長澤まさみ:「最近の自分は好き」 理想の自分になるための考え方語る

「松尾スズキと30分強の女優」に出演する長澤まさみさん
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「松尾スズキと30分強の女優」に出演する長澤まさみさん

 劇作家、演出家の松尾スズキさんが毎回女優一人と繰り広げるWOWOWのコントドラマの第3弾「松尾スズキと30分強の女優」が3月25日に放送される。「長澤まさみの乱」に出演する女優の長澤まさみさんに、撮影やコントについて、30代のうちにやっておきたいことなどを聞いた。

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 ◇「いつか呼ばれるのか」と期待

 「バラエティー番組のコントではない、作品としてのコントが作りたい」という思いから、松尾さんが脚本・演出・出演を務めるオムニバスコントドラマの人気シリーズ。2021年の第1弾には吉田羊さん、多部未華子さん、麻生久美子さん、黒木華さん、2022年の第2弾には生田絵梨花さん、松本穂香さん、松雪泰子さん、天海祐希さんが出演し話題に。

 今回は長澤さんと松たか子さんが「長澤まさみの乱」「松たか子の乱」に出演。長澤さんは、かつてブームに沸いた「恐竜喫茶」で起こるハートウオーミングドラマ「恐竜最後の日」、カード支払いの“センター通信中”の通信先がなぜか「センタア飯店」だったという「センタア飯店」など5エピソードで、それぞれ別のキャラクターを演じている。

 長澤さんは、「麻生さんの回はすごく面白かった。(麻生さんが出演した)『時効警察』ぽさもちょっとありつつずっとしゃべり続けている感じが、こういう役が合うなって。麻生さんは一生懸命の役が可愛い。先輩のことを可愛いと言っちゃいけないですけど」と語る。

 自身が楽しんでいた番組のオファーを受けた長澤さんは、「いつか呼ばれるのかなとちょっと期待していたのでうれしかった」と喜び、「どういう話になるのか楽しみで、早く台本届かないかなと思いながら過ごしていました」と期待していたという。

 実際に出演してみての感想を、「松尾さんと一緒にお芝居できるのが楽しかったし、ほかの皆さんも何度も共演させていただいている方々ばかりで、一生懸命みんなで真面目にふざけました」と話し、「台本を読んでいるときは『センタア飯店』がキャッチーで面白く楽しそうだと思っていたけど、演じてみるとどれも面白くて。(老紳士がペットという設定の)『老紳士を捨てる』は見ていてゲラゲラ笑い、お気に入りになりました」と手応えを口にする。

 ◇コントの奥深さを実感

 印象に残っているエピソードに「恐竜最後の日」を挙げた長澤さんは「撮影が始まる前、真面目にちゃんとティラノザウルスの動きを研究している方の動画が送られてきて。アングラ感があって面白く、その動きを参考にしました。動きに関しては、まったくもってふざけておりません」と話す。

 一方、「やってみて難しく感じたのは『センタア飯店』かな」といい、「キャッチーな作風なので、本を読んでいるだけでも面白い。そういう作品は演じるのが難しいですね」と理由を説明する。

 そんな「センタア飯店」で長澤さんは不思議な言語を披露しているが、「存在しない架空の言語で、(台本も)小さい『つ』が2個入っていたりして、どう読めばいいのだろうって」と戸惑いつつ、「自分なりに解釈して作っていってほしいのが松尾さんのやり方。こう読んだら面白いだろうなというのを音で練習していきました。自分で気持ち良いとか面白いと思う音を大事にしました。好きな分野ですね」と練習の過程を明かす。

 コントを演じることについて、「以前バカリズムさんのものと、『LIFE!』でやったことがあり、作家さんによって笑いの感覚が違うので、解釈が難しいなと思うときはあります」と話し、「その時に感じて出したものが大切というか、練習しすぎると新鮮味がなくなり面白くなくなっちゃうことも。なかなかコントは深いですね」と神妙な表情で語る。

 ◇松尾スズキの演出家として、俳優としての魅力は?

