中谷美紀:「片付けも洗濯もする余裕がなかった」 「ギバーテイカー」で挑んだ壮絶な日々 助けになった菊池風磨の存在

「連続ドラマW ギバーテイカー」で主演を務めた中谷美紀さん(左)と共演したSexy Zoneの菊池風磨さん (C)WOWOW
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「連続ドラマW ギバーテイカー」で主演を務めた中谷美紀さん(左)と共演したSexy Zoneの菊池風磨さん (C)WOWOW

 すえのぶけいこさんの人気マンガを実写化した「連続ドラマW ギバーテイカー」で主演を務めた中谷美紀さん。人気グループ「Sexy Zone」の菊池風磨さん演じる、娘の命を奪った猟奇殺人犯と死闘を繰り広げる女性刑事を演じた中谷さんは、「人のネガティブな感情をむさぼるような感覚」で役作りに挑み、私生活でも余裕をなくしていたという。そんな中谷さんに、壮絶だった撮影とともに「助けになった」という菊池さんの存在について語ってもらった。

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 ◇「密度の濃い台本をよりどころに」 倉澤樹を演じる覚悟

 原作はすえのぶけいこさんの人気マンガ「ライフ2 ギバーテイカー」(講談社アフタヌーンKC)。主人公の倉澤樹は、12年前に娘が通う小学校で教師として働いていた。ある日、隣に貴志ルオトという少年が越してくる。倉澤は自らが勤める小学校に通うことになったルオトを可愛がるが、やがて彼に娘を惨殺されてしまう。

 事件をきっかけに、倉澤は「自分と同じように苦しむ人を一人でも多く救いたい」との思いで刑事に転身。そんな中、ルオトが医療少年院を退院すると知った倉澤の元に、「あなたの大切なものを、もう一度奪います」というメッセージが届く。それからルオトの犯行によるものと思われる新たな事件が動き出し、倉澤は彼に翻弄(ほんろう)されながらも解決のために立ち向かっていく。

 原作をどのようにドラマ化するのか、「正直なところ想像がつきませんでした」と語る中谷さん。「原作とは設定も異なるため不安要素が大きかったのですが、いただいた台本に感情移入してしまい、思わず涙があふれてきました。それだけ密度の濃い台本でしたし、プロデューサー陣が少年犯罪を綿密にリサーチし、脚本家の小峯(裕之)さんと手を取り合いながら丁寧に作ってくださったので、この本をよりどころにして演じられると思いました」と明かす。

 主人公の設定は、原作の「妹を殺された刑事」から「娘を殺された刑事」に変更された。中谷さんは「出産も子育ても経験していないので、どうしたら倉澤の母性や苦しみに近づけるかはやはり悩みました」と吐露しつつも、「人のネガティブな感情をむさぼるような感覚」で役作りに挑戦。エドヴァルド・ムンクの展覧会に行き、彼の絵の数々からもインスピレーションを受けたという。

 ◇苦しみに耐え続けた撮影の日々 役からの解放が虚無感にも

 撮影期間中、特につらかったのは現場で役としていることと、主演としていることを両立しなければならなかったことだった。

 「正直に言うと、倉澤の立場では皆さんにあいさつもしたくないくらいでした。ですが、2カ月ほど撮影を続けるにあたって、現場やスタッフのモチベーションもありますし、適度に雑談を交えたりとコミュニケーションを取る必要があって。両立させることが一番キツかったですね」

 また、倉澤は被害者遺族としての怒りや憎しみに震えながらも、刑事としての理性とも闘わなければならない役柄だ。中谷さんは、演じていて「死のふちに立たされているような感覚」だったと振り返り、「撮影中は片付けも洗濯もせず、靴下でさえクリーニングに出していました。洋服のまま寝ていることもありましたし、それくらい余裕がなかったです」と話す。

 しかし、「ヘドロのようなものを背負った気持ちのままでないと、むしろ演じられない役でもありました。この役を引き受けた限り、そこは受け入れるしかなかったです」と、感じた苦しさを役へと昇華。倉澤に向き合い続ける日々から解放されると、今度はサバイバーズギルト(生存者の罪悪感)のような虚無感にも襲われたといい、「呼吸がしづらくなってしまって、理学療法士の方にレスキューをお願いしました」と苦労を語った。

 ◇菊池風磨が作り上げた貴志ルオト 身を委ねられる“救い”の存在に

 そんな中谷さんにとって支えとなったのが、ルオトを演じた菊池さんの存在だった。

 「現場でご一緒したのは2回だけでしたが、その度にいたぶられて、たとえ世界中の女性が菊池さんに黄色い歓声を上げようとも、倉澤を演じた私にとってはいまだに復讐(ふくしゅう)したい対象というか。それほど菊池さんがルオトとしていてくださって、とても助けられました」

 演技についても、「せりふのリズム感が素晴らしくて、聞いていて心地よかったんですよね」と中谷さん。対峙(たいじ)するシーンでも「テストの段階から見事だなと思いました。声のトーンもテンポも緩急をつけて、単調ではなく、大きなうねりを緻密に組み立てていらっしゃった。だから私は、菊池さん演じるルオトに委ねて、彼の発する言葉に素直に反応していればよかったというか」と信頼を寄せた。

 一方、「実はドラマを終えてから、バラエティーでの菊池さんを知って。裸でのたうちまわっている姿を見て、少しショッキングというか……これは私の知っている菊池さんじゃないと(笑い)」と告白。「それくらい現場では別人でしたし、普段の姿を封印して、すごく静かでいらっしゃいました」とギャップも明かした。

 菊池さんは中谷さんの作り上げた倉澤に「とにかくかっこよかったです。姿勢もきれいだし、所作も美しくて」とほれぼれ。「現場でご一緒した際は、僕も本当に背筋が伸びましたし、家に帰ってからもよく眠れました(笑い)。それくらい緊張感がすごかったです」と語り、「役にグッと入る瞬間が僕なんかにも分かるくらいで、オーラがガラッと変わる瞬間を目の当たりにしました」と尊敬のまなざしを向けていた。

 *……「連続ドラマW ギバーテイカー」は、1月22日から毎週日曜午後10時にWOWOWプライム・WOWOW 4Kで放送、WOWOWオンデマンドで配信される。全5話で、第1話は無料放送。

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