テレビ試写室:いよいよ新たな「クロサギ」始動 平野紫耀の力で「見ていて楽しい」主人公に 引き込まれる“画の強さ”も

連続ドラマ「クロサギ」第1話の一場面(C)TBS
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連続ドラマ「クロサギ」第1話の一場面(C)TBS

 ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまで、さまざまなジャンルのテレビ番組を放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は、10月21日に始まる連続ドラマ「クロサギ」(TBS系、金曜午後10時)。夏原武さん原案による、黒丸さんの同名マンガ(小学館)シリーズを、人気グループ「King & Prince」の平野紫耀さん主演で実写化した作品だ。

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 ◇第1話で描かれる“クロサギ”誕生の瞬間 カリスマ的魅力からのぞく孤独感も

 「クロサギ」は、2003~13年に「週刊ヤングサンデー」「週刊ビッグコミックスピリッツ」(共に小学館)で連載された。詐欺で家族を失った主人公・黒崎高志郎が、詐欺師をだます詐欺師“クロサギ”となって詐欺師に立ち向かっていく。山下智久さん主演で2006年に連続ドラマ化され、2008年には映画化もされた。

 今回は、原作完結後の“完全版”として新たにドラマ化。2022年を舞台に、今の日本でリアルに起こっている詐欺を描き出す。また、黒崎の家族を奪った最大の宿敵・御木本との直接対決も見どころとなる。第1話では、本作らしい痛快な復讐(ふくしゅう)劇はもちろん、平野さん演じる黒崎の生い立ちから、複雑な思いを抱えて“クロサギ”として生きる姿までが丁寧に描かれている。

 表向きは人当たりの良いごく普通の青年である黒崎。ターゲットの懐にもスッと入り込んでいくが、“クロサギ”の顔がのぞくと正論を淡々と並べて、あっという間に相手を追い込んでしまう。ある種のカリスマ性も感じさせ、どこか詐欺師を食らうことを楽しんでいるようにも見えるが、ふとした瞬間に見せるさみしそうな瞳や、何気ない一言で感情が揺れ動く様子から、孤独な人生を送っていることがうかがえる。

 ◇「視聴者をワクワクさせる」主人公に “見たことのない平野紫耀”も

 そんな黒崎の心情を繊細に表現する平野さんの演技は、注目してほしいポイントの一つだ。同じ場面の中でも目の色や声のトーンががらりと変わり、黒崎の一挙一動に引きつけられ、気づけばグッと感情移入してしまう。家族を失った15歳当時と、21歳の現在のシーンで年齢の変化が伝わるのも見事だ。

 ドラマを手がける武田梓プロデューサーは「詐欺師に詰め寄るシーンではドスのきいた声も出していて、こんな声が出るんだなと。普段聞かないような声、見ないような表情をされるので、芝居の引き出しの多さに改めて驚かされました」と話しており、終盤にかけては感情を爆発させる黒崎の姿も。これまで演じてきた役に比べて圧倒的にシリアスで、“見たことのない平野紫耀”を楽しめるだろう。

 一方で、平野さんが演じるからこそ生まれるポップさもまた魅力的だ。那須田淳プロデューサーは、「第1話では、黒崎がおはぎをごちそうになるシーンがあって。平野さんはおはぎを口いっぱいに含んで、リスのようになりながらせりふを話していて、こんな芝居見たことないなと(笑い)。こちらから指示したわけではないのですが、自然とそうなるあたりとか、ナチュラルに人を引きつける芝居をする。唯一無二の俳優センスを感じますし、そこがすごくいいですよね」と語っている。

 平野さんは、全くの別人のようになるのではなく、黒崎という一人の人間としての中でさまざまな“顔”を披露。武田さんが「見ていて楽しくなる」、那須田さんが「きっと視聴者をワクワクさせてくれる」と絶賛する、その演技力を確かめてみてほしい。

 ◇黒島結菜の凛とした雰囲気 三浦友和ら、ベテラン俳優陣が生み出す重厚感も

 本作には、黒崎と出会う検事志望の大学生・吉川氷柱役で黒島結菜さん、黒崎に情報を売る詐欺師界のフィクサー・桂木敏夫役で三浦友和さん、大企業を狙う“シロサギ”白石陽一役で山本耕史さん、黒崎の宿敵・御木本役で坂東彌十郎さんらも出演する。

 真っすぐで正義感にあふれた氷柱は、黒島さん自身が持つ凛(りん)とした雰囲気と相まって魅力的に体現され、意思の強さが感じられるまなざしが印象深い。桂木、白石、御木本は、三浦さん、山本さん、彌十郎さんと三者三様の見せ方で“黒崎の上に立つ詐欺師”としての重厚感を生み出し、ただ者ではない空気を漂わせている。

 作品を通して感じられる“画の強さ”は、プロデューサー陣が感じた原作の持つエンターテインメント性に、より説得力を持たせているように思う。黒崎がさまざまな人と出会いながら復讐の道を歩む――彼の旅の始まりを見届けてほしい。

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