 これまでも松尾さんと共演している長澤さんに、「俳優」「演出家」としての松尾さんの印象を質問すると、「演出家としては真面目に厳しい方。本番までにちゃんと用意をしておかないとだめだと思うし、その緊張感を当たり前に指摘されます」と切り出し、「一緒に演じているときは、どう言葉にしたらいいのかわかりませんが、松尾さんが演じると松尾さんの世界感をまとったキャラクターになる。本を解釈する感覚なのか、もともと持っている空気感かわかりませんが、独特な感じが印象的です」と答える。

 そんな松尾さんが作り出す作品の魅力については「ベースになっているのは、どれも普遍的な物語」と前置きし、「感覚的な部分が独特。一見、よくわからないと感じる観点かもしれないけど、さみしかったり、かわいそうだったり、痛そうだったり、そういう影を背負っているみたいな役柄がポップに描かれている。噛めば噛むほど味が出るじゃないけど、ジーンとくるキャラクター設定が多いところが魅力だと思います」と語る。

 ◇長く続ける秘訣は「毎日を違うものとして楽しんだり頑張ること」

 30代も半ばを迎えた長澤さんに、30代のうちにやっておきたいことを聞くと、「運動ですね」という答えが返ってきた。

 「誰しも今ある体を使って生きていかなきゃいけないのは決まっている。そのために40代、50代、60代と、先の人生を考えて運動をもっともっとたくさんしたい。20代初めからに徐々に運動は増やしていて。健康じゃないとやれない仕事なので、体調管理は大事。健康じゃないと何もできないし、健康のことを考えるのが大好き。健康オタクかもしれません(笑い)」

 長く活動を続けられている秘訣(ひけつ)について聞いてみると「同じ日はやって来ないので、毎日を違うものとして楽しんだり頑張ることができたら長く続けられるのでは」と持論を語る。

 「うまくいかないときの自分があるから、もっといい自分になれるかもしれない。人生の波みたいなものはあった方が、人間的な許容範囲が広がって、大きい人間になれると思う。良い時も悪い時も私は好きです。私は性格的に『これでいいかな』と自問自答を繰り返しちゃうタイプで、自分に満足いったこともないし、多分一生ないなと思いますが、それはもう自分の価値観。うまく自分を扱えるようになったら楽しいことなんていっぱいあると思います。そうやって毎日過ごせるようになれば、いい状態の自分を作ることだってできるし、長く何かを続けることもできるようになる気はします」

 キャリアを重ねていく中での俳優業との向き合い方の変化について、「若いときにどうやっていたかは今となっては覚えていないし、その時の精いっぱいでやっていたのだろうぐらいの記憶しかないのですけど」と苦笑しつつ「向き合い方はその都度変わっているだろうし、良い出会いがたくさんあって変わっていくものだと思う。なりたい自分、なりたい理想に近づくためには、人を動かしてどうにかするのではなく、自分が変わればいいだけだと思ってやっています」と神妙な表情で語る。

 なりたい自分になれているかと水を向けると「そうですね。うまくいかなくなって、自分に対して何でこんなことになっちゃっているのかとびっくりすることもありますけど。今の自分、最近の自分は好きだなって思うときはあります」とほほ笑む。

 最後に本作の見どころを、「『センタア飯店』はキャラクターが強く、見た瞬間からギョッとしてもらえたら。『野良キャッツ、捕獲女』は話している内容を理解するとなるほどと思える作品かも。『老紳士を捨てる』はドラマで、『恐竜最後の日』はパニックムービー。『居心地最高』はCMくらいの短さで『あれ面白かったね』と感じてもらえれば」とアピール。

 そして、「クスクス笑いながら見ていただける楽しい作品ができたので、ぜひ皆さん視聴していただきたいです」と呼びかけた。

 「松尾スズキと30分強の女優」は、WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで3月25日午後9時半から「松たか子の乱」、午後10時15分から「長澤まさみの乱」が放送・配信。(取材・文:遠藤政樹)

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