ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
白川紺子さんのファンタジー小説が原作のテレビアニメ「後宮の烏」。原作は集英社オレンジ文庫(集英社)から刊行されている“中華幻想譚(たん)”で、若き皇帝・夏高峻(か・こうしゅん)に絶対的な忠誠を誓う宦官(かんがん)・衛青(えいせい)役の八代拓さんら豪華声優が出演していることも話題になっている。衛青は、これまであまり演じたことがないキャラクターで「すごく新鮮な挑戦だった」という八代さんに、収録秘話やアニメの魅力を聞いた。
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「後宮の烏」は、若き皇帝・夏高峻がある依頼のため、後宮の奥深くで暮らし、烏妃(うひ)と呼ばれる柳寿雪(りゅう・じゅせつ)を訪れるところから物語が始まる。寿雪は不思議な術を使い、幽鬼(ゆうき)という死者の霊を呼び寄せる特別な妃(きさき)で、呪殺から失(う)せ物探しまで何でも引き受けると言われていた。2人が出会ったことにより、歴史をも覆す“秘密”が暴かれることになる。TOKYO MXほかで放送中。
八代さんが演じる衛青は、常に高峻と行動を共にする宦官で、強い忠誠心ゆえに、高峻に無礼な態度をとる寿雪をよく思っていないそぶりも見せてきた。アニメ第5話では、衛青が花街出身で、自死で母を亡くし、高峻に救われた過去が明らかになった。
八代さんは「衛青は、大家(ターチャ=高峻)に対しての気持ちがとにかく人一倍強くて、ある種、大家のために生きているぐらいの人物なので、そこは大事に演じています」と話し、衛青が高峻に呼びかける際の「大家」という言葉には、「衛青の感情が一番乗る」と説明する。
「報告であったり、警告であったり、いろいろな呼びかけがありますが、衛青にとって高峻は、命より大事な存在、自分よりいとおしい存在なので、『大家』と呼びかける時には、入り口の感情はもう決まっているというか。大家とのシーンが最も感情が表に出ると思います」
衛青が忠誠を誓う高峻を演じる水中さんとの掛け合いも「すごく気持ちいい」と感じているという。
「第1話で、最初に高峻と衛青が話すシーンを演じた時にふに落ちた感があったんです。水中さんが演じる高峻は、お芝居と声に温かみはあるけれど、意志はどこにあるのかよく分からないところを感じて、実際高峻はそういう人だなと僕も思っていたので、『この人にお仕えするんだ』という納得感を持って高峻が自分の世界に入ってきた感覚がありました。その掛け合いがすごく気持ちよくて、『これからの物語が楽しみだな』と思えた瞬間でした」
八代さんは、衛青を「意外と感情が言葉に乗る素直なキャラクター」と捉えているといい、そこに「自分が演じる意味」を感じていると話す。第5話では、寿雪に「おぬしはいやなやつだな」と言われた衛青が「私もあなたのことをそう思っておりますよ」と返す印象的なシーンが描かれた。
「衛青は、こと寿雪に対しては、オブラートに包んでいるようで全く包んでいない物言いをします。ただ、つんけんして言うようなせりふをつんけんさせずに言う方法もあると思っていて。その言葉の意味だけで寿雪を刺すというか、つんけんしたニュアンスを乗せないからこそ嫌みたらしく聞こえるという。ただ、僕はより素直に捉えて演じていて、寿雪に対して『あなたのことを嫌なやつだと思っています』というニュアンスを乗せてしゃべる。僕自身もどちらかというと、平静を装ったりするのは得意じゃないので、しっかりニュアンスを乗せていけば、僕が演じる意味になるのかなと」
収録では、寿雪役の水野朔さんから刺激を受けることも多いという。
「水野さんが演じる寿雪はすごく天然で、自然体の寿雪がそこにいてくれて。だから、ちょっと守りたくもなるし、気になるし、かと思えば腹が立ったりもするし、やっぱり特別な存在だなと感じますね。衛青にとっては、高峻も特別な存在ではありますが、寿雪に対する音色と高峻に対する音色はだいぶ違うんじゃないかと思います(笑い)」
衛青は言葉数が多いキャラクターではない。八代さんは繊細な演技で衛青の感情を表現しているように感じる。
「僕は、ほかの作品では感情をすぐに放出するような元気なキャラクターを演じることが多いので、衛青のように感情は持ちながらも放出しない理由をつけるというのは、すごく新鮮な挑戦だったと思います。衛青も多分言いたいことがたくさんあると思うんです。でも、彼の場合は、高峻のことを何より大切に思っているので、邪魔はしたくない。ただすごく心配。衛青の中でいろいろなことを考えて『言わない』という選択をしている。そういう意味で、僕にとって新しい表現になったかなと思います」
アニメ「後宮の烏」は、美しい映像はもちろん、キャラクターたちの過去、後宮に秘められた国を揺るがすような秘密が次々明らかになる壮大なストーリー展開も魅力の一つとなっている。八代さんは「寿雪と高峻の関係性に注目してほしい」と今後の見どころを語る。
「高峻と出会うことで、寿雪がこれまでの生き方では気付きようがなかった感情に気付くことになります。二人の関係ははたから見ると、もどかしいんですけど、すごく二人らしくて。二人でしか築けない関係性を今後も見られると思います」
「アニメならではのシナリオにも注目してほしい」と語る。
「原作ファンの方はお気付きだと思いますが、アニメ化されるにあたって、見事なまでにシナリオが再構成されていて。限られた尺の中で、原作からどんな順番でどのエピソードを抜粋して構成するのかがすごく考えられています。実はそこが、僕がこの作品に関わって一番感動しているところでもあるんです。アニメーションのシナリオってすごいなと。原作を読んでいる方は『そういう展開で来たか』と楽しめると思いますし、アニメから見ている方も楽しんでいただける内容になっていると思うので、ぜひ最後まで、寿雪と高峻を中心とした人たちの物語を、楽しんでいただきたいなと思っています」
声優陣、スタッフが丁寧に作り上げるアニメ「後宮の烏」。今後の展開からも目が離せない。
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