俳優の妻夫木聡さんが、2019年に直木賞を受賞した真藤順丈さんの傑作小説を実写映画化する「宝島」(2025年公開)で主演することが5月22日、明らかになった。映画「るろうに剣心」シリーズ(2012年~)や「レジェンド&バタフライ」(2023年)の大友啓史監督が手がけ、俳優の広瀬すずさん、窪田正孝さん、永山瑛太さんらも出演する。
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原作者の真藤さんは、7年という月日をかけ、「この小説で世界を変えるつもりで書いた」と熱く語る。平和な時代を生きる私たちに、生きている感情を取り戻せ!と訴えかけるような圧倒的熱量で描かれた小説で、第160回直木賞に審査委員から満場一致で選ばれ、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞も受賞と3冠に輝いた。
大友監督は、NHKに在職中、2001年前期の連続テレビ小説(朝ドラ)「ちゅらさん」で演出の一人として沖縄を撮影してきた。今作では原作にほれこみ、映像化を熱望。戦後沖縄の20年と真正面から向き合う。
物語は、沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える、“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。中心人物は、いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼ななじみのオン、グスク、ヤマコ、レイ。その中でも、英雄的存在で、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオンだった。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは「予定外の戦果」を手に入れ、突然姿を消す。残された3人はやがて、警察官、小学校の先生、ヤクザになり、それぞれの思いを胸に、憧れの存在、オンの失踪の謎を追う……と展開する。
妻夫木さんは、警察官になり、英雄オンの痕跡を追う親友のグスク役で主演を務める。広瀬さんは、小学校の教師になり、恋人オンの帰りを信じて待ち続けるヤマコ役。消えた兄の影を追い求め、ヤクザになる弟レイを演じる窪田さんは、2012年の映画「るろうに剣心」以来12年ぶりの“大友組”となる。そして永山さん演じる英雄オンの衝撃の真実が、20年の歳月を経て明かされる。
今作には、米ハリウッドに拠点を置く「LUKA Productions International」も製作に参加。企画プロデューサーの五十嵐真志さんは「素晴らしい原作に出合い、大友監督と一緒にぜひ映画化したいと、時間をかけて準備をしてきました。アメリカの統治下だった戦後の沖縄を描く、スケールの大きな作品のため、アメリカとの共同製作という体制で臨みます」と海外展開も視野に入れている。
今年2月に沖縄でクランクインし、約2カ月間に及ぶ沖縄での撮影を終了。現在は、関東地方や和歌山県などで大規模なクライマックスシーンの撮影に入っており、6月にクランクアップを予定している。映画は、東映とソニー・ピクチャーズの共同配給で、2025年に拡大公開される。
キャスト、スタッフのコメントは以下の通り。
この作品のために長い間準備をしてきました。コロナで延期もあり、途中もう無理かもしれないと思う時もありましたが、まさに「宝島」の主人公たちと同じように一縷(いちる)の望みにしがみついて、監督、スタッフ、キャストと共にようやくここまで来ました。満を持して、今撮影に挑めていることに、この上ない幸福感を毎日かみ締めております。映画「涙そうそう」(2006年)でも、このコザという街が舞台でした。あの素晴らしい出会いから18年、再びコザを舞台にしたこの作品でグスクを演じることに運命を感じています。沖縄には、いまだ続いている問題がたくさんあります。みんなの言葉にならない声を芝居に変えて伝えていくことが、この作品に導かれた僕の使命だと思っています。僕はこの「宝島」をただの映画で終わらせたくありません。人の心を突き動かすことは容易ではありませんが、今を生きる私たちがどうあるべきか、どう生きていくのか、一緒に考えていきたい。映画という枠を超えて一つになれる、この映画にはその力があると信じています。最後まで覚悟を持ってみんなで突き進んでいきたいと思います。
