あんぱん:いつになく素直な“母”登美子の一面が見られた第126回 そんな登美子から注目度最高値を奪ったのは意外なベテラン俳優

連続テレビ小説「あんぱん」のロゴ (C)NHK
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連続テレビ小説「あんぱん」のロゴ (C)NHK

 今田美桜さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第126回(9月22日放送)で、テレビの前の視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのか? 母、登美子(松嶋菜々子さん)の思いを嵩(北村匠海さん)が知ったことで、2人の関係にも変化の兆しが見られた第126回。テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた程度を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、登美子が登場する場面はいずれも注目度が高かったものの、最高値の午前8時13分はちょっと意外なベテラン俳優が突然、登場したシーンだった。

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 「あんぱん」は、「アンパンマン」を生み出したマンガ家で絵本作家のやなせたかしさん(1919年~2013年)と、暢さん(1918年~1993年)夫婦がモデル。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどりつくまでを描く、生きる喜びが全身から湧いてくるような「愛と勇気の物語」だ。

 ◇最高値は午前8時13分の73.7%

 いよいよ最終週を迎え、残り5回となった「あんぱん」。第126回は、これまで母親としては“失格”の側面が描かれることが多かった登美子がフィーチャーされた回だ。嵩の登美子に対する思いも、次第に変化し始める。

 テレビ画面の前にいる人のうち、画面を実際に注視している人の割合を調べた「注目度」はこの日、乱高下しながら、3回“山”を作った。うち、70%を超えたのは2回。いずれもほぼ登美子がらみの場面だ。

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 無事に終わったミュージカル「怪傑アンパンマン」。嵩は、のぶ(今田さん)が撮った公演の写真を見て、登美子がこっそり客席に見ていたことを知る。映画「やさしいライオン」も映画館で見ていたことを伝えた羽多子(江口のりこさん)は、「ほんまは誰よりも柳井嵩先生のファンかもしれんねえ」と言う。この冒頭の場面は午前8時0分台。注目度は64.7%で、その後、ぐんぐん急上昇していく。

 最初の70%超は午前8時2分の71.8%。ちょうど編集者が柳井家を訪れた場面だ。玄関先でのぶから原稿を受け取った編集者は、「あんぱんまん」が子供の親や児童文学の評論家には評判がよくないという。「自分の顔を食べさせるなんて、教育上よろしくない」「あんなグロテスクなもの、子どもには読ませたくない」と続け、大笑いする。

 のぶが反論しようとしたところ、割って入ったのが隣の部屋にいた登美子だ。「あなた、それでも柳井嵩の担当編集者なの? 何にもお分かりになってないわ」と口火を切ると、「顔を食べさせるのがグロテスク? 教育上よろしくない? じゃ、目の前に死ぬほどおなかをすかせた人がいても助けるなと」「そっちの方がよっぽどグロテスクだわ」と相手を圧倒する。評論家の指摘だと逃げようとする編集者に、「作家が魂こめて書いた作品を批判するなら、正々堂々と自分の意見としておっしゃい、卑怯者」と逃げ道を与えない。完膚なきまでやり込められた編集者は、すごすご帰るしかない。

 見ている側もスカッとした場面。視聴者は、登美子の嵩に対する母親としての思いを知ってはいたが、改めて強く刻まれた場面だった。この様子を見ていた羽多子が「今ごろ気付いたけんど、登美子さんとのぶは、よう似ーちゅうね」とのぶにささやく。この部分は午前8時3分台(69.6%)にはなるが、印象に残った一言だった。

 次に70%を超えたのは、午前8時11分(70.3%)、午前8時12分(72.9%)、午前8時13分(73.7%)の3分間で、午前8時13分が第126回の最高値となった。

 午前8時11分台は、柳井家に泊まった登美子が嵩と川の字に布団を並べて寝ているシーンの続きから始まる。登美子を避けてきた嵩が、母への思いをそれとなく伝える印象的な場面だ。翌朝、嵩は仕事でパリへと、のぶと登美子、羽多子は高知へと出発するため、家を一緒に出る。旅の安全を祈って、近くの神社を参ってから出かけましょうと登美子が提案するが、あまり時間がないという嵩はそのまま空港へ向かう。

 そして午前8時12分台に。荷物を持ち先を急ぐ嵩の背中を、1人、そのまま立ち尽くし見つめる登美子。旅の安全を祈るかのように、自然と目をつぶり手を合わせる。その様子に、ふと振り返った嵩が気付く。見られたことを知り、恥ずかしそうに「早く行きなさい」という登美子。少し笑みを浮かべ、嵩は再び歩き始める。

 続く午前8時13分台は、場面がカメラ店に移る。高知旅行を終え、撮影したフィルムを持ち込んだようだ。店主の堀井満(石橋蓮司さん)に、フィルムの現像と焼き付けを依頼。堀井は「おたくの先生、『アンパンマン』っていう絵本描かれてますよね?」と尋ね、のぶは「ええ、幼稚園児向けの絵本なのによくご存じですね」とうれしそうに返答する。

 堀井は「うちの3つになる孫がアンパンマンが大好きでねえ。毎晩読んでくれって言われるもんですから」と明かし、「僕はアンパンマンだ! いつもおなかのすいた人を助けるんだ。僕の顔はとびきりおいしい。さあ、早く~」とアンパンマンのせりふを口にした。石橋さんのセリフまわしに独特の味わいがあって、ぐっと引き付けられる場面だ。

 この辺までが13分台。70%超は登美子がらみの場面が多かったが、最高値となった午前8時13分は登美子の登場シーンではなかった。ただ、嵩と登美子の芝居の余韻が残るなか、ベテランの石橋さんが突然登場した驚きも相まって、注目度が最高値となったともいえるのではないだろうか。

 活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)

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