歌手の野口五郎さんが、1月22日放送の黒柳徹子さんの長寿トーク番組「徹子の部屋」（テレビ朝日系）に出演。現在68歳の野口さん。今年、歌手生活55年目を迎える。歌手になるために岐阜から上京した13歳当時の挫折などを語った。

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　「僕の中で最初に人生の挫折を味わったのが13歳でした」と語る野口さん。デビューするということで上京し、曲を作ってくれた先生のところにあいさつに行ったが、変声期になってしまって声が出ない。先生に「しばらくちょっと休もうよ」と言われ、未来と過去が一気になくなった。次第にキーが下がり、声はゆがんでいき、先生の曲もだんだん歌えなくなっていった。

　夢がなくなったので故郷の岐阜に帰りたいと思ったという。上京の時にもらったハンカチには友人らから「錦を飾れ」「売れるまで帰ってくるな」などと寄せ書きが記されていた。「幼かったから、これがあるから帰れないと思って、友達には申し訳ないですけど、燃やしちゃったんです。これがなかったら帰れると思っちゃったんです。もう無理なので。声も出ないし。でもやっぱり帰ることもできないし」と明かす。

　一緒に上京した母親工場で働いて、工員の食事や洗濯などをしていた。父は月に一度、上京してお金を持ってきてくれた。その父親が帰る時に「頑張れよ」と声をかけてくれた。もうだめだと伝えたくて、何とか気づいてほしくて、地下鉄の駅に入るまで追いかけて行った。しかし、父は振り向くこともなく地下鉄の中に入って行った。

　数年前、父が酔っ払って記した走り書きが出てきた。実は父は気づいていた。振り返ってしまったら息子の夢を断念させることになってしまうから、振り返らないように一生懸命前を見て地下に入っていったという。「あんなことがよくもまあできたもんだ」と書かれていた。「歌手としてデビューでき、その後、皆さんに聞いていただける曲も世の中に出すこともできて良かったのかなと思います」と振り返った。