東宝:10周年のTOHO animation アニメ変革の時代を牽引 長く愛される作品が生まれる裏側

TOHO animationの10周年を記念したビジュアル
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TOHO animationの10周年を記念したビジュアル

 東宝のアニメレーベル「TOHO animation」が誕生から10周年を迎える。同レーベルは、2013年4月クールの「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」でアニメに本格参入し、「僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)」「弱虫ペダル(弱ペダ)」「ハイキュー!!」など数々のヒット作を手がけてきた。直近では「SPY×FAMILY」「呪術廻戦」の大ヒットも記憶に新しい。この10年で、アニメを取り巻く状況は、大きく変化した。変革の時代に、TOHO animationは、どのようにヒット作を生み出してきたのだろうか? TOHO animationの製作プロデューサーの山中一孝さん、宣伝プロデューサーの下山亮さんに聞いた。

 ◇誕生の経緯 後発のようで実は古株?

 TOHO animationは、マンガやゲームなどのアニメ化、オリジナルアニメの企画を立ち上げるだけでなく、宣伝なども担っている。アニメ制作会社のようにアニメを“制作”するわけではないが、“製作”としてアニメを企画・プロデュースする集団だ。山中プロデューサーが説明する。

 「制作会社さんと相談しながら、監督、脚本、キャラクターデザインなどのスタッフィングを決め、原作がある作品であれば、出版社さんに企画として持ち込み、許諾をいただくのがファーストステップです。製作委員会というシステムがありますので、出版社さんやテレビ局さんなどのパートナー企業との協業で、ビジネスをいかに大きくしていくかを考えます。東宝は映画会社なので、もちろん、映画館で上映することも目指しています。」

 TOHO animationは、いわゆる深夜アニメを多く手がけている。深夜アニメは1990年代後半から広がり始めたと言われており、2012年に誕生したTOHO animationは後発に当たる。そもそもどういった経緯で誕生したのだろうか?

 「深夜アニメのビジネスモデルは、TOHO animationが発足した2012年当時の10年くらい前は、パッケージをビジネスの柱にしていました。TOHO animationのスタッフのほとんどは東宝の映像事業部という部署に所属しています。この部署の屋台骨は、DVDなどのパッケージのセールスになります。昔はレンタルビデオがメインで、それが頭打ちになってきたのですが、2000年代頭にビデオからDVDに切り替わったタイミングで、パッケージが絶好調の時期がありました。あの時代、映画のDVDがすごく売れたんです。それがかなり落ち着いてきたので、新たな収益源として、よりコアなファンに向けてアニメのパッケージを販売していくために生まれたのがTOHO animationです」

 東宝は2012年以前も劇場版アニメ以外のアニメを手がけてきた歴史がある。後発のように見えるかもしれないが、実は1980年代からアニメを手がけていた“古株”である。

 「その昔、1985年発売のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)『幻夢戦記レダ』などがありますし、1980年代にはテレビアニメ『タッチ』『陽あたり良好!』などもやっているのですが、その後、途切れています。TOHO animationの前にノイタミナ(フジテレビの深夜アニメ枠)の作品のパッケージを手がけていて、その流れでレーベルができました」

 ◇エバーグリーンなタイトルを生み出す

 2016年にスタートした「ヒロアカ」の第6期、2013年にスタートした「弱ペダ」の第5期が10月から放送される。いずれも1年続けて放送するわけではなく、分割して放送してきたが、長く愛されるシリーズに成長した。TOHO animationは、長い期間を掛けて、丁寧に作品と向き合ってきた。

 「映画会社として1年間の編成の中で土台となる作品があり、それは『ドラえもん』『名探偵コナン』『クレヨンしんちゃん』『ポケモン(ポケットモンスター)』などのアニメなんです。こういったエバーグリーンなタイトルが、屋台骨を支えています。長く続けるコンテンツを生み出すことをアイデンティティーとしていきたいと考えています」

