ダンダダン
第6話「ヤベー女がきた」
11月7日(木)放送分
白川紺子さんのファンタジー小説が原作のテレビアニメ「後宮の烏」。新人声優の水野朔さんが、主人公の柳寿雪(りゅう・じゅせつ)に抜てきされ、アニメ初主演を務めることも話題になっている。緊張と共にアフレコに臨んだという水野さんは、経験を重ねる中で成長を実感しているという。収録の裏側や、声優という仕事にかける思いを聞いた。
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「後宮の烏」は、集英社オレンジ文庫(集英社)から刊行されている“中華幻想譚(たん)”。シリーズ累計発行部数は120万部を超えている。若き皇帝・夏高峻(か・こうしゅん)がある依頼のため、後宮の奥深くで暮らし、烏妃(うひ)と呼ばれる柳寿雪を訪れる。寿雪は不思議な術を使い、幽鬼(ゆうき)と呼ばれる死者の霊が見える特別な妃(きさき)で、呪殺から失(う)せ物探しまで何でも引き受けると言われていた。2人が出会ったことにより、歴史をも覆す“秘密”が暴かれることになる。アニメはTOKYO MXほかで放送中。
水野さんは、寿雪を演じることが決まった時、すぐには実感が湧かなかったという。
「まだアニメに出る機会もそんなに多くなくて、突然の主人公という感じだったので、アフレコが始まるまではずっと信じられないというか、『本当に私に決まっているのだろうか』とネガティブなことを考えながら過ごしていました。もちろん、選んでいただいたことはすごくうれしくて、事務所でマネジャーさんに知らせを受けた後に即効家族にLINEしました(笑い)。家族もすごく喜んでくれて、母もすぐに『後宮の烏』の小説を買って読んでくれたみたいです」
寿雪役が決まり原作を熟読したという水野さんが感じたのは、「人間の温かさ」だった。寿雪や高峻らそれぞれのキャラクターはつらい過去を抱えており、幽鬼を巡るさまざまな出来事と向き合う中で、心を通わせていく。
「話が進むにつれて、寿雪の周りにいる人たちの優しさであったり、寿雪に対する思いを感じて、ストーリー自体はすごく切なくて悲しいんですけど、人と人との温かさをどこかで感じられる作品なのかなと思います」
水野さんは、ミステリアスな部分も多い寿雪の魅力を「情の深さ、優しさ」と表現する。
「寿雪は、お人よしな一面もあり、頼まれると引き受けてしまうし、引き受けたことは絶対最後までやり遂げるという信念の強さがあると思います。あと、困っている人を放っておけない。その優しさは、幽鬼に対しても変わらずあるんです。自分の境遇ゆえに人を遠ざけたいと思っている中でもやっぱり人が好きで、どうしても優しさが出てしまうというところは、すごくいとおしいところだなと思います」
水野さんが寿雪を演じる上でまず大切にしたのは「落ち着いている雰囲気」だった。
「寿雪は妃なので品があるというか、淡々と落ち着いてしゃべるというイメージだったのですが、甘い食べ物には目がないとか可愛らしいギャップもあって、どこまでそのギャップを表現していいのか、すごく悩みました。音響監督さんは『もっとやっていいよ』と教えてくださって、話数を重ねるごとに寿雪を知っていった気がします」
高峻役の水中雅章さんのほか、八代拓さん、高野麻里佳さん、島崎信長さん、岡本信彦さんと、先輩たちに囲まれるアフレコ現場で、水野さんは緊張しながらも、演技の楽しさを感じたという。
「収録に行くたびに、先輩方の演技をすぐ近くで聞けるっていうのは本当に素晴らしい機会だなと思いました。これまで学んできたこともありますが、現場で先輩方の演技を聞かせていただくのが一番の勉強だと感じましたし、それを全13話分できるのは本当に恵まれているなと思いました。その中で自分に足りていない部分もたくさん出てきたので、そこを自分の中でどう解決するか、ここはこうした方がよかったとか、反省している時が一番楽しいんです。自分のダメなところを見つけることができて、改善することができるって、すごく幸せだなと思いながら挑んでました」
「反省が楽しい」と喜々として語る水野さんからは、貪欲に成長を求める強い意志を感じた。毎話「得るものが絶対一つはあった」といい、「次のアフレコでは、新しく得たもので答え合わせができる。もう幸せしか感じなかったです」と笑顔を見せる。
そんな水野さんが演技において「つかんだ」瞬間があったという。
「話が進むにつれて、寿雪の気持ちや妃らしさがどんどん変わってくるんです。それまでは落ち着いたトーンのせりふに対しては、あまりディレクションをいただくことはなかったのですが、終盤の話数で『ここはこうしたほうが落ち着いて聞こえる』とか、息を吸うタイミングだったり、せりふの中で立てる言葉であったり、技術の面でご指摘をいただいたんです。それから、自分の中ですごく腑(ふ)に落ちたというか、『なるほど』と思った瞬間があって。聞こえ方が全然違うんです。そこからは、自分の中でも“成長した寿雪”とシンクロできたのかなと思います」
スタッフの間では、寿雪が成長していくタイミングで、水野さんへ技術的なディレクションをするという狙いがあったという。
「自分的にはもっと早く教えていただきたかったという気持ちもあるんですけど(笑い)、たしかに寿雪とマッチするという意味では、すごくありがたいタイミングだったのかなと思いました」
寿雪という役に丁寧に向き合い、寿雪と共に成長を重ねた水野さん。声優としての目標を聞いた。
「ずっと声優として活動していくことが一番の目標です。最近は声優の仕事の内容も幅広くなっていますが、私はやっぱり『一番は演技』でやっていきたいという思いがあって、自分の演技をずっと積み上げることができたらすごく幸せな人生なのかなと思っています」
水野さんは「戦うことに憧れているんです」とも語る。
「そもそも声優を目指したきっかけも、子供のころにアニメを見て『必殺技を出したい!』と思ったからなんです。自分じゃないものになれるってすてきだなって。当然ですけど、普段だったら必殺技とか出ないじゃないですか?(笑い)。アニメだと出せる。そういうところにすごく夢があると思うんです。アニメの必殺技は声の力がすごいし、魂がこもっていると格好いいんですよね。憧れます」
「後宮の烏」では、寿雪が術を使うシーンが描かれる。「寿雪が術を使うシーンは、何度見てもとてもきれいですし、すごく引きつけられるものがあります。ストーリーも、原作の小説と同じく、すぐに次を見たくなるような没頭感がある素晴らしい脚本にしてくださっています」と見どころを語る。寿雪と共に歩んだ水野さんの演技に注目したい。
※注:島崎信長さんの「崎」は立つ崎(たつさき)。
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2024年11月09日 07:00時点
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