名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中の山田鐘人さん原作、アベツカサさん作画のマンガが原作のテレビアニメ「葬送のフリーレン」。「マンガ大賞2021」で大賞に選ばれたことも話題作で、アニメの初回は、「初回2時間スペシャル ~旅立ちの章~」として日本テレビの映画枠「金曜ロードショー」で9月29日午後9時から放送される。金曜ロードショーでテレビアニメシリーズの初回が放送されるのは初めて。以降は、日本テレビが新設するアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」で、10月6日から毎週金曜午後11時に放送される。魔王を倒した勇者一行の魔法使いで、エルフゆえに長寿であるフリーレンが仲間の死を経験し、“人を知るため”に旅をすることになる……というストーリーで、種崎敦美さんが主人公・フリーレンを演じる。種崎さん、フリーレンと共に魔王を倒した勇者パーティーの勇者ヒンメル役の岡本信彦さんに話題作「葬送のフリーレン」への思いを聞いた。
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岡本さん いまだかつてないようなストーリー展開で、最初にタイトルを聞くと、フリーレンがとにかく強くて、バタバタと魔族をなぎ倒すような話かなって勝手に思っていたのですが、そういう要素もありつつ、戦いのほんの一部で、戦うことに理由がしっかりあり、この世界観の重厚さ、繊細さ、細部までしっかり練られている設定、おびただしい質と量にまずびっくりしました。読めば読むほど自然と心の中にキャラクターたちが入ってきて、この世界の歴史をいつの間にか追体験しているようなそんな作品だと思います。全てがまだ見えていない、面白さもあります。どんどん明らかになっていく面白さがあって、次は何かくるんだ?とワクワクしながら毎回読んでいます。こんな設定のキャラクターが出てくるんだ、キャラクター同士に実は接点があったんだ……と驚きの連続です。「葬送」と聞くと、悲しい話かと思うかもしれません。悲しく、感動する話もあるのですが、男の子目線でバトルものとしても面白く、誰が一番強いか?と談義も盛り上がるはずです。
種崎さん 最後はどこに行き着くんだろう……と。加えて、私は原作を読んでいる間ずっと作品から哀愁のようなものを感じていました。何でもないシーンでもずっと心がキュっとして泣きそうで、読み進めていると自分の中にいろいろな思い、感情が気づけば降り積もっているんです。ものすごい作品です。
種崎さん フリーレンは1000年以上生きているということもあり、経験値、知識、そもそもの魔力……とすごい部分がたくさんあるんです。でもそんなにすごいのに怒ったフェルンには弱かったり、朝起きるのが苦手だったり、周りから呆れられるほどの興味があることへの探究心とか、ドヤ顔とか……可愛いらしいところもたくさんで。とっても普通じゃないのにとっても普通というか。
岡本さん フリーレンは可愛らしい女の子に見えるんですけど、頼もしくもあります。でも頼りがないところもあって、いろいろな面があります。矛盾を抱えた存在です。ヒンメルもそうなのですが。
種崎さん ダンジョンは楽しんでなんぼ。宝箱はあけてなんぼ。ミミックによく食べられているのも、あえて自分から向かっているんじゃないかな?と演じている中で思うようになってきました。ものすごいだけど、普通でもあって、子供のように真っ白。アニメは原作に忠実に作られているのですが、原作より表情が豊かになって、フリーレンの無邪気さがよりしっかり描かれているようにも感じます。
岡本さん ヒンメルは、僕が今まで思い描いてきた勇者とはちょっと違うんですよね。魔王を倒すために血のにじむような努力をして、仲間から裏切られたりして、最終的に覚醒して、魔王を倒す……みたいな勇者とは違う。ヒンメルはもちろん努力をしていると思うのですが、楽しさを重視しています。どんな職業、どんな世界であれ、共通認識としてある“楽しむこと”に重きを置いている人です。それ故の愛嬌(あいきょう)もあります。本来だったら、魔王を倒した勇者は、崇められるイメージがあるのですが、ヒンメルは自分から自分の銅像を作る。そこが可愛いですね。
種崎さん 銅像を作るのは、フリーレンのためだったりもしますし。
岡本さん ヒンメルを見ていると、自己肯定感が高まる気がします。自分もこうなりたい、少しは自分のことを信じてやってみようとも思います。
岡本さん 初回の収録で、求められているのがナチュラルさだったんです。悩みながら演じていました。今まで声優をやってきて、自分の中では初めての感覚だったのですが、ここは見せたい!とエゴを出すことがヒンメルにはなくて、冷静に作品を見ることができました。もしかすると種崎さんや東地宏樹さん、上田燿司さんが現場で作り上げてくださった掛け合いの空気感がそうさせてくれたのかもしれません。確かに時間軸はバラバラなのですが、みんなで一緒に収録すれば、それが正解なのかな?と思っていました。難しく感じるかもしれないですが、その場になってみたら大変じゃなくて、何とかなる気がします。みんなと掛け合っていれば、そのまますぐその時間軸に移動できるんです。
