葵わかな:BS時代劇「おいち不思議がたり」で感じた“普遍の価値観” 医療行為の違いに「ギャップはひたすら」

9月1日にスタートするNHKのBS時代劇「おいち不思議がたり」に出演する葵わかなさん
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9月1日にスタートするNHKのBS時代劇「おいち不思議がたり」に出演する葵わかなさん

 9月1日にスタートするNHKのBS時代劇おいち不思議がたり」(NHK BS・BSプレミアム4K、日曜午後6時45分)で、ヒロインを務める俳優の葵わかなさん。不思議な力を持つ町医者の娘・おいちを演じている。現在、TBSの日曜劇場「ブラックペアン」のシーズン2に手術室看護師役で出演していて、医療行為の違いに「ギャップはひたすら感じてはいました」という葵さんに、「おいち不思議がたり」の魅力などについて語ってもらった。(前後編インタビューの前編)

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 ◇江戸時代の治療法を経験できたのは、とても貴重

 「おいち不思議がたり」は、あさのあつこさんの同名小説シリーズ(PHP研究所)が原作。無念のうちに亡くなっていった者たちの「声」を聞き、「姿」を見ることができる娘・おいちが、岡っ引きの親分と共に人間の闇に迫り、謎を解いていく。推理時代劇であると同時に、悩みながらも自らの力で道を切り開く、おいちの青春成長物語で、玉木宏さんがおいちの父親で町医者の松庵を演じる。

 葵さんは「当時の医療について指導を受けたのですが、現代の医療行為とは全く違っていて、包帯の巻き方一つにしてもそうですし、脈の取り方にも別の作法がある。そういうものも現場で学びながらの撮影でした」と振り返る。

 また台本を読んだ時点で「当時の身分制度みたいなものが分かっていないと、(演じるのが)難しいなと感じた」と明かす葵さん。

 「そこまで深く時代劇に関わったことがなかったので、長屋で暮らしていた人たちがどれくらいの収入で、どれくらいの家賃を払っていたのか。そういった生活水準を調べたりもしました。長屋にも表長屋と裏長屋があって、一番貧しいのは裏長屋に住んでいる人たち。私たち(おいちと松庵)はその裏長屋の住人なので、相当貧しかったんだなって。医療行為に関しても、麻酔なしで人を縫うような時代。最先端技術の『ブラックペアン』とは、当たり前ですけど、全く違いますし、江戸時代の治療法を経験できたのは、とても貴重なことだと思っています」

 ◇誰かの心を救えるのは、また誰かの心である

 そんな葵さんは、本作を通じてどんなところに時代劇の魅力を感じたのだろうか。

 「現代よりも決まりごとが多い世界で、役を演じる上での難しさはあったのですが、それを一つずつ忠実に守ることで、当時、生きていた人にしかない忠義や正義の持ち方がきっとあるんじゃないのかなと感じました。今は多様性の社会で、抜きん出た個性が評価されたりしますが、以前は身分制度とかがあって、一口には“横並び”とは言い切れないのですが、そういった“四角い世界”で生きるということが、すごく興味深いものにも思えましたし、だからこそ生まれる葛藤、ドラマがあるんだなって」

 いち俳優としては、「自分自身、何かが見えたり、何かが見える役を演じた経験がなかったので、そういう“この世にないものが見える”表現ってすごく難しいなと思いました」とも話す、
 「おいちが見てしまうもの、聞こえてしまうものの塩梅みたいなものは、この作品の魅力の一つでもあるので、監督ともすごく話し合いました。例えば声が聞こえてくる場所はどこなのか、それははっきりしているのかぼんやりしているのか、そういう細かいイメージのすり合わせを今回初めてしてみて、難しさも感じたのですが、すごく面白かったです」

 一方で、「この作品は時代ものであり、また医療や不思議な力といろいろな要素が入っているのですが、結局 悩んでいたり何かを抱えていたりする人って、それだけを取って見てみれば、身分も立場も状況も関係ない」とも考える葵さん。

 「その陰ってしまった心を救えるのも誰かの心であって、そこに身分も性別も年齢も関係なかったりする。誰かの心を救えるのは、また誰かの心であるというのは、今も昔も変わらず、ずっと普遍的に通じるすてきな価値観なんだなって。そういった心情の描写は慎重に丁寧に話し合いながら進めてきたので、映像にも映っていたらうれしいなと思っています」

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