解説:「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の“新しさ” 女性主人公 舞台は学園

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の一場面(C)創通・サンライズ・MBS
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「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の一場面(C)創通・サンライズ・MBS

 人気アニメ「ガンダム」シリーズの新作テレビアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」。アニメが放送される毎週日曜は同作に関連するワードがSNSをにぎわせ、関係者によると、プラモデル(ガンプラ)をはじめとした関連商品も好調で、若い世代の新規ファンを獲得しているという。同シリーズは、40年以上の歴史を誇るが、「水星の魔女」では、“新しいガンダム”を目指した。若い世代は“新しいガンダム”を楽しんでいるようだが、「水星の魔女」は何が新しいのだろうか? スタッフの証言を基に「水星の魔女」の“新しさ”を解説する。

ウナギノボリ

 ◇舞台の“新しさ” 入りやすく身近に

 「水星の魔女」のキャッチコピーは「その魔女は、ガンダムを駆る。」。あまたの企業が宇宙に進出し、巨大な経済圏を構築した時代のA.S.(アド・ステラ)122が舞台となる。モビルスーツ産業最大手・ベネリットグループが運営するアスティカシア高等専門学園に、辺境の地・水星から主人公の少女スレッタ・マーキュリーが編入してくるところから物語が始まる。MBS・TBS系の日曜午後5時のアニメ枠“日5”で放送中。

 シリーズ第1作「機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)」がスタートしたのは1979年で、40年以上前だ。“21世紀のファーストガンダム”とも呼ばれ、新規ファンを開拓した「機動戦士ガンダムSEED」がスタートしたのも約20年前の2002年までさかのぼる。歴史のあるシリーズということもあり、初心者には敷居が高いイメージがあるのは否めない。アニメを手がけるバンダイナムコフィルムワークスの岡本拓也プロデューサーは企画当初から若い世代に向けた“新しいガンダム”を意識していたという。

 「『ガンダム』の50、60周年に向けて、次の世代の少年少女に向けて作りたいという方向性で進めていました。10代の人たちからお話を聞くタイミングがあって、その時『ガンダムは、僕らのものじゃない。僕らに向けたものではない』という言葉があったんです。その言葉が刺さったんです」

 「水星の魔女」の“新しさ”の一つが、学園を舞台にしたところだ。“次の世代の少年少女”に向けて作品を作る中で「10代の身近にある環境から作品をスタートするのがいいのでは?という話の中から、学園を舞台にするということになりました」と舞台設定を考えた。学園から物語がスタートする「ガンダム」はこれまでもあったが、「水星の魔女」はこれまでとは違う。

 「日曜午後5時という時間の放送ですし、入り口からあまり重々しくするよりも、入りやすい、見やすいところを意識しています。地球と宇宙の対立のような話が描かれるのか……というのはさておき、これまでの『ガンダム』のような地球対宇宙、国家対国家の戦争は、若い人にとって実感が湧きづらいのでは?と考えていました。重い、人が死ぬから見ないという人もいらっしゃいます。今の10代にとって入りやすく、身近に感じていただくことを意識しています」

 ◇女性主人公の“新しさ” 多様性が当たり前の世界

 もう一つの“新しさ”がテレビアニメシリーズとしては初めて女性を主人公としたところだ。“新しさ”はあるが「女性主人公だからこうしよう!などと作為的なものを入れていることはないですね」とも話す。

 「作り手側としては、女性だからということやジェンダー的なものに配慮して描くことは意識していません。未来の話なので、多様性が当たり前になっている世界だと考えています。女性主人公として描きたいというよりは、キャラクター同士の話を描きたい。男性だから、女性だからということは意識していないですね」

 キャラクターデザイン原案に新進気鋭のイラストレーターのモグモさんを抜てきした。モグモさんは同人ユニット「モリオン航空」の主宰の一人で、オリジナル作品をメインに創作活動を展開。ゲーム「Project GAMM(ガム)」のキャラクターデザインなどを手がけている。

 主人公のスレッタは、内向的な性格で、コミュニケーション能力がやや乏しい。赤い髪、太い眉などの特徴で、目指したのは「普遍性のあるデザイン」だった。モグモさんは、小林寛監督の「数年後も数十年後にも残るような作品にしたい」という言葉を受けて、「デザインとしては今、流行している要素をあえてあまり入れないようにしようとしました。流行を入れると、数年後に見た時、古く見えるかもしれない。数年後見ても新鮮で、この作品にしかないようなデザインを目指しました」と方向性を決めたという。

 普遍的だが“新しさ”もあるというバランスが素晴らしく「可愛いや格好いいに新しさとか古さはあまり関係ない気がしていて、普遍的な良さを追求することが新しいものを生み出す一歩になる気がします」と思いを込めた。

 ◇穏やかではない? 今後の展開

 “新しさ”はあるが、これまでのファンを切り捨てるわけではない。岡本プロデューサーは「中学生の時に『SEED』を見ていた人も30代になっていますし、大人になった人たちが楽しめるドラマもしっかり描いていきたい。皆さんに喜んでいただけるものになっているかと思います」とも語る。

 「水星の魔女」は「入りやすい、見やすいこと」「身近に感じていただくこと」を意識したというが、本編に先駆けて公開された前日譚(たん)「PROLOGUE」は“重さ”もある。

 第6話「鬱陶しい歌」は“重さ”を感じるところもあり、今後の展開にも注目が集まる。「『水星の魔女』にも転換点があり、『PROLOGUE』でもあるような穏やかではない話も描かれます。やっぱり『ガンダム』なので」とも話しており、第7話「シャル・ウィ・ガンダム?」以降もますます目が離せない。

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