全領域異常解決室
第7話 すべてお話します 物語はここから始まった
11月20日(水)放送分
俳優の堺雅人さんが主演を務める日曜劇場「VIVANT(ヴィヴァン)」(TBS系、日曜午後9時)が、9月17日の放送で最終回を迎える。さまざまな考察が上がるなど、多くの視聴者を魅了してきた本作。ドラマを手がける飯田和孝プロデューサーは、最終回について「考察を楽しんでくれている皆様、そんなものはどうでもいいとすら思えてしまうシーンがドーンと待ち受けています」と予告する。飯田プロデューサーにこれまでの各話の注目ポイントを振り返ってもらった。
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<ドラム(富栄ドラムさん)の付けた発信機に気づく乃木(堺さん)>
クランクインする前には、第10話までの台本はほぼできていたので、第1話で乃木がドラムに盗聴器を仕掛けられたところは、すれ違うシーンを撮影する際に、別班・乃木がそれに気づく第5話のシーンも併せて撮影しています。
その後、乃木はCIAのサム(マーティン・スターさん)と話すわけですが、ドラムの盗聴器がある状況なので、聞かれてはいけない話は、盗聴器から離れた広場へ出て話しているという演出になっています。これを踏まえてもう一度あのシーンを見ていただくと、面白いかもしれません。
<乃木 vs ザイール(エルヘムバヤル・ガンボルドさん)>
ザイールを銃で撃つシーンは、実は乃木が撃っていたという場面も同時に撮影しています。カメラのアングルを変えることで、第1話では見えないようなアングルのカメラを採用し、野崎(阿部寛さん)の視点(野崎の小型カメラ)からのアングルは第5話で採用しているんです。
乃木の動きや体の向きも非常に繊細な演出になるので、態勢や、銃の出し方、それでいて、あれだけ正確にザイールの腕を撃ち抜くためにプロが見ても違和感のない撃ち方を、監督、堺さん、ガンアクション指導、アクション指導を交えて綿密に打ち合わせをして撮影をしました。ザイールを撃った後、野崎が突入してくるので、銃を持ったままにはできない、じゃあどう処理するかまで綿密なシミュレーションがなされていました。
考察でも気づいていただいてますが、ザイールのところへ向かう途中、乃木が警察車両の中で少し屈む仕草は、乃木が銃を仕込んでいるんです。
<アリ(山中崇さん)のスマホをすり替え>
堺さんとマジック指導の方と、スーツを着ている状況で、どういうふうに隠して、どうすり替えるかという打ち合わせを何度も重ねました。またアリの部屋でデータを盗むところも、サイバー監修の助言を元に、福澤(克雄)監督と助監督が何度もシミュレーションし、別班ではない乃木のキャラを保ちながら、どのように実行するのが良いかを検証していました。
アリに気づかれないように動かなくてはならないし、でもアリはまだ乃木をただの商社マンとしか思っていないわけで、乃木の動きが鋭くても不自然ですし。かといって、アリはテロ組織の幹部クラスだということも乃木はわかっているので、バレてはいけないし、そのへんの絶妙な塩梅(あんばい)は、堺さんと山中さんだから、可能だったのではと思っています。
<数多く登場したモンゴルの動物たち>
何頭ものヤギが一斉に移動する中を、乃木たちが逃げるというシーンがありました。昨年夏に、初めてロケハンに行ったのですが、そこらじゅうに動物がいて、人間と共生していることを実感しました。そんな動物との距離感に触れたことで、監督もあのストーリーを思いついたのではないかと思います。実際の撮影では、3000頭のヤギたちをどうやって同じ方向に動かして、その中で馬を走らせるか、とても苦労していました。いざ、移動が成功するも、今度は砂ぼこりが立ち過ぎて、乃木たちがまったく見えなくなりました(笑い)。
それから散水車を呼んで水をまいて、地面を濡らして、など試行錯誤の末にあのシーンが誕生したのです。他にも、VIVANTには、ラクダに命を救われるシーンもあり、動物がこのドラマの鍵を握っているんです。
“動物の社会の中に人間がいるような感じ”と堺さんがモンゴルを表現していらっしゃいましたが、モンゴルは人間と動物との距離感が日本とまったく違います。人が動物を“飼っている”という感覚ではないんです。ですがそれは、日本がまだ遅れているだけあって、世界では当たり前のことだと痛感しました。
長旅を助けてくれたラクダを乃木と薫(二階堂ふみさん)が心配して、時間をかけてウランバートルまでドラムが戻すという描写は、そんな世界基準の考え方を取り入れたいという監督のこだわりでもありました。乃木がラクダにモンゴル語で話しかけるのは、モンゴルの動物だからモンゴル語で、という堺さんのこだわりでもあります。
<“F”のキャラクター>
乃木は普段、情けない男を演じているわけではありません。別班の乃木は“F”が担っているので、普段の乃木は温厚な性格です。第1話でチンギスから逃げる道中も、乃木はいつでも逃げられる状態です。でも、野崎に素性がバレてしまう恐れがあるのであえて逃げません。
また、野崎と行動を共にし、公安は“テント”に関してどこまで情報を得ているのか探る意図もあります。乃木と野崎のシーンを第1話から見返してみると、そういった部分がよりわかると思います。
<随所にちりばめられた日本文化>
野崎が乃木や薫に赤飯を振る舞うシーンがありますが、日本大使館で出される料理など、全体的に日本特有のものを数多く使用しています。食べ物に限らず、乃木が住む日本家屋も、ベキ(役所広司さん)の刀もそうです。
福澤監督には、日本の人々はもちろん、やがては世界中の人に「VIVANT」を楽しんでほしいという思いがあり、日本の文化や風情をドラマ内にたくさんちりばめました。乃木と薫が抱き合うシーンの背景を桜にしたり、ベキの故郷が奥出雲で、古くからたたら製鉄や稲作が栄えた地域だったり。世界に発信しているものが、日本の人も改めて日本の良さに気づくきっかけになるのではないかと思っています。
<伏線が回収されていないシーン>
第2話は最終回につながる部分があります。第2話で野崎が「ちょっと用事ができた」とナジュム(ブルース・テイラーさん)を連れて行ったシーンの真意もまだ回収されていません。そして、英子(檀れいさん)とワニズ(河内大和さん)の会話も、改めて見返すと、最終回を見るときにさらにドキドキできると思います。
<数多くのセットに隠された工夫>
データセンターに忍び込む撮影は本当に大変でした。コンビュータがいくつも設置された部屋は実はセットで、野崎や東条(濱田岳さん)がいる車もセットです。
今回はセットを50以上も制作していますが、実はいろいろと使い回しをしています。例えば、データセンターの壁を公安の会議室の壁に使ったり、病院の壁を部屋に使ったり、台本がそろっている状態で撮影をスタートさせたことで、「このセットは次ここに活用しましょう」というプランを美術さんが立て、それに則った撮影スケジュールを組むことができました。ただ、使い回していることが分からないように、第1話で使用したものをラストに回すなど、工夫を凝らしています。
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