9月1日にスタートするNHKのBS時代劇「おいち不思議がたり」(NHK BS・BSプレミアム4K、日曜午後6時45分)で、ヒロインを務める俳優の葵わかなさん。不思議な力を持つ町医者の娘・おいちを演じている。2009年に俳優デビューし、今年で15周年を迎える葵さんは、大きな注目を集めた2017年度後期の連続テレビ小説(朝ドラ)「わろてんか」以降も、ドラマや映画、舞台にと活躍。「1年1年夢中でやっていたら、15年たっていたって感じ」という葵さんに今の思いを聞いた。(前後編インタビューの後編)
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「おいち不思議がたり」は、あさのあつこさんの同名小説シリーズ(PHP研究所)が原作。無念のうちに亡くなっていった者たちの「声」を聞き、「姿」を見ることができる娘・おいち(葵さん)が、岡っ引きの親分と共に人間の闇に迫り、謎を解いていく。推理時代劇であると同時に、悩みながらも自らの力で道を切り開く、おいちの青春成長物語で、玉木宏さんがおいちの父親で町医者の松庵を演じる。
ヒロインが生きる時代は違えども、NHKのドラマで、かつ着物に日本髪の葵さんの姿を見て、「わろてんか」を思い出す視聴者も出てくるだろう。
葵さん自身「所作指導の先生がいたことも大きかったのですが、朝ドラのときにみっちり稽古(けいこ)していただいたことが今でも体が覚えていて、そこまで困らずにでき、意外と忘れないものだなって」と話す。
「朝ドラは明治後期からのお話で、しかもお嬢様だったので、着物のバリエーションは豊富でした。一方、江戸のおいちは、家が本当に貧乏で、ワンシーズンに着物が一着あるかないか。そういう生活の違いは感じましたが、私自身、すごく着物が好きですし、『奥ゆかしい』って言葉がまさに生きていた時代の、日本の古き良き文化にまた触れられて、やっぱりいいものだなと思いました」
改めて、約7年前の「わろてんか」を振り返ってもらうと、「今となっては、自分の過去作の一つという感じではあります」との答えが。
「あの作品で学んだこともたくさんありましたし、すごく大きな転機になったことは間違いないのですが、20代前半の頃の方が、存在の大きさを感じたというか、今はいい意味で飲み込めてきたというか。皆さんに思い出していただける作品があることはとてもうれしいですし、ありがたいなとすごく感謝もしていますが、それも自分の一部で、この先、自分が出会っていく作品も同じように自分の一部であるというふうに消化できている感じです」
今年6月に26歳の誕生日を迎えた葵さんは、20代後半から、さらに30代へと入っていくこの先について、どのような思いを抱いているのか。
「作品に出演したり演技していく場所が、この先も今と変わらずにあるということが大事。年齢によって演じる役柄も変わりますし、今後は結婚して子供がいる役とかが増えていくのだろうかとか、考えるのがとても楽しみです。自分がどんな物語に出会っていくのかも楽しみの一つで、そういった中でより大事になっていくのが、自分自身の人生経験かなとも思っています、今は、やりたいことにがむしゃらに走って行っているけれど、人生そのものを充実させて、お芝居にも生かすことができたらすてきだなと」
俳優デビューから15周年を迎えたことには「気づいたら15年という感じで、自分の中には特に感慨もない」というのが率直な感想だが……。
「1年1年夢中でやっていたら、26歳になっていたし、気付いたら15年たっていたという感じです。それだけ夢中に生きて来られた15年はすごくいい15年だったと思うし、できることならこの先も、夢中になって仕事していきたいなと思っています。子供の頃から本や物語の世界が好きで、この仕事を始める前から、そういったものに救われてきましたし、何かつらいことがあってもお芝居をすると忘れることができるので。そういった好きなものぬ携われていること、この先もずっと続いていけばいいなと思っています」