高畑淳子:「舞いあがれ!」で3作目の朝ドラ出演 オーディションに「4回ぐらい」落ちた若き日の経験も 五島に住むたくましい祖母役

NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」で才津祥子を演じている高畑淳子さん (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」で才津祥子を演じている高畑淳子さん (C)NHK

 女優の福原遥さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「舞いあがれ!」(総合、月~土曜午前8時ほか)で、長崎・五島列島に住む舞の祖母、才津祥子を演じている高畑淳子さん。祥子は、漁師だった夫が亡くなったあと、女手一つで娘めぐみ(永作博美さん)を育ててきた。なんでも自分でやり、自分の力で生きていくことをモットーにしているたくましい女性だ。めぐみとは折り合いが悪かったが、孫の舞(浅田芭路ちゃん)を一時預かり、良き理解者となる。朝ドラは2009年前期の「つばさ」、2019年前期の「なつぞら」に続き3作目の出演となる高畑さんが、「舞いあがれ!」について語った。

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 ◇出演が決まるまで「何週間かオーディション気分で待った」

 高畑さんは、「舞いあがれ!」に出演することが決まったとき、「そりゃあもう、うれしかったです。『こういう役があるんだけど』と話をいただいてから、『どうなるか分かりませんけど、少し待ってください』と言われて何週間か待ちました。何人か候補がいらっしゃるんだろうなと思って、オーディション気分で待ちました(笑い)。私たちの時代は“朝ドラ”が登竜門で、私も何度受けたかな。4回ぐらい落ちましたね。そういう若いときの記憶があるぐらいなので、とってもうれしかったです」と出演を喜んだ。

 演じる祥子については、「五島にある海の資源と陸の資源を無駄なく使って無駄なく生きる、『SDGs』を難しい理屈なしに当たり前のこととして、おおらかに実践している人です。自分の娘と大げんかして14年も会っていないなど頑固なところもありますが、空を見て、海を見て暮らしている人の強さがあり、発する言葉に深みがあります」と表現。

 祥子が船を操縦するシーンもあったが、「船の免許は持っていません。撮影のために二階建てで運転できる船を探してくださったんです。本当は上で運転しているけど、私が運転しているように見える船で撮影したんですが、海面すれすれのところを走るので、座っているすぐ横に波が走っていくのが見えて、本当に気持ちよかったです。五島は本当にきれいでした!」と明かす。

 ◇台本を読むたびに「胸が詰まるような気持ちに」

 せりふについて、「五島ことばが難しかったので、練習をしながら何度も何度も読んでいると、気づくとティッシュの山ができているほど、涙が止まらないんですよね。例えば、『変わりもんば、変わりもんとして堂々と生きたらよか。周りに合わせんでよか。自分ば知っとる人間が一番強かけん』というせりふがあるのですが、これも五島の言葉で言うからいいんでしょうかね。標準語で『自分を知ってる人間が一番強いからね』とか言われても、カッチーン!となるかもしれませんよね。海の潮の流れや、空の気候など、あらがえない自然と共に生きている人の言葉だからでしょうね」と心にしみる言葉が多かったようだ。

 さらに「今の世の中はとても生きづらいと感じる人が多いと思いますが、この作品には、もう少しうまく楽に生きられるはず、もっと違う観点があるのではないか、といった問いかけが込められていると私は思います。脚本家のお一人の桑原亮子さんが、中途失聴による重度の聴覚障害がおありだと知り、だから言葉を紡ぐという生業(なりわい)に、ご自身のいろいろなことを詰めておられるのだなと思いました。台本を読むたびに、胸が詰まるような気持ちになったんです。いろいろなことにぶつかりながらも生きなければならないことを体感なさっている方なんだなと思いました」とおもんぱかり、「人生っていろいろなことにぶつかりながらも生きていかなければならないもの。“朝ドラ”は『今日も頑張るぞ!』と思ってもらうような役割もあるんだろうなと思いました」としみじみ話していた。

 ◇「人間の根幹」を感じ取っていただける作品

 ヒロインの福原さんに対しては、「別のドラマでご一緒したんですが、肌も透けるようで、本当におきれいで。舞ちゃんという人が抱えている繊細さと、気を使いすぎたり、人のことを背負いすぎたりというところなど、福原さん自身が、常にそういう気配りできる優しさがあるので、まさに適役だと思います」と太鼓判を押す。

 視聴者に向けて、「この作品では、五島の美しい夕日や海辺などの日本の旅情的な景色と、人々が忙しく働く東大阪の町工場という正反対の場面が出てきます。“朝ドラ”は歴史上の人物が出てきて流れを感じたり、その時代を回想したりしながら見るのが好きなのですが、同時に『人間の根幹はここにある』ということを感じ取っていただける作品ではないかと思っています。ストレスが多い現代ですが、見る角度を変えれば、親子の問題を含めて氷解することもあります。何か目線が変われば、顔を上げて生きていける。そういう力になれたらと思います」とメッセージを送る。

 さらに、「私たちは畑を耕しているわけでも、お米を作っているわけでもありませんが、演劇やお芝居は、そういう面でのお肉を作っていると思うのです。人の気持ちを強くできるというのが、テレビや舞台の一番の仕事だと思います。視聴者の方に、気持ちが強くなっていただけたらうれしいです」と呼びかけた。

 「舞いあがれ!」は“ものづくりの町”として知られる東大阪と、自然豊かな長崎・五島列島が舞台。さまざまな人との絆を育みながら、「空」に憧れるヒロインが「飛ぶ」夢に向かっていく、挫折と再生の物語だ。同局の土曜ドラマとして2020年1月に放送された「心の傷を癒すということ」などで知られる桑原さんのオリジナルで、共同脚本として、嶋田うれ葉さん、佃良太さんもチームに加わる。

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