解説:「あんぱん」心に刻みたい寛の名言 竹野内豊が「一番共感できた」せりふとは

連続テレビ小説「あんぱん」で竹野内豊さん演じる柳井寛(C)NHK
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連続テレビ小説「あんぱん」で竹野内豊さん演じる柳井寛(C)NHK

 今田美桜さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)。5月26日放送の第41回では、柳井嵩(北村匠海さん)の伯父・寛(竹野内豊さん)が突然この世を去り、視聴者の涙を誘った。劇中では生前、嵩らを常に励まし、生きる道しるべを示し続けた寛だが、ここでは、寛が残した心に刻みたい名言の数々を振り返ってみたいと思う。

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 ◇「アンパンマンのマーチ」の歌詞を引用したせりふも

 甥(おい)である嵩と千尋(中沢元紀さん)の兄弟を引き取り、実の息子のように愛情を持って育ててきた寛。穏やかな人柄と包容力で、嵩たちの道しるべとなるような言葉を随所で発するなど、視聴者から愛されたキャラクターだった。

 寛は、嵩のモデルとなったマンガ家、絵本作家のやなせたかしさん(1919~2013年)の作品から引用したせりふを口にすることも多かった。ドラマの週タイトル「なんのために生まれて」(第3週)、「なにをして生きるのか」(第4週)の引用元は、やなせさんが作詞を手掛けた「アンパンマンのマーチ」で、それぞれ寛の言葉として、視聴者に届けられた。

 寛は、嵩が幼いころから、数々の名言を連発。第3回(4月2日放送)では、小学生の嵩(木村優来君)の絵のうまさに驚いた寛は、「こじゃんと絵を描け。好きなものはやればやるばあ、こじゃんと好きになる」と語りかけた。

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 第5回(4月4日放送)では、のぶ(永瀬ゆずなちゃん)の父・結太郎(加瀬亮さん)が帰らぬ人となり、落ち込むのぶのためにできることはないかと悩む嵩に、「生きちゅうき、悲しいがや。生きちゅうき、苦しいがや。生きちゅうき、いつか元気になって、きっと笑える日が来るがや」と説いた。

 第11回(4月14日放送)では、中学5年生になりマンガを描くようになった嵩が、来年受験を控えながらも将来何をしたらいいのか悩んでいたところ、寛は「何のために生まれて、何をしながら生きるがか。何がおまんらの幸せで、何をして喜ぶがか。これや! というもんが見つかるまで、何べんでも何べんでも必死に考え」と助言した。

 さらに第18回(4月22日放送)では、柳井医院の跡継ぎ問題をめぐってけんかした嵩と千尋に、寛は改めて後継ぎはいらないと告げる。そして、「わしはおまんらに『あんとき、ああしちょったらよかった』と悔いてほしゅうないがじゃ。何のために生まれて何をしながら生きるがか、見つけるまでもがけ。必死でもがけ」と言い、嵩と千尋の考えを尊重する姿勢を見せた。

 また第20回(4月25日放送)では、後に第9週の週タイトルとして登場する「絶望の隣は希望」をすでに口にしていた寛。受験に失敗し、母・登美子(松嶋菜々子さん)も去り、人生に絶望した嵩に、「泣いても笑うても日はまた登る。絶望の隣はにゃ……希望じゃ」と優しく語りかける姿も印象的だった。

 ◇竹野内豊が名ぜりふを振り返る

 第25回(5月2日放送)は、15分の中で寛が名言を連発した回だった。

 東京高等芸術学校の合格発表の日、一人ベンチでうなだれていた嵩に、「現実を受け止めて、前に進め。絶望の隣は希望や」と声をかける寛。これは寛と早とちりで、その後、嵩が合格していたことを知ると、嵩の亡き父・清(二宮和也さん)が生きていたらとても喜んだだろうと話し、「何のために生まれて、何のために生きるか。わしは思うがよ。それは人を喜ばせることや。おまんのあんなうれしそうな顔見て、わしもこじゃんとうれしかった。人生は喜ばせごっこや」と語った。

 この「人生は喜ばせごっこや」という言葉は、寛役の竹野内さんにとっても印象深いせりふになったといい、インタビューでは「どのせりふも本当に素晴らしいのですが、一番共感できたせりふは『人生は喜ばせごっこや』ですね」と話していた。

 「すっと心に落ちてくるというか、確かにそうだなと思ってすごく共感できました。誰もが不安を抱えて生きている、そういう時代じゃないですか。こういう精神が日本中に広まっていけば、素晴らしい国になると思いますし、自分も含め、一人でも多くの人がそのような意識を高めることができれば、きっとすてきな未来が約束される気がします」とも。

 また、寛の“最期”が描かれた第41回(5月26日放送)では、卒業制作を優先し、寛の死に際に間に合わなかったことを後悔する嵩に、寛の妻・千代子(戸田菜穂さん)は寛が亡くなる前に残した“遺言”を伝える。

 「最後まで描き上げんと……半端でもんてきたりしよったら……半端でもんてきたりしよったら……殴っちゃる。嵩が決めた道や。嵩が生きる道や。投げ出すがは許さん。嵩も……千尋も……投げ出すがは許さん」

 このせりふについて、竹野内さんは「もしも自分に子供がいたとしたら、多分同じことを言っているんじゃないかな」と共感。「自分が決めたこと、自分がやりたいと思ったことをとにかく信じて、 絶対に諦めないこと。逃げてしまったり、うまくできなくても、ずっと続けること。そこに価値があるんじゃないのかなと。そういう気持ちを腹の底に置いて、このせりふを言っていたと思います」と振り返っていた。

 これまで寛が残してきた数々の名言について、SNSでは「名言集を出してほしい」「寛伯父さんの言葉は心に染みる」「一体どれほどの徳を積めば、これだけの人格者になれるのか」など、称賛の声が上がっている。寛はドラマからは退場となったが、心に響く名言の数々はいつまでも視聴者の心に残り続けるだろう。

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