種崎さん 収録で掛け合っていく中で、あんなパーティーが出来上がっていきました。スタッフの方々も基本そこで自然に生まれる空気を大事にしてくださっている気がします。作品の特徴として、フリーレンがとてつもなく長く生きているので、主に回想でいろいろな年代に飛びます。その年代ごとの細かい演じ分けをすることなども考えたりしたのですが、どれだけ年代が飛んでもフリーレンの芯にあるブレない部分だけはずっと変わってないと思ったので、そこさえ忘れずにいればあとは、1000年も生きてるんだから「どんな日があってもいいじゃない」と思えるようになっていきました。難しい役ではありますがそう思うようになってから少し演じるのが楽になった気がします。
種崎さん 原作を読みながらフリーレンを思い浮かべた時、真っ白な子だと思いました。透明ではなく真っ白。1000年以上も生きているのに純粋で、子供のようで。“魔法”への想(おも)いも、本人の自覚はきっとまだないけど“人間”……というか大切な人への想いも、純粋。起こった出来事や受け取ったもの、人間を知っていく中で気づいたり変化していく部分ももちろんありますが、彼女の一番真ん中にあるその真っ白さはいつの時代もブレていないなと感じます。
--“新パーティー”のフェルン役の市ノ瀬加那さん、シュタルク役の小林千晃さんにインタビューした際、この作品らしく収録が「現場が静か」というお話がありました。“勇者パーティー”の収録の様子は?
岡本さん ワイワイ話していましたね。うるさくはないですね。初回は台本に向きあう時間が多かったのですが。
種崎さん 皆さん、ナチュラルに過ごされていますよね。でも、やっぱり静かなんです。新パーティーの静かさとはタイプが違って、それぞれのパーティーに空気が似ているのかもしれません。
岡本さん 種崎さんとはこれまでも共演させていただいたことがあるのですが、毎回刺激を受けます。種崎さんやっぱプロだなと思います。キャラクターの声が聞こえてきて、このキャラクターがこういうことする……という説得力がすごい。以前、共演させていただいた時は、感情が分かりやすく伝わる演技だったのですが、「葬送のフリーレン」では、自然さが求められているところもあって、フリーレンの人間味、温度感を感じます。
種崎さん 私が声優をやっていく上で一番大事にしたいのが「血の通ったキャラクターがそこにいること」でして、一番言われてうれしい言葉なので、今びっくりしています。ヒンメルは、いい意味で予想外のお芝居でした。初めてヒンメルの声を聞いた時、このヒンメルは私の中にはなかった!と感じました。聞けば聞くほどヒンメルだと感じてくるんです。想像できていなかったのに。それはどこかに何かしらの固定観念みたいなものがあったからなのかなと。であるならそんな謎の固定観念なんかない役者になりたいと思いました。
岡本さん 難しいんですよね。僕は「クソ」「死ね」とか言うキャラクターを演じさせていただく機会も多く(苦笑い)。ヒンメルはそういうことを言わなさそうだけど、言うんです。僕の声が格好いいわけでもないし、“勇者声”ではないとも思っています。格好よくないけど、勇者をやっていいんですね!となったり。
種崎さん うれしいのですけど、プレッシャーが大きいですね。素晴らしい作品ですし、より多くの人に届く点ではうれしいのですが、やっぱりプレッシャーが大きくて……。
岡本さん 僕は主役でもないのに、プレッシャーがかかっていて(笑い)。種崎さんはもっと大変だろうし、「葬送のフリーレン」のために、何でもやります!という気持ちです。
岡本さん 人の温かさ、切なさなど作品を通して教えていただいて、見た後は、よりよい時間の使い方をしようと思ったり、生きていくための活力にもなったりします。一分一秒を大切にしないといけない、仲間や友達、家族を大切にしなきゃいけないと改めて思います。僕は、人生は短いと感じているので、一生の短さ、きらめきの短さを大切にしていきたいと思える作品です。いろいろなメッセージがちりばめられていて、どこを拾っても一級品です。ぜひ楽しんでください。
種崎さん 原作を読まれている方は、この作品の面白さはもう十分ご存知かと思いますが、アニメーションではマンガでいうコマとコマの間を見ることができます、そしてそこがとても丁寧に描かれています。原作に忠実に作られてはおりますが、さらに魅力的な「葬送のフリーレン」をお届けできると思います。ここまでいろいろ語ってきましたが、アニメで初めて作品に触れてくださる方は、一旦全部忘れていただいて、ただただ作品を見て、心の中にいろいろなものが降り積もっていくその感覚をただただ感じていただけたらと思います。さまざまな切り口の「この作品面白い……!」がずっとずっと続きますので、ぜひ楽しみにしていてください。たくさんの皆様にこの作品が届きますように……!
※種崎敦美さんの「崎」は「たつさき」
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