海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
趣里さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ブギウギ」で俳優デビューした黒崎煌代(くろさき・こうだい)さん。本作では、ヒロイン・スズ子(趣里さん)の弟・六郎に扮(ふん)し、そのナチュラルすぎる演技に対して「新人俳優とは思えない」「ものすごい逸材」といった声が上がるなど、視聴者からも高い注目を集めている。果たして、黒崎さんはどんな俳優なのか、本人の発言を交え、ひもといてみたい。
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黒崎さんは2002年生まれ、兵庫県出身。2022年の役者オーディション「レプロエンタテインメント30周年企画『主役オーディション』」で全くの素人にもかかわらず約5000人の応募者の中から合格を勝ち取り、芸能界入りを果たした。
父親の仕事が「映像関係」とあって、子供のころから映画が身近にあったという黒崎さん。作品を自発的に見るようになったのは、中学生に上がってから。高校生になると明確に「将来は映画関係の仕事に就こう」と思うようになっていた。
高校時代にクラスメート(本人いわく“相棒”)とコンビを組んで「脚本を書いてみたり、撮ってみたりしていた」黒崎さんは、大学進学を機に上京。将来のための勉強を兼ねて、前出の「主役オーディション」に応募したことがきっかけで、演じることの楽しさ、奥深さに触れ、“撮る側”“(脚本を)書く側”より先に、俳優としてデビューを果たすことに。
いずれは自分で脚本を書き、撮ることを目標としている黒崎さんに接して感じたのは、自らを“客観視”できる目を持っていること。公開こそ「ブギウギ」の後になってしまったが、黒崎さんが初の演技の現場となった映画「さよなら ほやマン」で障がいを持つ主人公の弟を演じた際、役の設定に引っ張られすぎたことを反省し、「撮影前のリハーサルの途中で、シゲル(役の名前)ではなく、障がい者を演じてしまっていることに気づいたんです」と話す姿も印象的だった。
続けて黒崎さんは「シゲルは自分を障がい者とは思っていない、なぜか人と同じことができない男。これでは(自分が障がい者を演じてしまっては)シゲルの葛藤が伝わらないと思ったので、自分自身どうすればいいのか、あいまいな状態でわざと現場に入って、迷いながら撮影の日々を過ごすことで、シゲルの葛藤が出ればいいなって思いながら演じてみました」とも語ってくれたが、自分を俯瞰(ふかん)できるからこその発言のようにも思えた。
ちなみに黒崎さんは、影響を受けた俳優の一人にレオナルド・ディカプリオを挙げている。ディカプリオが1993年(日本は1994年)公開の「ギルバート・グレイプ」で演じた役柄は、「さよなら ほやマン」のシゲルとよく似ていて、本人にとってうれしい偶然だったようだ。
「ブギウギ」では、300人以上の応募があったオーディションで射止めた“少々どんくさいが、マイペースな性格で家族思いな六郎”を好演している黒崎さん。ドラマの制作統括・福岡利武さんは、起用の決め手として、黒崎さんの「天性の素朴感」「もともとお持ちのピュアな雰囲気」を挙げていて、本人の資質あってこその、ハマり役であることは間違いない。
一方で、「さよなら ほやマン」のシゲル役のエピソードからも伝わってくるように、黒崎さんが“役として生きること”に自覚的な俳優であることも忘れてはならない。
「ブギウギ」の六郎役に関しても「僕は台本を読んで、すぐ六郎を好きになったので、見ていただいた方にも六郎を好きになってもらいたい、そうなるようにストーリーに沿って演じることができたらと思いました」と語っていて、明確な意志を持って挑んだことがうかがえる。
ドラマの第8週「ワテのお母ちゃん」(11月20~24日)では、六郎にも赤紙が届き、出征するまでが描かれたが、大好きな母・ツヤ(水川あさみさん)と離れがたくて甘えてしまう様子、普段は優しい父・ 梅吉さん(柳葉敏郎)との仲違いと仲直り、姉のスズ子の前でしか打ち明けられなかった本心と、視聴者の心をとらえてやまないグッとくるシーンが連続。黒崎さんに対しても、当然「六郎として生きてるようにしか見えない」との称賛が送られた。
決してビギナーズラックではない、黒崎さんの“役として生きるための志=俳優純度”の高さのなせる技といえよう。
今後について「細かいことを言えば、内面がにじみ出てくるようなリアクションのできる俳優になれたらなと思っています」と告白。その上で「独自の路線というか、まだないジャンルを作れるような、うまく隙(すき)間を見つけて、その道の一番を走っていくような役者になりたいです」とも語っていた黒崎さんの、さらなる活躍に期待したい。