鈴木達央:演技へのストイックな姿勢 「ケンガンアシュラ」に込めた並々ならぬ熱さ

「ケンガンアシュラ」に出演する鈴木達央さん
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「ケンガンアシュラ」に出演する鈴木達央さん

 「裏サンデー」「マンガワン」(小学館)で連載されたバトルアクションマンガが原作のアニメ「ケンガンアシュラ」のSeason(シーズン)2が、Netflixで9月21日から配信される。Season1が2019年7月に配信された人気作で、主人公・十鬼蛇王馬(ときた・おうま)役の鈴木達央さんら豪華声優陣の熱演も話題になった。約4年ぶりの新作について、鈴木さんに聞いた。

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 ◇自分自身に向き合った3年

 「ケンガンアシュラ」は、サンドロビッチ・ヤバ子さん原作、だろめおんさん作画のマンガで、闘技者の格闘でビジネスを決める企業同士の代理戦争・拳願仕合(けんがんじあい)を描いている。アニメは、「Angel Beats!」「暗殺教室」などの岸誠二さんが監督を務め、 上江洲誠さんがシリーズ構成を担当。LARX ENTERTAINMENTが制作する。

 約4年ぶりの新作となったが、鈴木さんはずっと「ケンガンアシュラ」に向き合ってきた。

 「そんなに時間がたっていたんですね。収録は3年ぶりくらいでした。僕自身、制作の皆さんと密にお話をさせてもらって、Season1が終わった後、Season2のお話を聞いていたので、収録までに自分は何ができるのか?を考え、自分自身に向き合いました。その時間も含めて考えると、ずっと作品に向き合っていました」

 Season2の収録まで約3年のブランクはあったが、鈴木さんは「3年は必要だし大切な期間だった」と感じているという。

 「何ごとも熟練度というものが必要であり、100%必要な時間だったと思います。王馬は、トーナメントで身体も中身も成長しています。その成長を見せるために、どうやって声に乗るのか?を考えないといけません。人間は成長したり、年を取ったりすると、しゃべり方、響きなどが変わってくるものです。同じこと言っていたはずなのに、聞こえ方、響き方が違ってきます。王馬の成長をしっかり声に乗せて、自分を変えなければいけない。身体、響きを見直し、しゃべり方から変えてみようと思いました。僕はプロなので、スタジオに行ったら、決められた時間内で100%を望まれている中で、150%、200%を出したい。それが当たり前のことだと思っています。悩みながら向きあいました」

 Season2の第1話を見ると、王馬のちょっとした言葉からも重みを感じる。王馬はSeason1での戦いを経て、成長した。

 「王馬自身、年齢的には若い部類に入りますが、若さ、経験による老成が同居しています。夏の甲子園を見ると、高校生が大人顔負けのコメントをすることもあります。経験することで生まれてくるものがある。王馬も2回戦までで見えてきた景色があり、だからこそ言える言葉、説得力があるはずです。2回戦を乗り越えた王馬というものを意識しました」

 ◇格闘技を研究してリアリティー追求

 「ケンガンアシュラ」はバトルシーンが大きな見どころになる。成長した王馬がどんな戦いを見せてくれるのかにも注目が集まる。Season1との演技の変化を聞くと、「全部変えています」と即答する。

 「Season1で王馬は自分が忘れていた戦い方に立ち戻った上でアップデートをしていく。それが息にも出てきて、この立ち方、動き、体勢ではアップデートした息は出ないのでは?と考えています。Season1の王馬は、がむしゃらでしたが、Season2ではもっと理論的になります。リアルではなくリアリティーを出していこうとしました。この3年という年月はリアリティーを出すためにも必要な時間でした」

 鈴木さんは、Season2の収録に向けて格闘技を研究した。

 「グラップリングにはグラップリングの息があります。さまざまな格闘技を見ると、体幹や骨盤を使っていて、上半身にそれほど力が入っていないので、そういった息の抜け方になります。例えば、プレッシャーをかけながら、首を絞めるシーンであれば、必死ではあるけど、素直な音にしないといけません。朝倉未来選手、クレベル・コイケ選手の戦いを見た時にも感じたのですが、落としかけた時の息は、腹に力は入っているけど意外と普通の息なんです。どこを強調すれば、リアリティーになるのかを研究しました。さまざまな格闘技の映像をひたすら見て、音を聞きながら息を盗もうとしました。ミュートにして、自分の音を入れてみたりして、さまざまな動きに対して声を当てられるようにしました」

 収録中は体を激しく動かせない。鈴木さんは、立ったままでも“格闘の息”を表現しようとした。リアルなだけでは、エンターテインメントにはならないが、リアルを研究することで、エンターテインメントならではのリアリティーを表現しようとした。鈴木さんの作品に向き合う姿勢はストイックで、そこまでするのか!?とも感じてしまう。

 研究を重ねる中で、格闘技にすっかりハマってしまったという。

 「スタッフさんや関係者の皆さんを少しうらんでいます(笑い)。皆さんが僕を筋トレと格闘技に引きずり込んだので。それからさまざまな団体をワクワクしながら見るようになり、すっかり格闘技好きになっていました」

 ◇声で映像を想像できる演技が理想

 鈴木さんの演技に対するストイックな姿勢は“オタク的”でもある。やるからにはとことん追求する。

 「オタクです。僕はそういった方を見て育ってきましたから。とある吹き替えの作品を、音声だけカセットテープに録音して、ワクワクしながら聞いていました。声だけで、情景を浮かべることができるのがすてきだと思い、声優に興味を持ちました。声で映像を想像できる演技が理想です。年齢を重ね、原点回帰しているところもあって、自分が何したいのか?となると、もちろんフィルムとして完成しているけれど、音だけ聞いても情景が見えてくるのが、僕の究極系です。そこまでやらないとダメだと思います」

 鈴木さんはかつて同作の収録について「声で殴り合い」と語っていたことがあった。豪華声優陣による“演技の格闘”は鳥肌ものだ。

 「Season2の収録が始まる前、共演者の方々とほかの現場で合うと、『いつ始まるの?』とみんな聞いてきますね。みんなワクワクしています。僕は皆さんをリスペクトしていて、支えがあるからこそ、100%、120%で先輩にぶつかっています。」

 鈴木さんは並々ならぬ熱さを持って収録に臨んでいる。その熱さは“フィルム”からも感じられるはずだ。

 「原作をいい意味で超えていく。原作に戻って読むと、より面白くなる。さらに、原作からフィルムに戻っても面白い。そんな作品にしたいと僕は考えていて、岸監督も同じことを考えていると思います。すごいものにするぞ!と全員が思っているので、Seaosn2の配信をワクワクしてお待ちいただけるとうれしいです」

 Season2の熱い戦いの幕を開ける日をぜひ楽しみにしてほしい。

 ※クレジット(敬称略)

 メーク:加藤ゆい▽スタイリスト:久芳俊夫

 ※スタッフ(敬称略)

 原作:サンドロビッチ・ヤバ子▽作画:だろめおん(小学館「マンガワン」連載)▽監督:岸 誠二▽シリーズ構成:上江洲 誠/キャラクターデザイン:森田和明/音楽:高梨康治(Team-MAX)▽アニメーション制作:LARX ENTERTAINMENT

 ※キャスト(敬称略)

 十鬼蛇王馬:鈴木達央▽山下一夫:チョー▽乃木英樹:中田譲治▽秋山楓:内山夕実▽理人:金子隼人▽関林ジュン:稲田徹▽今井コスモ:榎木淳弥▽桐生刹那:浪川大輔


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