23年注目:中村里帆 「顔に特徴がない」がコンプレックスから強みに 「真のカメレオン俳優」目指して

連続ドラマ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」に出演し、話題となった中村里帆さん
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連続ドラマ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」に出演し、話題となった中村里帆さん

 昨年10月期の連続ドラマ「推しが武道館いってくれたら死ぬ(以下・推し武道)」(ABCテレビ・テレビ朝日)に出演し、話題となった中村里帆さん。映画化も決定した同作では、地下アイドルグループの不動のセンターに扮(ふん)し、今までにない姿を披露した。一方で、同時期放送の「高嶺のハナさん2」(BSテレ東・テレビ大阪)では、テンション高めの関西弁女子を演じ、役の振り幅の大きさを証明。「顔に特徴がないのが今までコンプレックスだったのですが、二つの作品が同時期に放送されて、同一人物に見えないって言われたことで、それが強みに変わった気がします」と明かす。今年は、初の朝ドラ(NHKの連続テレビ小説)も控えている中村さんに今の思いを聞いた。

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 ◇新たな可能性の扉を開いた「推し武道」アイドル役

 女性ファッション誌「Ray(レイ)」(DONUTS)のレギュラーモデルとしても活躍する中村さんだが、昨年は「連続ドラマW 正体」(WOWOW)、「モトカレ←リトライ」(MBS)、「高嶺のハナさん2」、「推し武道」とドラマ出演が相次いだ。

 「今までにないくらいお芝居の現場にいさせてもらって、お芝居のことで悩める、幸せな1年でした。どの役も違ったキャラクターで、やりがいを感じながら過ごした分、壁ばかりで。特に『推し武道』は、一番自分を出してはいけない役で、自分を押し殺してやらないとアイドルとしてそこに説得力が生まれないと思ったので、最初は見た目や雰囲気をどう作っていけばいいのか、すごく悩みました。同時期に撮影していた『高嶺のハナさん』の方は、割と自分に近い役だったので、うまくバランスがとれて、自分を見失うことなく、両作品の撮影に臨むことができました」

 作品で役を演じ続けてきたことで、自身のマインドにも変化があった。

 「演じた役がどれも似ていなかったというのもあって、今までは、普段の自分に自信がなくて、顔に特徴がない、個性がないというのがコンプレクスだったのですが、『自分はこういう役者だ』っていう色がないからこそいろいろな役になれる、という強みがちょっとだけ見えてきたというのはあります」

 中でも「推し武道」で演じた地下アイドルグループ「ChamJam」のリーダー・五十嵐れおは、中村さんの新たな可能性の扉を開くような役柄となった。

 「中学生の頃から応援してくれているファンの方たちは、アイドルとしてキャピキャピする私が新鮮だったみたいです。元々、可愛く何かを表現することが苦手で、ツインテールの髪形も短い丈のフリフリした衣装も、最初は自分でも見慣れなくてソワソワしていたのですが、人前で歌ったり、踊ったりするのは、なんだかんだ楽しくて。撮影期間中は本当にアイドルとして活動していた感じというか、ライブや握手会のシーンが多かったので、ドラマがクランクアップしたときは解散した気分にもなりましたし、(実際の活動として)アイドルもちょっとやってみたかったなって思いました」

 ◇1月期ドラマ「星降る夜に」では優秀な看護師に

 そんな中村さんの2023年は、吉高由里子さん主演の連続ドラマ「星降る夜に」(テレビ朝日系、火曜午後9時)などでスタートする。同作では、主人公の産婦人科医・雪宮鈴(吉高さん)の下で働く、真面目で正義感にあふれる優秀なナース・伊達麻里奈を演じる。

 「産婦人科医院の看護師の中では最年少だけど、仕事ができるという設定なので、いかに余裕があるところを出せるか。とりあえず看護師の仕事は頭に入れておかないと、と思い、ずっと勉強しています。真面目さや、肩肘張っているところは私とよく似ているのですが、監督は現場で感じたままにやろうとおっしゃっていて、そういった部分は自分の課題でもあるのかなって思っています」

 同じ産婦人科医院のメンバーには、吉高さんのほか、光石研さん、ディーン・フジオカさん、猫背椿さん、長井短さんが名を連ねる。役柄としてもキャラが強く、その中で「埋もれないようにしたい」と意気込む。

 主演の吉高さんは事務所の先輩で、2020年の連続ドラマ「危険なビーナス」(TBS系)にゲスト出演して以来の共演だ。

 「すごい大先輩だし、緊張もするのですが、横に立つと安心感もある。親しみやすいオーラをまとっていて、ああいう人間像に憧れを持っているので、見ていてうらやましいです。尊敬もしていますし、少しでも吉高さんのイズムを今回の共演で受け取ることができたらなって思っています」

 ◇実は熱いハートの持ち主 朝ドラ出演で強まった思い

 「星降る夜に」と入れ替わる形で、4月から放送される2023年度前期の朝ドラ「らんまん」に、主人公・槙野万太郎(神木隆之介さん)の生家である酒蔵「峰屋」に奉公している、働き者の女中・たま役で出演が決定している中村さん。5年前の2018年度前期の「半分、青い。」のヒロインオーディションでの手応えと、そこで味わった悔しさをきっかけに芝居への意欲が高まったという中村さんにとって、「ずっとずっと夢見ていた朝ドラへの出演」となる。

 地元の高知がドラマの舞台ということで、喜びもひとしおだが、あくまで目標はヒロインとして朝ドラに出演すること。

 「朝ドラヒロインをやるまでは役者のお仕事はやめられないと思っているくらい私にとっては大きな目標。一回、朝ドラに出られたからといって『これでいいや』とはならないですし、より一層、『ヒロインをやりたい』という思いが強まったので、これからも朝ドラヒロインを目指して頑張りたいです」

 さらには「つかこうへいさんの作品にも出てみたいんです」と話す中村さん。同郷の先輩で、「らんまん」でも共演している広末涼子さんも主演を務めたことのある舞台「飛龍伝」を見に行った際、「ヒロインの方が舞台上で死んでしまうんじゃないかっていうくらいの熱量でやられて、私もこういうのをやってみたい」と思ったという。

 見た目と違って、実は熱いハートの持ち主である中村さんは、「この熱い一面をもっと出せたらいいなって思うのですが……」と反省しつつ、「2022年はいろいろな役を演じさせてもらって、見た目で全く別の人物になれるってことは少しは証明できたと思うので、今後は、もっとお芝居でそう思わせられる役者に、真のカメレオン俳優になりたいなって思っています」と語った。

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