 「ヒロアカ」「呪術廻戦」などは劇場版も大ヒットするなど大きなコンテンツに成長した。劇場版に力を入れるのは映画大手ならではだろう。

 テレビアニメを分割して放送するのには理由がある。じっくり制作することで、高いクオリティーを維持できる。

 「クオリティーを一番大切にしています。1年間、アニメを作り続けるのはものすごく大変ですし、そのためのシステムを構築しなくてはいけません。カロリーコントロールも必要です。逆に高いクオリティーを安定して提供していくには、作品を分割せざるを得ない。1クールの深夜アニメが増えてきた中で、ファンの目がどんどん肥えています。発足当初、2012年はいわゆるキッズ向けのアニメ、深夜アニメには大きな隔たりがありました。今はボーダーレスが進んでいます。深夜アニメのクオリティーで長く続けていくことにチャレンジしないといけません」

 分割すると当然、放送されていない期間に“間”ができ、ファンが離れてしまうことも考えられる。放送中だけでなく、放送されていない期間にも、いかに作品をアピールできるかが、宣伝の腕の見せどころだ。元々、“実写映画・DVDの宣伝畑”出身の下山宣伝プロデューサーは、作品を愛し続けてもらえるような施策を打ち出してきた。

 「映画宣伝に関してはノウハウがありますが、テレビアニメは毎週放送するものですし、どうやって向き合うか?を考えてきました。正直、映画とは違いますし、分からないところもあったので、丁寧にいろいろなことにチャレンジしました。クリエーター、声優の皆様など、周囲の方々の力を借りて、作品の魅力をしっかりお伝えするなど丁寧な施策を展開することを心がけてきました。それは今も大事にしています。そういった方針が、長期シリーズと合致した部分もあると思います。第1、2期とあって、放送の間が空くこともあります。その間をどうするのか?ということも考えなくてはいけません。イベント、商品などのほかにもアクションを起こすことで、長く楽しんでいただけるようなバランスを考えています」

 ◇コア、ライトのボーダーレス化 10年後は?

 この10年で、配信が台頭するなど、アニメを取り巻く状況は変わった。さらに10年後、また状況が変化するかもしれない。

 山中プロデューサーは「我々はまだまだアニメのことを理解できていないと思っています。ファンの皆さんのこともまだまだ分かっていません。貪欲にいろいろなジャンルにチャレンジしていかないといけません。素晴らしい原作をお預かりして、それなりに大きく育ててお戻しするという好循環が生まれてきているとは思いますが、オリジナルのアニメはまだまだです。映画として大きな展開ができる作品をいっぱい作っていきたいですし、まだまだチャレンジしていきます」と意気込む。

 「SPY×FAMILY」のようにコアなアニメファンから子供まで楽しめる作品が生まれ、深夜アニメはさらなる広がりを見せている。下山宣伝プロデューサーは、この10年の変化を「10年前、さらにその前と比べると、コア層とライト層のボーダーレス化が進み、アニメがより広い層に楽しんでいただけるようになっています。今までアニメを見ていなかった人も娯楽として楽しんでいると思います」と分析。

 下山宣伝プロデューサーは、10年後を見据えて「この先10年のことは、分からないところもありますが、皆さんのタッチポイントも変わってきていますし、やれることは増えていくと思っています。作品にとって何がベストなのか?を考え、時には外してみたり、さらに何かプラスで提供したり……と皆さんに作品を楽しんでいただくきっかけを作っていきたいです。楽しんでいただくポイントを増やしていくことを目指しています」と語る。

 ファンに作品を楽しんでもらうきっかけを作る目的で、10周年記念プロジェクトを始動した。その一環として、特別番組「TOHO animation 10周年大感謝祭」が9月25日、YouTubeの「TOHO animation チャンネル」で無料配信される。約10時間にわたって配信する大型番組だ。

 下山宣伝プロデューサーは「いろいろな切り口で10時間の番組をやります! 声優さんが出演して個々の作品を扱う番組があれば、スタジオのスタッフやプロデューサーがアニメ制作について語る番組もあって、アニメをいろいろな角度で楽しめる一日になると思います。これまでの作品を楽しんでいただきつつ、10月以降、さらに今後の作品も知っていただきたいです。何よりも皆さんへの感謝を込めた番組になります。感謝祭当日はもちろん、これから先も一緒に楽しんでいきましょう!」とアピールする。

 TOHO animationは「SPY×FAMILY」「呪術廻戦」など数々のヒット作を世に送り出し、ボーダーレス化などアニメ変革の時代を牽引(けんいん)してきた。今後も丁寧な施策で、良質な作品を生み出していくはずだ。これからの展開も注目される。

 「TOHO animation 10周年 大感謝祭」は9月25日午前10時半~午後8時半に配信予定。


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