今年最後のグランドスラム「全米オープンテニス」の車いす部門が9月5日深夜に開幕する。日本勢は男子シングルスに小田凱人(おだ・ときと)選手、女子シングルスに上地結衣選手が出場する。男子シングルス第1シードの小田選手は、全仏オープン、ウィンブルドンに続くグランドスラム3連勝の期待がかかる。女子シングルス第2シードの上地選手は6年ぶりの優勝を目指す。開幕前に両選手が意気込みを語った。
ウナギノボリ
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ーー全米オープンにどういうイメージを持っていますか。
昨年はあまり良い結果ではありませんでした。2回戦で負けて、しかも普段勝っている相手でもあったので、その選手に負けた印象が強く、そのイメージが自分の中ではあります。大会全体としては、アメリカ特有のエンタテインメントなところはすごく感じますね。そういう場は僕も大好きですし、盛り上げたいという気持ちがあるので、そこはピッタリかなと思います。
ーー車いすテニスで目指しているところはどういったところなのでしょうか。
「車いすテニスならではの魅力」と「車いすテニスらしくない魅力」、僕は良い意味で「車いすっぽくないテニス」を目指していて、車いすでもボレーに出たり、ドロップショットを打ったり、サーブアンドボレーをしたりというのを目指していますし、一般のテニスに近いものを車いすで再現できるプレーヤーになりたいと思っています。そこは今回の全米のテーマでもありますし、常に意識しています。
ーー小田選手のショットはしっかりと、車いすのスピードがボールに乗っているイメージがあります。
そうですね。特にバックハンドの時は、車いすのスピードをつけていって、ラケットに当てるだけというイメージの時はあります。
ーー理想のショットが決まった時はどんな気持ちですか。
常にもっと良いショットを求める気持ちがあるので、そこまで(ショットの余韻に)浸ったりすることはあまりないですが、自分で試合を振り返った時に、このショットは良かったなっていうのは何本もありますし、リターンは特にイメージ通りに行くことが多いです。
ーー左利きで、スピードも回転もあり、特にサービスゲームにおいては、コースも絶妙ですね。
特に意識はしていないですが、ただサッカーをやっていたので、フリーキックのようなイメージで打っています。止まっている状態で打ちますし、コースが決まっていてゴールの角を狙って打つという意味では同じなので、サッカーを思い出しながら打ったりはしていますね 。自分のタイミングで打つということと、焦って流れで打たないこと、一度深呼吸して打つということは常に意識しています。
ーークレー(全仏)、芝(ウィンブルドン)で優勝しました。ハードコートが一番得意だと思うのですが、この全米はどう捉えていますか。
車いすではクレーや芝よりもハードコートは動きやすいので、テニスもやりやすいですし、芝よりは絶対的に自信があります。グランドスラムを連覇している勢いもあるので、この流れでハードコートで戦えるのはチャンスだと考えています。
ーー世界一になって、プレッシャーはありますか。
昨年ぐらいから徐々に勝ち出して、今年世界一になったので、感覚的にはまだ始まったばかりです。すごいワクワクといった感じしかなく、そこまで重いものを背負っている実感はないです。まだまだここからという時期なので、そういうことを考えるのはまだ先かと思っています。
ーー車いすテニスでどんなものをつかみたい、伝えたい、と思っていますか。
選手としては結果を求められることが多いでし、それがなければ選手としての価値も下がってしまうと思いますけど、まだメジャースポーツの域までは行っていないので「車いすテニスを見に来る」という人を増やしていきたいです。
ーーウィンブルドンの後、現在までの状況は。
一度日本に帰って、英国の大会にもう一度来ようか、と思っていたんですけど、自分のプレーを見直していて、その中でしっかりと全米オープンに照準を合わせるために試合を出るのではなくて、日本で過ごすということを決断して、すごく久しぶりに夏の日本を味わいました。
ーー言える範囲でどういうことを試されているのですか?
日本にいる間に国枝(慎吾)さんと話しをさせてもらったり、一緒にテニスをする機会もありました。その中で技術的なアドバイスをいただいたりしました。ウィンブルドンの時にも車いすに手を加えていたんですけど、あれからさらに違う形で試しているところではあります。
ーー理想の形に向け、どれぐらいの段階でしょうか。
正直まだ全然かな、というところです。車いすに乗り込んでいる期間にしてもそうですし、トライしていることが本当に1日24時間じゃ足りないとはこのことか、というぐらい……。体力にはもちろん自信はありますけど、ウィンブルドンの時のケガのこともあって、テニスがやりたいけどできないもどかしさだったりだとか、いろいろとやっぱり……。純粋にテニスの技術だけじゃなくて、ラケットとか車いすとかの必要な要素に、この夏は目を向けていたと思います。
ーー全米への意気込みをお聞かせください。
決勝まで駒を進めて、今の自分の現状でディーデ(デ グロート)とどれぐらい戦えるのかというところはみたいと思いますけれど、その前に一つ一つの試合で自分のイメージしているようなプレー、挑戦しているプレーを出して勝ちを積み重ねていくというところがまず必要かなと。
*……WOWOWでは9月11日まで「全米オープンテニス」をWOWOWオンデマンドで連日配信する。車いすテニスは9月6日、男子シングルス1回戦「S.ウッデ選手VS小田凱人選手」、女子シングルス1回戦「D.マシューソン選手VS上地結衣選手」の試合の模様を配信する。
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