脚本を初めて読んだとき、こりゃ大変だぞと思いました。スケールが大きく、言葉の掛け合いや感情のぶつかり合いなど、現場でどんな空気が生まれるのか楽しみでした。またクランクインの前に監督が「この作品では太陽でいてほしい」とおっしゃってくださったのがストレートに自分に届き、ヤマコはみんなの希望になっていいんだと、全力で演じたいと思いました。
まだ撮影の半ばですが、これまで、監督が本当にわかりやすく興奮されてる姿をたくさん見て、元気をもらえています。段取りから監督・キャストが話し合って作り上げていくシーンたちはとても濃厚で、地方に長くいたこともあって、みんな家族のような温かさと、信頼が生まれている現場です。お芝居に没頭できるような環境を作ってくださってとても居心地がいいです。エネルギーを吸い取られるほどのチームの熱量は、映画にそのまま映るような気がしていて、私自身も既に完成が楽しみです。
まだまだ撮影はありますが、身を引き締めて向き合いたいなと思います。
アメリカの統治により全てが支配下となった沖縄で、英雄と呼ばれた偉大な男を兄にもつ弟、レイを演じます。脚本の壮大さに驚き、とてつもない大作になると確信した一方、戦争という暴力でむしばまれた琉球の魂の癒やしに、この映画が少しでもつながっていくことを深く願っています。情熱の絶えない大友監督が描く「宝島」は、どんな情景、感情の色彩をしているのか、現地で体感できることが楽しみです。共演者も熟練された実力者の方ばかりなので気を引き締め精進し、現場で生まれる芝居、その変容を楽しみながら、「宝島」の一部になれたらと思っています。
大友監督の作品への大きな愛と覚悟を傍で強く感じています。そして妻夫木聡さん、広瀬すずさん、窪田正孝さん、という絶対的に信頼できる役者さんと共に、戦後の沖縄で、彼らが未来をしっかりと見据えて力強く生きた証しを作品の中で残せるよう、身も心も大友組にささげたいと思いました。昨今の生きづらさみたいなものや、どこにぶつけたらいいか分からない熱量のようなものを、この「宝島」のオンを通して全身全霊で出し切りたいと思います。
「あきらめるな、何が何でも生きろ」と、全ての人の背中に向けて、そう問いかけているかのような。原作を初めて読んだ時に浴びた熱量の渦、その火照りがいまだ冷めずにいる。映像化を志して既に数年。準備を続ける中でコロナ禍に襲われ、何度も立ち止まり。その都度僕は、原作から受け止めたメッセージを自分に言い聞かせ、それを胸の奥でかみ締めながら前に進んできた。
「諦めるな、生きろ」と。
時代はいつしか平成から令和に変わったけれど、それでも私たちが記憶の底で、遺伝子の隅々まで忘れてはいけない物語が確実に存在する。戦後の沖縄を舞台に描かれる「宝島」は、まさにそんな類の物語だ。
蛮勇にも近いこの冒険に集まってくれた俳優・スタッフたちと力を合わせ、多くの人に希望と勇気を感じていただけるような、そんな作品を粘り強く作り上げたい。そして、グスク、レイ、ヤマコ、オンら劇中の魅力的な登場人物たちと共に、熱気あふれるあの時代を最後まで全力で駆け抜けたい、そう思います。
あらゆる近現代の物語は“沖縄”に通じる――そう信じてコザのセンター通りでほぼ路上生活を送りながら構想を固めていたころは、本作を映像化しようという蛮勇がこの国の映画界に残っているとは思ってもみなかった。
たくさんのご厚意にあずかって、沖縄のロケやスタジオ撮影を訪ねる機会に恵まれたが、そこでさらに確信を深めることができた。大友啓史監督を始めとする傑(すぐ)れたスタッフや俳優陣が立ち働く現場には、戦後日本の“青春時代”ともいえる「宝島」の時代が現前していた。現場の袖には当時の資料写真が配され、美術や装飾によって風景は時間をさかのぼり、照明がほの暗い世相の陰と陽をさばき、モブの一人にまで注がれる演出のはざまを自在にカメラの目が抜けていく。ぶっちゃけ作り手として羨望(せんぼう)や嫉妬をおぼえるほどの(この現場でぼくが『宝島』を撮りたいとすら願った。スティーブン・キングの『シャイニング』になりそうだから止めておくけど)とめどない現場の熱が、同じ地平の、同じ方向へと向かっている。この作品ならきっと、沖縄人たちが死に物狂いで獲得してきたもの、払われた犠牲、暗闇の奥から差し出してくれている祈りの手を、映画という形でつかみ返してくれるはずだ。なおかつ、凋落(ちょうらく)するエンタメ産業に一つの革新的な“解”をも示してくれるだろう。以上、原作者のひいき目抜きには語れませんけどね、これはとんでもないところまで到達する邦画になる。一人の映画ファンとして上映館で「あきさみよう!」とわななくような昂揚(こうよう)と歓喜をおぼえる日を心待ちにしています。
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