちゃう。どのラインを狙って当てるのが一番いいのか、毎回苦労しながら演じさせていただいています。コウの語尾の扱い方も意識しています。思春期ならではというか、『〇〇じゃないし……』とボソボソと投げ捨てるような語尾は、自分の中でも新しい表現だなと思います」

 ◇意識を変えた松岡禎丞の言葉 「マイクが怖かった」時期も

 2021年に「弱キャラ友崎くん」で初めてテレビアニメの主人公を演じ、声優アワードで新人賞に選ばれた佐藤さん。「よふかしのうた」でも、コウというつかみどころのない難しいキャラクターにストイックな姿勢で挑んでいるが、「最近、やっと現場でマイクが怖くなくなった」「それまで自分のせいで作品が壊れたらどうしようと怖かったんです」と本音をのぞかせる。変化のきっかけとなったのが、同じ所属事務所の先輩でもある松岡禎丞さんの言葉だったという。

 「松岡さんが『アフレコのテストの時は120%で頑張ればいい。リテークをもらったら、そこからはプロの仕事だから。作品をよくするために言われていることだから、そこからプロとしてお仕事をしなさい』と。そう言われて、すごく気が楽になって、そんなスタンスでやればいいんだって。安心してマイクの前に立つことができるようになりました」

 「よふかしのうた」では、人が夜更かしをする理由を「今日という日に満足していないからだ」とナズナが語る印象的なシーンがある。佐藤さんは作品に関わり、「今日という日に満足できたか」と自身に問いかけるようになったという。

 「満足できる日は少ないんですけど(笑い)、増やそうと思っています。もうちょっとポジティブになろうかなと。『よふかしのうた』が自分の心境にリンクすることも多いんです」と語る。佐藤さんが挑んだコウの魅力をアニメで感じたい。

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