ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
西村ツチカさんのファンタジーマンガが原作の劇場版アニメ「北極百貨店のコンシェルジュさん」が10月20日に公開された。監督を務めるのはテレビアニメ「ボールルームへようこそ」などの板津匡覧さんで、劇場版アニメの監督デビューとなる。板津監督は「妄想代理人」で作画監督、「電脳コイル」で総作画監督を務め、「百日紅~Miss HOKUSAI~」でキャラクターデザインを担当するなど数々の作品に参加してきた。独自の表現が魅力の西村ツチカさんのマンガをアニメでどのように表現したのだろうか? 板津監督に聞いた。
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「北極百貨店のコンシェルジュさん」は「ビッグコミック」(小学館)増刊号で2017~18年に連載されたマンガ。客は全て動物という不思議な百貨店・北極百貨店を舞台に、新人コンシェルジュの秋乃が客からのさまざまな難題に向き合う中で成長していく姿を描く。「第25回文化庁メディア芸術祭」マンガ部門で優秀賞を受賞した。アニメは、ドラマ「凪のお暇」などの大島里美さんが脚本を手がけ、「攻殻機動隊」シリーズなどのProduction I.Gが制作する。
板津監督は「西村ツチカさんの作品がずっと好きで読んでいました」といい「『北極百貨店』は、お仕事ものの要素もありますし、『ホテル』を最初にイメージしました。東堂というキャラクターも出てきますしね。秋乃の成長を描き、お仕事ものというところを強調すれば、映画になるんじゃないかな?と感じました」とアニメ化に向けて、方向性をさだめようとした。
西村ツチカさんのマンガは、線が多いわけではなく、繊細だ。
「背景を含めて画面構成がしっかりしていて、マンガとして絵の完成度が高い。基本的にキャラクターはシンプルで線が少ないですし、アニメにする際にシルエット、動きをしっかり描かないと、物足りなく見えるかもしれません。映像ならではの表現が必要になってきます」
“映画”として成立させるために考えたこともあった。
「百貨店からは出ない作品なので、百貨店の中での場面の変化、転換の面白さを表現しようとしました。百貨店は変わらないのですが、季節によってディスプレーが変わります。ディスプレーで四季を表現し、秋乃の成長物語として一年を描くと、春に始まり、春に終わる……と円環させられます。そこから最初のプロットを考えました」
アニメ「北極百貨店のコンシェルジュさん」は“動き”の面白さにあふれた作品になっている。
「なるべく自然に、当たり前に動物たちがいるように感じてほしい。アニメーションを作ると、いつもそうなんすけど、誇張する部分、ある種のリアリティーが必要な部分の両方があって、それをミックスさせます。秋乃だったら、びっくりして、極端に跳びはねてもいい。でも、その動きにはリアリティーがなきゃいけない。動きの案配を考えますし、空間とのマッチングもあります。背景があり、その人が存在していることが必要になります。床に映り込みがあれば、そこに存在する印象を強調できる。そこを考えています」
百貨店を訪れる動物たちは、人間のように二足歩行なのだが、動物らしさもある。
「この作品の中で変な動きをしているのはむしろ人間で、動物の動きは地味なのかもしれません。お客さんの動物は、ある意味、謎の存在でもあって、極端なことをしてしまうと、そこから離れていってしまう。リアリティーの案配に気を使っていて、そこの説明が難しいところでもあるのですが……。動物だけど二本脚で歩いている。でも、骨格は動物なので、骨格は意識して描いています。猫が立つと、人間で言うと、つま先立ちの状態になります。人間は自分の体を使って、動きを考えることができるけど、動物は骨格が違うので、アニメーターには動物の体幹も扱える高い技術が必要になります。橋本晋治さん、松本憲生さんなど熟練のアニメーターに参加していただいたおかげで描くことができました」
百貨店の店内も丁寧に描かれている。
「小さい動物と大きい動物がいますし、店はどうなっているのだろう?と考えてしまいますが、描き込みすぎず、密度がある印象だけ表現しています。背景は、線を強調しているところもあります。珍しいことなのですが、描き込みすぎずに、色の面で画面全体を作ることがチャレンジでした。背景がキャラクターに近くなるんですね。キャラクターには線があるので、背景に線があることで近付く。百貨店の背景自体に存在感があり、キャラクターの一部として描こうとしました。普段でしたら、背景はキャラクターを見せるための絵として主張を控えてもらうことが多いのですが、今回は、キャラクターは淡めの色彩で、少し奥へ、背景をキャラクターに寄せて前に出てきてもらい、画面全体を絵として見せようとしました」
緻密に背景を描いていったが「百貨店の中の構造も細かくは考えていません」とも話す。
「それぞれのシーンで必要な場所として存在していて、シーンごとにきっちり合っていないですし、伸縮も自在です。3Dの作品も増えていることもあって、自分の中で反動もあり、もっとルーズにした方がむしろアニメらしいのでは……とも考えています。自分の中では構造はあるのですが、見ている人からすると、気にしないところでしょうし。そもそも東堂さんがいろいろなところから出てきますし、構造がどうなっているか分からないところもあります」
板津監督は名アニメーターでもあるが「今回は、原画そのものは描いていません。絵コンテは全部自分で描いていて、基本的な絵作りは全部自分でやっていますが。監督をやっていると、こんな考え方をする人がいるんだ!ということが良くも悪くもありまして、それが楽しいですね。自分の発想にはないものが生まれるとうれしい」と話す。
これまで宮崎駿監督や今敏監督、磯光雄監督、原恵一監督など名監督の作品に参加してきた。
「影響がとても強いのは今敏監督です。いろいろな話を聞く機会もありましたし、基本的に絵コンテのカット割り、方法論は今さんがお師匠様になります。アニメーターとしての動きの作り方は丹内司さんがお師匠様です」
今監督は「パプリカ」「妄想代理人」「千年女優」などで知られており、2010年に亡くなった。
「自分でコンテを書いていると、こんなふうに考えていたんだな……というのは後から分かったことも多いです。今さんの絵コンテは、拡大してそのまま原図になるような密度のものなのですが、絵の密度だけでなく、カット割りの分かりやすさや、ト書きにもとても気を使ったコンテで、とても読みやすく、精度は今さんとまではいかないですが、そんなコンテを書こうとしています」
アニメ「北極百貨店のコンシェルジュさん」は、動きなどのアニメならではの面白さにあふれた作品に仕上がっている。
「今まで作ってきたものよりはアニメーション、絵で見せようとしているところが割と強いかもしれません。最初から動きで、キャラクターを表現できるようにしようとしていました。シンプルな絵でやる以上、そこをしっかりしようとしていましたし、カット割りにしても、変化をなるべく強調しようとしています。自分の中では、前に作った『みつあみの神様』の発展形という位置付けですが、せっかくこの形でできたので、さらに発展させていきたいですね」
進化を続ける板津監督の今後も注目される。
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