緊急取調室 (2025)
第7話 赤い殺意
12月4日(木)放送分
俳優の横浜流星さん主演のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(総合、日曜午後8時ほか)の第31回「我が名は天」が8月17日に放送された。冒頭、大雨で利根川が決壊し江戸も洪水被害に遭い、田沼意次(渡辺謙さん)が対応に追われる様子が描かれた。
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そんな中、さっそうと登場したのが長谷川平蔵宣以(中村隼人さん)。江戸城内では「待たせたな! 市中!」と気合を全身にみなぎらせて足早に歩き、市中で蔦重と再会した際には「実は先日『御先手弓頭(おさきてゆみがしら)』になってな。次はいよいよ奉行かってことでな。こうして日夜、市中を見回ってんのさ」と自慢げに語った。まるで江戸の混乱で“水を得た魚”のようにはつらつとした姿が印象的だった。
御先手弓頭とは、幕府の常備軍として治安維持にあたる「先手組」の弓組隊長のことだ。当時先手組は34組あり、うち弓組が10組、鉄砲組が24組あった。戦場では先鋒を務める精鋭部隊だが、戦のない江戸時代は江戸城の警備、市中の治安維持などにあたった。先手組34組の頭は「番方」と呼ばれる武官職の旗本の最高位の役職だった。ちなみに文官は「役方」と呼ばれ、江戸の町奉行や大目付(大名の監察官)が文官職のトップだった。
天明6(1786)年7月、平蔵は先手弓二番組の頭に就任した。田沼意次が老中を罷免される一月前のことだ。平蔵の前職は西の丸徒頭(歩兵隊長)。徒頭を7〜10年務めて先手組頭に昇進するのが通例だが、平蔵は徒頭を1年半しか務めていない。異例の抜てき人事だった。
経緯はこうだ。弓二番組頭の旗本が在職中に病死し、弓一番組頭で先手組全体の筆頭格だった市岡左太夫正峯が複数の候補者の名を挙げた。その中から組頭全員による入れ札(投票)で後任を決めるのだが、市岡の推しは平蔵だった。自然と平蔵に票が集まったという。
こうして平蔵は41歳で弓二番組頭になった。34組の先手組頭の中で最年少だ。他の先手組頭は81歳の市岡を筆頭に、78歳の清水与膳豊春(鉄砲十八番組頭)、77歳の倉橋三左衛門久雄(鉄砲五番組頭)ら高齢者が目立ち、平蔵を除けば平均年齢は65歳を優に超えていた。天下太平の世にあって、精鋭部隊の指揮官は名誉職のような存在になっていた。
平蔵が先手弓頭に選任されたのは、江戸で洪水被害が出て2週間後のこと。復興が手つかずの江戸では困窮した人々の不満が高まり、不穏な空気が漂っていた。いざという時に“年寄り指揮官”ばかりでは心許ない。
書院番、進物番、徒頭とエリートコースを歩んできた平蔵は、先手組の若返りを図る上でうってつけの人物だったようだ。平蔵には「勤務ぶりがいい」「おべっか上手」という評価があり、目立つ存在だったのだろう。
ほどなくして若返りが功を奏した。米価高騰を背景に天明7(1787)年5月、庶民が江戸の商家を広範囲に襲った「打ち壊し」に際して、幕府は平蔵ら10人の先手組頭を選抜し騒乱の鎮圧部隊を指揮するよう命じた。平蔵以外の9人の先手頭は47〜64歳。先手組全体では若手に属する組頭が選抜され、混乱は数日で収束した。
一方で、平蔵の先手弓頭起用は田沼意次の意向だったとの見方もある。平蔵が徒頭になったばかりの天明4(1784)年暮れの逸話が史料に残されている。神田御門にあった田沼意次の上屋敷近くで火災が起きた。火災など緊急時には江戸城に登城することになっていた平蔵は、上司に断りを入れて登城せず、自宅から田沼家上屋敷に直行。意次の家族らを引率して浜町の田沼家下屋敷へ避難させた。
平蔵は自宅を出る際に家人に炊き出しの食事を用意するよう指示し、道すがら和菓子店に立ち寄り店内にあるだけの餅菓子を注文。ともに下屋敷に届けさせた。この和菓子店は「鈴木越後」という江戸随一の高級店で、ようかんが1本1両(現在価値で約10万円)もした。平蔵が注文したのは餅菓子だが、相当の出費だったのは間違いない。平蔵の行動を聞いた意次は「実に気配りの行き届いたことだ」と感心し、その後も平蔵に目をかけていたという。先手組に欠員が出たら平蔵を、という意次の意向があってもおかしくない。
いずれにせよ、異例の早さの昇進に平蔵はやる気満々だったことは想像に難くない。先手組頭の年収は1500石(現在価値で約6000万円)。徒頭時代から500石もアップした。「べらぼう」第31回では、蔦重は再会した蔦重に「次はいよいよ奉行かってことでな」と臆面も無く野心を披露した。先手組頭から京都、大坂、奈良、長崎など幕府領にある奉行(遠国奉行)、さらに江戸の町奉行になることも夢ではなかった。
史実の平蔵もそんな野心を周囲に見透かされていた。旗本の人物評を記した史料にこんな記述がある。「平蔵は功を立て、とにかく町奉行になるつもりのようだ。人物はよろしくないが、才略はある」「平蔵は(次の人事異動で)町奉行を望んでいたが、池田筑後守長恵に先を越されてがっかりしているらしい」。いずれも寛政元(1789)年に書かれた内容だ。
また「べらぼう」第31回では、近くでけんかが起きていることを聞いた平蔵が、勇ましく駆け去って行くシーンがあった。市中を積極的に見回り、もめごとにも目を配るという姿勢は、後に火付盗賊改になった史実の平蔵に共通する姿だ。けんかの仲裁にまつわる逸話を紹介しよう。
平蔵が市中を見回っていると、長屋の周囲に人だかりができている。近づいてみると派手な夫婦げんかだった。止めに入った大家も突き飛ばされる始末で誰の手にも負えない。平蔵は夫婦に割って入り、それぞれの言い分をじっくり聞いた後、身分を明かして、その場を収めた。
後日、平蔵が見回りの途中に長屋に立ち寄ると、女房が驚きつつも笑顔で迎えた。亭主は心を入れ替えて一生懸命に働いているという。それを聞いた平蔵はこう言った。「そうか、あんな派手な夫婦げんかをもう一回見てみたいと思って立ち寄ったが、もう見られないんだな。こりゃあ残念だ……でも良かったな」。女房は顔を赤くして頭を下げた。この出来事は人々に伝わり、気さくな人柄の平蔵は評判になったという。(文・小松健一)
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