大沢たかお:役者人生「ターニングポイントの連続」 皿洗いを極めた経験も「本気で必死にやれば気づくことがある」 実写版「沈黙の艦隊」の挑戦語る

実写ドラマ「沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~」で主人公の海江田四郎を演じる大沢たかおさん
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実写ドラマ「沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~」で主人公の海江田四郎を演じる大沢たかおさん

 俳優の大沢たかおさんが主演を務める実写ドラマ沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~」が2月9日からAmazonの動画配信サービス「Prime Video」で独占配信される。かわぐちかいじさんの人気マンガ「沈黙の艦隊」が原作。大沢さんは日米政府が極秘に開発した最新鋭の原子力潜水艦「シーバット」で反乱逃亡する艦長の海江田四郎を演じる。数々の話題作に出演し、第一線で活躍し続ける大沢さんに、海江田役について、役者人生におけるターニングポイント、大事にしている思いなどを聞いた。

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 ◇海江田は「こいつ極悪人だ」ぐらいでもいい

 原作の「沈黙の艦隊」は1988~1996年にマンガ誌「モーニング」(講談社)で連載され、コミックスの累計発行部数3200万部突破の人気マンガ。日本近海で発生した海難事故で海上自衛隊の潜水艦「やまなみ」が沈没。艦長の海江田四郎二等海佐を含む乗員76人の生存が絶望視されるが、実は全員、日米が極秘に作った原子力潜水艦の乗員に選ばれており、事故は偽装工作だった……という内容。劇場版は2023年9月に公開。ドラマ版は劇場版に未公開シーンを加えた全8話で、2月9日に1~6話、16日に7~8話を配信。後半で、劇場版の続きとなる沖縄沖海戦、東京湾海戦が舞台となる壮大なバトルが繰り広げられる。

 潜水艦による海中バトルや国家間の駆け引きなどを壮大なスケールで描く本作。映画とドラマで、主演とプロデューサーを兼任する大沢さんは、このタイミングでの実写化に「今だからこそと言うより『気づいたら今だった』という方が正確かもしれないですね」と語る。

 「本当にいろいろなご縁があって。『やりたい』と思っていても、いろいろなものがそろわないとできなかったり、国の協力がなければできなかったり……いろいろそろったのが、このタイミングだったんですよね。ある時からどんどん動き出して、協力体制も含めて、人が人を呼んで。あれよあれよと巨大なプロジェクトになっていったのを、ずっと目の当たりにしていたので、自分でも本当に不思議に感じています」

 劇中では、原子力潜水艦の独立戦闘国家「やまと」を率いる主人公・海江田四郎を演じている。カリスマ性にあふれ、どこかミステリアスな雰囲気も漂う魅力的なキャラクターを演じる上で、意識していたことは何だったのだろうか。

 「プロデューサーの松橋真三さんと『海江田は、全然違う切り口にしたら今の時代に合うんじゃないか』と話していました。『俺は日本を変える』と、凛としていても面白くないと思ったんです。見え方は『こいつ極悪人だ』ぐらいでもいい。劇中では、海江田のやることが波及してみんな大変になっていくけど、実は海江田が主人公というより、この波に揺らされた人たちが葛藤、混乱し、成長していく物語。海江田は最初の波でしかない。エンターテインメントは主人公の成長物語なので通常はご法度ですけど、令和だし面白いんじゃないかと。挑戦だし、勝負でしたね」

 劇中で海江田が動き回るシーンは少ない。印象的なのは、時折見せる謎めいたほほ笑みやどっしりと構える後ろ姿だ。だが、大沢さんは「実は、すごく動いているんです」という。

 「海江田は体ではなく、頭の中がすごく動いているんです。僕と潜水艦は一体なので、僕の目や手は潜水艦についているんです。だから、実はすごく動いている。僕の肉体は動いてないですけど、実は動いているんです」と語る。

 ◇本質は「デビューした日と何も変わっていない」

 これまで、俳優として約30年にわたって数々の話題作に出演し、活躍してきた大沢さん。数ある出演作の中で、特にターニングポイントになった作品を尋ねると、「もう、ターニングポイントの連続かもしれないですね」と笑う。

 「その時はそう思わなくても、後々振り返るとそうだったりもする時もあるし、価値観が変わるような現場の作品もあるし。いつも学ぶことがあります。やっぱり変化しちゃいますよね。1本、作品をやると。作品じゃなくてもいいんですけど……たとえば、学生時代のアルバイトでも、本気で必死にやると、そこから気づくことはあります。僕、高校と大学の2年間、お寿司(すし)屋さんで皿洗いのバイトをしていたんです。もう、極めすぎて『俺、皿洗いの会社作ろうかな』と思ったぐらい(笑い)。職人さんと話したり、お客さんの顔を見たり、そこで学んだことはいっぱいあったんです」

 “変化”について、大沢さんは「作品の数、いろんな人との出会い、年齢とともに、そのときどきですごく変わった気がする」と振り返る。だが、本質的な部分では「デビューした日と何も変わっていない」という。

 「デビューした時、“うそ”の世界だけど、なるべく(その中に)本当のことがあったらいいな、と思ったんですよ。フィクションだけど、その中に“真実”がないと、エンターテインメントってペラペラになっちゃうんじゃないかと思ったんです。それはリアルの芝居をするとかそういう意味じゃなくて、うそつきじゃない方がいいと思った。フィクションなんだけど、そこに自分の人生をちゃんと刻んでいく、というか……。その思いは、デビューした頃からずっと変わらないですね」

 そう語る大沢さんに、これからのビジョンを聞いた。すると「今後のビジョンは何もないです。僕、過去にビジョンがあったことは1回もない」と即答した。

 「考えたって、その通りにはならないし。むしろ、考えることで別の可能性をつぶすこともあるので、その方が怖いんですよ。自分の思い込みである方向ばかり見ちゃって、実はいろんなチャンスが逆側にあったのに……とか。僕にとっては、考えるだけ時間がもったいないんです」

 では、そんな大沢さんが今後チャレンジしたいことは?

 「むしろ、チャレンジできるような人生だったらいいなと思います。それに、チャレンジってものすごいことのようだけど、ささいなことでも、なんでもいいんですよ。そうやって、新しい自分に気づいたり、ちょっと成長できたかもって思えたりするだけで、すごく幸せなことだと思うんですよね」笑顔で語った。

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