海に眠るダイヤモンド
最終話前編(9話) あの夜
12月22日(日)放送分
俳優の小栗旬さんが主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(総合、日曜午後8時ほか)。9月18日放送の第36回「武士の鑑(かがみ)」では、中川大志さん演じる畠山重忠の最期が描かれ、大きな盛り上がりを見せた。ドラマには、1月9日放送の第1回「大いなる小競り合い」から登場し、初期メンバーの一人として、これまで物語を彩ってきた重忠役の中川さん。“退場”を惜しむ一方で、早くも「次は大河の主演で」といった声が次々と上がっているが、そのワケに迫ってみたいと思う。
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主人公・北条義時(小栗さん)を大将とした鎌倉側の大軍と、武蔵国を所領とする重忠が率いる畠山の兵たちが激突した第36回。その中で注目を集めたのが、戦の直前に実現した重忠と和田義盛(横田栄司さん)の二人だけの会話と、戦のクライマックスとなった重忠と義時との鬼気迫る一騎打ちだ。
特に、重忠が義盛を前にし、「戦など誰がしたいと思うか!」と叫ぶ場面では、重忠の怒り、悲しみ、悔しさといった感情が入り交じった苦しい胸の内を、中川さんは言葉の一つ一つ、表情の一つ一つで体現。その姿を、視聴者の心に深く刻みつけた。
毎回、SNSでさまざまな反響を呼ぶ「鎌倉殿の13人」において、それぞれが屈指の名シーンとなったが、50歳の横田さん、39歳の小栗さんを相手にしてもまったく引けを取らない、24歳の中川さんのどっしりと構えた「重厚さ」に改めて驚かされた視聴者は多かったはずだ。
これまでも、錚々(そうそう)たる先輩俳優陣に囲まれながら、どこか余裕さえ感じさせる、肩の力が抜けた“軽妙洒脱”さで、存在感を放ってきた中川さんが、ここ一番で見せた役者としての“分厚さ”と“重さ”。数年前まで出演していた学園ドラマの“キラキラ王子様”キャラを、いい意味で「完全に過去のもの」にした瞬間だったのではないだろうか。
24歳という年齢に見合わぬ「重厚さ」と、確かな演技力に裏打ちされた「圧倒的な存在感」で、視聴者を画面にクギ付けにした中川さんに対して、ドラマファンからは、こんな声が上がっている。「次は大河の主演で見たい」と――。
中川さんにとって「鎌倉殿の13人」は、「江 姫たちの戦国」(2011年)、「平清盛」(2012年)、「真田丸」(2016年)に続く、4作目の大河ドラマとなったが、今回の畠山重忠が最も長く演じた役で、撮影期間は1年に及んだ。大河俳優として地力が付いてきた中で、視聴者に高く評価されての“待望論”なだけに、決してない話ではない。
また「鎌倉殿の13人」の畠山重忠と、2004年の大河ドラマ「新選組!」の山南敬介を重ねる人も多いというが、同じく三谷幸喜さん脚本の「新選組!」で、山南を演じたのは堺雅人さん。知っての通り、12年後の「真田丸」では主演を務めていて、中川さんが“堺さんルート”をたどることを期待したくもなる。
もちろん、これはこじつけでしかないが、12年後、中川さんは35、6歳という、俳優として“脂ののった”年齢に差し掛かっている。“大河主演”という高みに対して、中川さんはその期待に十分に応えてくれるのではないだろうか。
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